飲食店のパワハラ発言・行動の例|経営者が知っておくべき防止措置

経営

2024/02/16

飲食店のパワハラ発言・行動の例|経営者が知っておくべき防止措置

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パワーハラスメントは深刻な社会問題となっています。被害を受けた人がそのまま退職するケースも決して少なくありません。しかし、パワーハラスメントの定義は曖昧で、受けた側がパワーハラスメントだと感じても、行った側は単なる指導だと思っていることもあります。

そこでこの記事では、以下の疑問を抱えている飲食店経営者に向けて、飲食店のパワハラについて解説していきます。

「飲食店のパワハラについて知りたい」
「パワハラとはどのようなものがあるのか」
「パワハラを防ぐためにはどのようにすべきか知っておきたい」

飲食業界は特にパワーハラスメントが多いと言われていますが、職場を離れることなく対処するためにも、パワーハラスメントの実態を理解することが重要です。

「飲食店はパワハラが多い」と言われる理由

飲食店の従業員飲食店はパワハラが多いと言われていますが、それはなぜでしょう。その理由を知らずして予防も対策もできるわけがありません。

ここでは、飲食店にパワハラが多い理由を深堀していきます。

職人(料理人)気質

飲食店にパワハラが多い理由のひとつは、昔ながらの慣習が色濃く残っていることです。職人気質の人々は、自身が修業時代に厳しい指導を受けてきたことが多く、そのためにリーダーになった場合も部下や後輩に厳しく接することがあります。

飲食業では指導が「修業の一環」と捉えられることが少なくありません。

火や刃物を使う飲食店は不注意による事故が発生する恐れもあるため、注意や指導はあって当然です。しかし、不必要な指導にあたる言動や行動があっても、それがパワーハラスメントではなく「修業」の一環として認識されている環境もあります。

過酷な労働環境

飲食業界の労働者は、多くが朝から晩まで長時間働き、睡眠不足で体力と精神が疲弊しています。その過酷な労働環境もパワハラを多発させる大きな理由です。

どの店も人手不足で、上司の期待に添えないとイライラや感情的な爆発が頻発します。指導の際にはコミュニケーションが大切ですが、飲食業界ではそういったスキルが普及していないことが課題と言えるでしょう。

【分類別】飲食店にあるパワハラ発言・行動の例

飲食業界において、厚生労働省が定める6つの分類に基づき、どのような言動がパワハラに該当するのか、具体的な事例を掘り下げてご紹介します。

従業員や経営者が日常の業務で気をつけるべきポイントを理解し、パワハラ予防に役立てましょう。

1.精神的な攻撃

精神的な攻撃は、脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言などを含みます。

飲食店でよくありがちなのは、他の人の前での叱責です。見せしめとして怒られていると捉えられても仕方ない行動、言動は避けましょう。また、のろま、頭が悪い、無能、給料泥棒などの侮辱も精神的な攻撃にあたります。

「これできなかったらクビ」といった雇用に関する発言は避け、人前で相手の人格を否定しないよう心がけましょう。

クビに関する発言は雇用不安を生む可能性がありますので、注意深くコミュニケーションをとることが大切です。

2.身体的な攻撃

身体的な攻撃とは、相手に対しての暴行行為が含まれます。例えば、叩く、殴る、蹴るなどが該当します。

さらに、調理器具や書類を投げつけたり、机を叩いたり、ゴミ箱を蹴ったりするような、間接的な暴力行為もパワハラの一環です。これらの行動は直接的なものだけでなく、間接的な手段を用いた攻撃も含まれます。

3.過大な要求

過大な要求は、業務上で不要であるか、達成が不可能な要求を強制することを指します。

例えば、新入りスタッフに適切な教育を行わないまま、ベテランスタッフと同じパフォーマンスを求めるのは過大な要求です。

飲食店で見られる具体的なパワハラ例として、注文ミスや皿の割れに罰金を科す、急な休暇時に代理出勤の手配を求める、人員不足で休日を与えないなどが挙げられます。

4.過小な要求

過少な要求は、個人の能力や経験に合わない仕事を与えたり、仕事を与えなかったりする行為で、これもまたパワハラに該当します。

飲食店での具体的な例としては、「意図的にシフトを組まずに嫌がらせをする」などが挙げられます。

また、料理人に接客業務を課すなど、本来の職務とは異なる業務を課したり、雑務ばかりを割り当てることも過少な要求に該当するので、これには注意が必要です。

5.人間関係からの切り離し

人間関係からの切り離しには、仲間外れや無視などが含まれます。他のスタッフ全員が一人を無視する、飲み会や忘年会には誰も案内せず一人だけ置いておくといった行為がこれに当たります。

ミーティングに関しては、参加させない理にかなった理由があれば問題ありませんが、そうでない場合は問題です。

また、技術的な理由で仕事を任せない場合は、事実を伝えるのは業務上の指示となりますが、不必要な情報を広めたり関係のない人にまで話したりするのはパワハラとみなされます。

6.個の侵害

個の侵害とは、プライベートな領域に過度に介入することを指します。

スタッフのプライベートな情報を他のスタッフに漏らす、業務外でも常に監視するといった行為がこれに当たります。

例えば、友人や家族の関係性について尋ね、それを利用して客として店に招待する、休暇の理由について問い詰める、健康状態や病気について質問するなどはいくら経営者でも許されません。

飲食店経営者が守るべき「パワハラ防止措置」とは

飲食店のスタッフ厚生労働省のガイドラインにより、職場におけるパワハラ防止措置が求められています。

飲食店経営者に求められる防止措置は以下の4つです。

  1. 事業主の方針をはっきりさせ、従業員に周知・啓発すること
  2. 相談対応や必要な対策を講じるための体制を整備すること
  3. パワーハラスメントへの事後対応を速やかかつ適切に行うこと
  4. その他必要な措置を講じ、相談者や行為者のプライバシーを保護すること

法による罰則は存在しませんが、厚生労働大臣の指導に従わない場合、是正勧告が行われ、従わないと公表される可能性があります。

飲食店ができるパワハラ対策・予防策

パワーハラスメント対策の義務化に際して、飲食店が講じるべき具体的な措置はいくつかあります。パワハラに対する正しい対策を進めていきましょう。

パワハラに関する意識共有

飲食店経営者が積極的にパワハラ予防の方針を明確に発信することは極めて重要です。組織の最高責任者が職場でのパワーハラスメントを容認しないスタンスを示すことは、従業員全体の意識共有につながります。

経営者が積極的にこのメッセージを発信することで、組織全体に一体感と共感が広がり、より健全な労働環境が構築できます。

相談窓口の設置

まず行いたいのが、相談窓口の設置です。ただし、名ばかりの窓口にならないよう、公平性やアクセシビリティに十分な配慮が必要です。

例えば、男女2名の体制を整えることで、性別による偏りがなく公正な対応が期待できます。

このような措置は、相談者が安心して話をするための基盤を提供し、パワーハラスメントの問題に迅速に対処するために役立ちます。

ただ、飲食店は小規模なものも多く、相談窓口が経営者になるケースが少なくないでしょう。

いつも忙しそうな経営者にわざわざ時間をつくってもらうことは悪いと感じるスタッフも出てきます。そこでおすすめなのが、従業員アンケートです。紙でもLINEなどでもかまいません。

従業員の実態を把握できる環境を整えることが大切です。悩みを抱えずに相談できるようにする工夫をしていきましょう。

風通しの良い環境構築

職場でのパワーハラスメントを予防するためには、良好な風通しを持つ職場が不可欠です。

活発なコミュニケーションが行われると、上司と部下の関係が改善され、パワーハラスメントの発生が減少します。逆に、上下関係が悪化すると、指導の際に過度な態度が生じてしまいやすいです。

風通しの良い職場環境の確立を意識するだけで、パワハラ予防につながります。

まとめ

飲食業界では昔ながらの慣習や過酷な労働環境が、パワーハラスメントを引き起こしやすくしています。

具体的な発言や行動は精神的な攻撃から身体的な攻撃まで多岐にわたり、防止が急務と言われています。

厚生労働省が指示する4つの措置を実施し、経営者がパワハラ防止を明確に発信しましょう。

相談窓口の整備や風通しの良い環境を構築し、これらを通じて従業員の安心とパワーハラスメントの防止を図りましょう。

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