経営
2023/04/05
料理の腕や接客に自信があるだけでは、飲食店経営を成功に導くことはできません。飲食店経営におけるさまざまな数字を管理する必要があるのです。
そこでこの記事では、飲食店経営の基本となる考え方や知識、指標を徹底解説していきます。
「飲食店経営に必要な基本知識として何を学ぶべき?」
「飲食店経営で分析に役立つ基本的な指標を知りたい」
「飲食店を経営する前に押さえておくべきこととは?」
上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひ最後まで読み、経営の参考にしてください。
飲食店経営において、基本となる要素として「売上」「利益」「FLコスト」が挙げられます。それぞれが持つ意味と考え方を理解しておきましょう。
飲食店経営における売上とは客数と客単価の2つの要素に分かれるもので、どれだけ売上があるのかを示すものが「売上高」です。客数とは、1日あたり何人のお客さんが訪れたのかを表す数値、客単価とは1度に支払う1人あたりの金額を指します。
飲食店経営では「客数×客単価」という計算式で売上高を求められます。
売上に悩む場合は、客数または客単価の改善が必要ということがわかるなど、飲食店経営における重要な指標のひとつのため、必ず押さえておきましょう。
飲食店経営において最重要といわれる要素が「利益」です。利益とは、売上高から原価を差し引いたものです。飲食店にどれだけ売上があっても、最終的に利益が手元に残らなければ経営を安定して続けることはできません。
なぜなら、利益がなければ十分な人数の従業員をシフトに入れられなかったり、商品の質を落とさなければいけなかったりするため、結果的にお客さんへ満足なサービスを提供することができなくなるからです。
飲食店経営をこれから予定している方は、売上がそのまま手元に残るわけではないことを念頭に置いて事業計画をたてなければいけません。
飲食店を経営する際には「利益=売上高−経費」という計算式を覚え、最終的に残したい利益率と額を設定して、どれくらいの売上と経費が必要なのか、という考え方に基づいて計画を立てるようにしましょう。
飲食店経営における売上、利益をつくるために深く関わってくる要素がFLコストです。FLコストとは、食材費(Food)と人件費(Labor)を合わせた費用のことを指します。飲食店経営においてFLコストのコントロールは非常に重要視されており、売上高に対して60%以下が適正とされています。
健全な飲食店経営の目安のひとつとして「FLコスト60%以内」があるため、日々のコントロールを意識していきましょう。
売上高に対するFLコストの割合は「(食材費+人件費)÷売上高×100(%)」の計算式で算出できます。
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上記では、飲食店経営における基本的な3つの要素について解説しました。しかし、飲食店経営では3つの要素のコントロールに加え、日々の数値分析からより良い経営をおこなうための改善も必要になります。
以下では、飲食店経営に便利な経営指標についてご紹介します。
損益分岐点とは、売上高(収益)と人件費や食材費、光熱費などの経営にかかるコスト(費用)が等しくなる金額のことです。つまり、損益分岐点より売上が高ければ黒字、下回れば赤字になります。
飲食店経営をするときには損益分岐点を算出し、月ごと、年ごとなどで目指すべきひとつの目安として用います。損益分岐点の計算式は以下のとおりです。
損益分岐点の計算式:固定費÷{(売上高−変動費)÷売上高}
損益分岐点には「固定費」と「変動費」が大きく関係してくるため、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
変動費とは、売上に応じて金額が左右される経費のことです。変動費はアルバイトやパートへの給料や消耗品費などさまざまな費用が当てはまりますが、とくに代表的なものが「食材費」です。
たとえば、食材の仕入れは来客数が多いとたくさん必要になり、逆に閑散期は減少します。変動費は飲食店経営者の裁量によって大きく増減させることができる費用であり、日々の適切なコントロールによって適正な損益分岐点を維持できます。
固定費とは、飲食店の売上の増減に関係なく一定金額で発生する費用を指します。まったく変動がないわけではありませんが、長期的に見ると増減がない費用をイメージしてください。
飲食店経営においては、店舗の家賃や光熱費、通信費、フランチャイズ経営の場合はロイヤリティも当てはまるでしょう。
固定費は変動費と違い、いくら飲食店の売上が下がっても簡単に調整できる費用ではないため、開業時の交渉や計画がとくに重要になります。
飲食店経営の分析に役立つ指標のひとつとして「客席回転率」も欠かせません。客席回転率とは、1席に対してお客さんが何回入れ替わったかを表すもので、計算式は以下のとおりです。
客席回転率:1日の来客数 ÷総客席数
たとえば、店内に50席ある飲食店で1日に200人の来店があった場合は「200÷50=4」となり、4回転したことになります。
回転率が高ければ高いほど売上は増加するため、数値を上げるためには注文から提供までの時間や注文を伺いにいく時間を短くする、バッシングをスムーズにおこなうなどの工夫が必要です。
ただし、客席回転率を上げれば良いというわけではありません。カフェや喫茶店のように店内でゆったり過ごしたい方は、スピーディーな料理提供や食べた食器を次々下げられることは求めていないでしょう。
飲食店のコンセプトに沿ったサービスを重視したうえで、適切な回転率を設定することが重要です。
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人事売上とは、従業員1人につき1時間あたりどれだけの売上があるかを示す指標です。もちろん飲食店の規模やジャンルによって異なりますが、4,000〜6,000円程度が一般的な人事売上と言われています。
人事売上高:売上高÷総労働時間
1日の売上が20万円あり、従業員5名で8時間ずつ労働があった場合、総労働時間は40時間となるため、以下の計算式が成り立ちます。
20万円÷40時間=5000円
この場合人事売上は適正値の5000円であるため、大きな改善は必要ないことがわかります。定期的に人事売上を確認することで、適切な人員配置や改善点が見えてくるでしょう。
ここまでは、飲食店経営における要素や分析の指標について解説しました。最後に、飲食店経営の基本である、開業時に必要な資格や申請・資金についてご紹介します。
どのジャンルの飲食店経営を始めるにしても、必ず必要になる資格が以下の2つです。
食品衛生責任者
防火管理者
飲食店経営をおこなう場合は常に食品衛生を管理する必要があるため、その責任者として食品衛生責任者を設置することが義務付けられています。食品衛生責任者は、飲食店の規模や業種問わず必須な資格であり、無資格での飲食店経営は認められていません。
各自治体が定期的に開催している食品衛生責任者の養成講習を受講することによって資格を取得できるため、事前に計画立てて受講しましょう。
防火管理者は飲食店内の収容人数が30名以上の場合に設置が義務付けられている資格で、食品衛生責任者と同じく講習を受けることによって取得できます。「収容人数」が指すのはお客さんだけでなく、従業員も含まれることを覚えておきましょう。
飲食店経営をする場合は、営業開始までに防火管理者が必要かどうかの確認も忘れてはいけません。
飲食店経営を始めるときには、資格取得だけでなく関係各所へ必要な申請や手続きを進めなければいけません。飲食店経営に必要となる、基本的な申請や手続きを以下にまとめました。
届出 | 対象店舗 | 提出先 |
---|---|---|
食品営業許可申請 | すべての飲食店 | 保健所 |
防火管理者選任届 | 収容人数が30名以上 | 消防署 |
火を使用する設備等の設置届 | 火を用いる設備の設置がある | 消防署 |
風俗店営業許可 | 接待行為をおこなう | 警察署 |
深夜酒類提供飲食店提供届 | 深夜12時以降にお酒を提供する | 警察署 |
そのほか、開業自体が初めての場合は、開業届を税務署へ提出する必要があります。各申請は提出してすぐに承認されるわけではないため、営業日に間に合うように余裕を持って手続きをおこないましょう。
飲食店を経営するにあたって、必要な資金について把握しておくことも非常に重要です。飲食店経営を始めるために知っておきたい資金は「開業資金」と「ランニングコスト」です。
開業資金は文字通り開業にあたって必要な資金を指します。飲食店経営をするには店舗取得や厨房設備の設置、開業の宣伝などさまざまな準備を進めければいけません。
また、開業直後は思ったように売上が伸びないケースも多く、その期間に対応できるようにランニングコスト(運転資金)も用意しておくべきです。
開業資金やランニングコストの目安は飲食店の規模や業種によって異なるため、具体的にどのくらい必要なのか分からず不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
そういったときにおすすめしたいのが税理士への相談です。資金面でのプロに相談し不安を解消して、安定した飲食店経営を叶えましょう。
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飲食店経営の基本として押さえたい要素や分析方法、資格や申請について解説しました。
飲食店経営は料理や接客の腕が良いだけでは成功しません。経営について学び、その知識を活かして長年愛される飲食店をつくりましょう。