飲食店における人手不足の現状と影響|原因と解決策を把握しよう

経営

2023/07/21

飲食店における人手不足の現状と影響|原因と解決策を把握しよう

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アフターコロナに入ったと言える2023年、売上に回復の兆しが見えてきたなか、次に問題視されているのは「人材不足」です。とくに飲食店は人材不足が深刻化していると言われています。

飲食店の経営者、またはこれから開業を予定している方は、人手不足を不安視している方も多いでしょう。そこでこの記事では、飲食店の人手不足に関する以下の疑問について、解説していきます。

「飲食店の人手不足の現状はどうなのか」

「飲食店の人手不足はなぜ起きる?理由を知りたい」

「飲食店の人手不足を解消させる解決策を知りたい」

人手不足が飲食店に与える悪影響についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

飲食店における人手不足の現状

仕事中のスタッフ帝国データバンクが2023年1月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、人手不足と回答した割合が非常に高いことが判明しました。

具体的には、正社員に関しては60.9%、アルバイトなどの非正社員に関しては80.4%の飲食店が人手不足と感じています。これはコロナ禍以降(2020年4月)でもっとも高い数値です。

このように飲食店の人手不足の背景には、主に「コロナ禍」と「定着率」の問題があると言われています。

引用:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査

コロナ禍による影響

2020年に突如起こった新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、さまざまな行動制限がとられました。とくに飲食店への影響は大きく、営業自粛・営業時間短縮・人数制限などがあり、売上が大きく減少した店舗も少なくありません。

そんななか、やむを経ず人件費の削減に踏み切った飲食店も多く、アフターコロナが叫ばれ通常営業に戻った今も、一度流出してしまった人材が戻らず人手不足につながっています。

また、メニューや客席、パーテーションのアルコール消毒などコロナ禍以前になかった業務や、コロナ禍で定着したテイクアウトやデリバリーへの対応に必要な人材も不足する事態が起きています。

低い人材定着率

実はコロナ禍以前から、飲食店の人手不足は問題視されていました。

厚生労働省が2022年に公表した「新規学卒就職者の離職状況」では、2019年3月に卒業した新卒者で宿泊・飲食サービス業に就職し、3年以内に離職した割合が高卒で60.6%、大卒で49.7%にのぼります。

これは全業界のなかでトップの数値です。

つまり、飲食店に就職した新卒者の半数以上が3年以内に離職しているということです。この定着率の低さが飲食店の人材不足の慢性化をつくり、深刻な状況に陥っていると言えるでしょう。

引用:厚生労働省 規学卒就職者の離職状況

人手不足による飲食店への悪影響

人手不足が生じると、飲食店の経営にさまざまな悪影響を与えます。

そもそも人手不足の飲食店は従業員の負担が増えている状況です。その労働状況に不満を持った従業員が離職してしまい、さらに人手が足りなくなるという負のループが起きてしまいます。

また、人手不足の飲食店は日々の営業に関する業務で手一杯となり、新人教育にまで手が回りません。教育が不十分のまますぐに現場入りしてもらうことになるため、人材が育たないのです。

せっかく人材を確保しても教育が行き届いていないので接客の品質も低下し、飲食店の評判がかえって悪くなるケースも少なくありません。

このように、人手不足の飲食店は従業員の負担が増えるだけでなくお店の評判を下げることにもつながり、最悪の場合閉店に追い込まれる可能性まであります。

飲食店を人手不足による負のループに巻き込まないためには、原因を明確化して解決策を講じる必要があるでしょう。

【原因】飲食店の人手不足はなぜ起こるのか

飲食店の人手不足に対する事前対策、または解決策を実施するためには、まず原因を把握する必要があります。ここでは、一般的に挙げられる飲食店が人手不足になる理由をご紹介します。

1.厳しい労働条件

飲食店が人手不足になりやすい大きな理由は「厳しい労働条件」です。飲食店は他の業界と比べて休日が少なく、かつ営業時間も長いため、長時間労働になりやすい傾向にあります。

営業時間内にも接客や調理をしながら明日の仕込みや清掃などの業務も並行しておこなわなければならず、体力的にもハードなイメージが定着しています。

実際に株式会社シェアダインがおこなった調査では、飲食店で働く調理人の7割が働きづらさを感じていると回答しています。

厚生労働省の「就労条件総合調査」の結果からも飲食店の労働者1人あたりの週所定労働時間の平均は39時間52分と、全企業の平均39時間28分より長いことが分かっています。

引用:株式会社シェアダイン 仕事に関するアンケート調査

引用:厚生労働省 就労条件総合調査

2.魅力のない給与・報酬

飲食店が人手不足になりやすい原因のひとつに「賃金の問題」があります。コロナ禍以前から飲食業は他の業界に比べて給与が低く、待遇面で劣っている傾向にありました。

飲食店での就職を志す方がいたとしても、ほかの飲食店と比較して給与や報酬が良くないと感じたら、より待遇が魅力的な飲食店に就職してしまいます。

給与や待遇は職場を選ぶうえで重要なポイントになるため、業務内容に見合っていないのにわざわざ応募する求職者はいません。

3.過剰サービス等によるストレス

過剰なサービスとは「お客様は神様」という考えから生じる接客方法です。たとえば、お客様の満足度を上げるためやクレームを避けるための丁寧な接客です。

異物混入や食中毒など、飲食店に非がある場合のクレームは仕方ないですが、近年では理不尽な要求や暴言、迷惑行為をおこなうクレーマーも少なくありません。

そんなお客様への対応に疲弊する従業員も多く、離職を選択するケースもあるのです。

4.キャリア形成が困難

飲食店で経験・スキルを培っても、なかなか他業種で活躍できるようなキャリア形成が難しい点も業界離れの一因です。

飲食店のなかでも部署が細分化されているような大手企業なら、従業員の希望に応じたキャリア形成も可能です。

しかし、飲食店は中小企業も多く、店舗ごとの運営が基本です。そうなると、経験が偏ってしまい、キャリアアップしたいと思ってもハードルが高いというデメリットがあります。

また、飲食店の従業員は評価されにくい傾向にあります。

営業職のように個人の成績や成果が可視化しにくく、頑張りを評価されない店舗で働き続ける意義を見出せないと感じる方も少なくありません。

5.研修制度の不整備

研修制度が不十分な飲食店は、人材が定着しない傾向にあります。

せっかく料理のスキルや店舗経営について学びたいと意気込んで入社しても、学べる環境が整っていないとモチベーションも低下してしまうでしょう。

レシピやオペレーションがきちんとマニュアル化されていない飲食店は、教える人によって言うことが違ったり、商品の仕上がりが統一されなかったりするため、意欲の高い従業員ほど離職してしまいます。

【解決策】飲食店の人手不足を解消させるには

飲食店スタッフそれでは、飲食店の人手不足を解消させるためには何から始めたらよいのか、具体的な解決策をご紹介します。

必ずしもすべて実践しなければいけないわけではないため、自身の飲食店の課題を解決できる対策をおこないましょう。

職場環境の改善・構築

まずおこなうべきことは職場環境の整備です。人材不足の大きな原因は飲食店の職場環境にあります。

職場環境はさまざまな視点から改善できますが、たとえば給与や待遇が業務量に見合っているかどうかを確認し、必要であれば見直します。給与を上げれば良いわけではなく、従業員の頑張りを評価する制度も必要です。

評価制度がない場合は設けて、どうしたら評価が上がるのか、頑張りを認められた場合はどのような特典があるのかなど、わかりやすい基準や条件を設けて働く意義を見出してもらいましょう。

また、どの部分を改善すればよいかわからない場合は、従業員とのヒアリングがおすすめです。普段の様子や従業員同士の関係がわかったり、どの部分に不満を持っているかを確認できたりします。

不満が募る前に改善の意思を見せることで、離職を防ぐことにも役立ちます。

採用方法と条件の再検討

そもそも求人をかけても応募がないことに悩んでいる場合は、採用方法と条件の見直しが効果的です。あまりにもターゲットを絞っていたり、業務時間を限定したりすると、応募するハードルがあがってしまいます。

「業務時間は応相談」「週2〜、3時間から可能」「短時間でお小遣い稼ぎ」「出勤日はまかないあり」など幅広い層の目に止まるような工夫をおこないましょう。

また、募集をかけるのは求人サイトだけでなく、自社ホームページやInstagram、Twitterもおすすめです。とくに若い世代は情報収集にSNSを利用する傾向にあるため、応募数の増加が期待できます。

そのほか、従業員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」にも取り組んでみると良いでしょう。

DXの推進

コロナ禍以前からあった飲食店の人手不足が、これから急激に解消されるということは考えにくいのが現実です。そのため、人手を増やすだけでなく、業務効率化への取り組みも求められます。

  • スタッフ管理ツール:シフト調整や勤怠管理をおこなう
  • 在庫管理ツール:食材や備品の在庫を管理する
  • POSレジ:商品・価格・販売数・売上情報などを集計する
  • キャッシュレス決済:クレジットカード・QRコード・電子マネー
  • セルフオーダーシステム:お客様自身が注文をおこなうシステム

このようなツールを導入することで、大幅に業務の効率化が叶います。在庫の確認作業や勤務時間の集計にかかる時間を短縮でき、その分他の業務に充てられます。

POSレジは店舗利用者の情報を分析することもできるため、新メニューの開発など、よりよいお店作りにも役立つでしょう。

まとめ

この記事では、多くの飲食店が悩む人手不足の現状とその原因、解決策についてご紹介しました。

飲食店の人材不足は、職場環境の改善やDXの推進で解消が期待できます。まずは自身の飲食店の人手不足がなぜ起きているのか、原因を解明することが大切です。

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