経営
2023/03/20
飲食店に訪れるお客さんにはさまざまなタイプが存在します。多くのお客さんは、マナーやモラルをもって利用されますが、1部周囲の迷惑となる行動をとる「迷惑な客」がいることも事実です。
自身が経営する飲食店で迷惑な客に遭遇したときは、見て見ぬふりをするのではなく、きちんと対応しなければいけません。しかし、対応の仕方によってはトラブルに発展してしまうこともあるため、適切な対応法を把握しておきましょう。
「飲食店に迷惑な客が来たらどう対応したら良いの?」
「迷惑な客を対応するときは何に注意すべき?」
「悪質な迷惑客は出禁にしても良いの?」
この記事では、迷惑な客に関する上記の悩みについて解説していきます。飲食店に従事する方は、ぜひ参考にしてください。
飲食店には、態度が悪い方や大声で騒ぐ方、禁煙エリアで喫煙する方など、迷惑な客が来店する可能性があります。実際に迷惑な客が訪れた場合、飲食店側はどのように対応したら良いのでしょうか。具体的なポイントをご紹介します。
まず、飲食店側がやるべきことは「お声かけ」です。迷惑行為をはたらいているテーブルへ行き、小さな声で伝えましょう。なかには、悪意を持って意図的に迷惑行為をはたらいているケースだけでなく、話が盛り上がりすぎて結果的にうるさくなってしまった、という悪意がないケースもあります。
お客さんの事情を聞かずにはじめから周囲に聞こえるような声で注意してしまうと、お客さんの反感をかってしまったり、その後の居心地を悪くしてしまったりします。
迷惑な客が店内にいたとしても、はじめは小声で伝えるなど、配慮を忘れない対応が適切です。
迷惑な客を注意する際には、否定形ではなく依頼形で伝えることが大切です。なぜなら、お客さん側の事情も知らず「周囲のお客様に迷惑になるので静かにしてください」と頭ごなしに注意してしまうと、お客さんの気分を害してしまう可能性があるからです。
「退店してください」「やめてください」「静かにしてください」などの否定形で注意するのではなく、以下のようなお願いするような言い回しが望ましいです。
「◯◯していだいてもよろしいでしょうか」
「◯◯していただけませんか」
「◯◯していただけると幸いです」
たとえば、声がうるさい迷惑な客に対しては「もう少し静かにしていただいてもよろしいでしょうか」「お声を落としていただけると幸いです」などのような言い方が良いでしょう。
迷惑な客がいたときは、要求を伝えることに意識がいきがちですが、要求とともに理由を伝えるようにしましょう。
ただ「やめていただけませんか」と注意されても、お客さんにとっては「なんで注意されたのだろう」と疑問が残ってしまいます。お客さんのなかには、理由もなく注意されたことに対して腹を立てる方もいるでしょう。
そのため、お客さんに要求を伝えるときは「周囲のお客さまのご迷惑になりますので」「本日大変混み合っておりまして、食事を終えられましたら席をお譲りください」など、理由を添えることで注意に説得力がうまれます。
ほとんどのお客さんは従業員からの注意を聞き入れてくれますが、1部の迷惑な客は理不尽に怒ってきたり、行為を改善しなかったりします。このような悪質なケースに遭遇したときは、毅然とした態度ではっきり注意する対応が適切です。
「周囲のお客さまの迷惑になりますので」と冷静かつ強めな注意をおこない、迷惑な客のせいで他のお客さんに迷惑が被らないようにしましょう。
飲食店に迷惑な客がきた場合の対応には注意点があります。従業員の対応によって飲食店のイメージが低下することにならないように、下記のポイントを念頭に入れておきましょう。
どのようなタイプの迷惑な客だったとしても、それをそのまま放置するのは良くありません。たとえばうるさいお客さんを従業員が放置していたら、周囲のお客さんは長時間ストレスを感じながら食事しなければいけません。
素敵なランチやティータイムが台無しになり、お客さんは不満を抱えたまま退店されるでしょう。「この飲食店は迷惑な客を放置する」という印象を持たれ、客足も遠のいてしまいます。
また、見かねたお客さんが迷惑な客に注意し、お客さん同士が揉めてしまう可能性もあるでしょう。
このように、従業員が迷惑な客をそのまま放置してしまうと数多くのデメリットがあるため、早急な対応が必要です。
飲食店に「迷惑な客」がいるということは、周囲のお客さんに迷惑がかかっている可能性が高いです。そのため、注意するかどうか判断が難しいお客さんがいた場合、周囲のお客さんの表情や様子を観察してみましょう。
従業員が迷惑な客に気づいたとき、周囲のお客さんはもっと不満を感じているケースがほとんどです。早急に迷惑な客へ注意をおこない、周囲のお客さんに小さな声で注意したことを伝えたり、必要に応じて席の移動を提案したりしましょう。
退店の際に謝罪をおこなうと、より飲食店側の誠意が伝わります。
飲食店側が適切な対応をおこなっても改善されない、理不尽に文句を言ってくる、逆上してくる場合は、警察への通報も選択肢のひとつに入れましょう。警察を呼ぶことに抵抗がある方は少なくありませんが、従業員では対応しきれない迷惑な客の場合は警察に通報することがもっともスムーズに場が収まります。
以下のような行動や言動が見られる場合、警察への通報を検討しましょう。
迷惑な客に注意しても改善されない、何度も来店して迷惑行為を繰り返すという場合、飲食店側は「出禁」にしたいと感じることでしょう。
飲食店側が一方的にお客さんを出禁にすることはできるのでしょうか。ここでは、飲食店における出禁の考え方をご紹介します。
結論から言うと、飲食店は迷惑な客を出禁にすることは可能です。法律には出禁に関する明確な記述はありませんが、民法の考え方のひとつに「契約自由の原則」があります。これは「どのような人と契約するかは自由で制限してはいけない」というものです。
そのため、飲食店にお客さんを自由に選ぶ権利があり、すべてのお客さんを受け入れる義務はありません。
ドレスコードを設ける飲食店があるように、お店側がお客さんを選ぶことはビジネス戦略として認められている正当な行為です。そのため、営業に害のある迷惑な客に対しても、飲食店側は自由に入店を拒否することができます。
迷惑な客を実際に出禁にする場合、口頭ではなく書面での伝え方が適切です。口頭で出禁を伝える方法も有効ですが、後日「出禁なんて知らない」と言う可能性があります。言った言わない論争を防ぐためにも、今後一切の入店を拒否するという内容で「通告書」を作成し、伝える方法がもっとも有効でしょう。
それでも迷惑な客が入店しようとしたり、お店に居座ったりする場合は不退去罪や建造物侵入罪で警察に告訴することも可能です。
出禁は飲食店側に認められている権利ですが、差別的な入店拒否になっていないか慎重な判断が必要です。正当な理由なく障害、人種、国籍が異なることを理由に出禁にしたりサービスの提供を拒否したりする行為は、不当な差別扱いになります。
飲食店側が障害者差別解消法の違反になる、インターネット上や口コミなどで低評価を受けるリスクもあるため、安易に出禁はおこなわず本当に必要なケースだけにすべきと言えます。
この記事では、飲食店の迷惑な客への対応についてご紹介しました。迷惑な客に適切な対応をすることで、他のお客さんが店内で過ごすひとときを守ることにつながります。
お店のイメージを低下させない「正しい対応方法」を全従業員に周知しましょう。