経営
2024/07/31
飲食店を経営している、または開業を検討している方は「飲食店の不正」について考えたことがあるのではないでしょうか。飲食店の営業は常駐する社員やアルバイトまかせになりやすく、経営者が気が付かないうちに不正行為がおこなわれているケースも決して珍しくありません。
そこで重要なのが、不正防止の環境を整えることです。
「飲食店で起こり得る不正にはどんなものがある?」
「飲食店でもし不正が起きたらどう対応したら良い?」
「飲食店の不正を防ぐためにはどのような対策がある?」
この記事では飲食店経営者が気になる上記の悩みを一気に解決します。ぜひ最後までお付き合いください。
ほぼすべての事業者にとって、従業員の不正問題は深刻な悩みの種です。
特に本部と現場の距離が遠く、金銭管理が個人に委ねられがちな中小規模の飲食店は、不正の温床となりやすいでしょう。ここでは代表的な不正の例をいくつか紹介します。
売上金の抜き取りや着服は、飲食店で頻繁に発生する従業員の不正行為の典型例です。レジを通さずに支払いを持ち出したり、処理後に操作を行ったりする不正が見られます。
特に売上伝票が通し番号でない場合、不正が隠れやすくなります。また、少額を分散して抜き取る手法も一般的で、検出が難しくなります。
飲食店における不正の一つに、従業員が料理や食材を勝手に利用したり持ち帰ったりする問題があります。
例えば厨房や倉庫にある食材を勝手に消費する行為です。このようなことが頻繁におこると材料費や廃棄費用の計算が狂い、経営に悪影響を及ぼすでしょう。
また、規定量を超えて盛り付けたり異なる食材を追加したりすることも、経営に悪影響を及ぼす不正行為の一例です。
経営の健全性を保つためにも、こうした問題には十分な注意が必要です。飲食店経営者は、従業員の教育や監視体制の強化を通じて、不正行為を未然に防ぐ努力が求められます。
飲食店における不正行為の一つに、納入業者への支払いに関するものがあります。少額の支払いをレジから直接行う際に、従業員がミスを装って実際よりも多くの金額を支払っている不正行為も実際にある事例です。
特に特定のスタッフに仕入れを任せ、原価率を適切にチェックしていない場合は気をつけなければいけません。
納入業者との間で発注を偽装し、現金を支払った後に個人にペイバックされるような癒着も考えられます。
こうした不正行為は直接売上に影響し、飲食店の経営とブランドにも直接影響するため、これらの問題を未然に防ぐことが重要です。
不正の事後対応はケースバイケースですが、懲戒解雇や刑事告訴は難しい場合が多いです。従業員の抵抗や負担も考慮し、自主退職を促すのが適切です。
ここでは、もし自身が経営する飲食店で実際に不正行為が起きてしまった場合の対応の流れを手順別に解説します。
横領が発覚した場合、まず最初に行うべきことは、横領の事実を証明するために証拠を集めることです。
横領が証明されなければ、その後の手続きを進めることはできません。横領が発覚した後には可能な限り以下のチェックを行いましょう。
防犯カメラがある場合はその映像を確認することが最重要になります。なぜなら横領の瞬間が映像に残っていれば、強力な証拠となるからです。
さらに、帳簿や他の記録から情報を集めたり、同僚からの聞き取りを行うことで、横領の証拠を見つけることができるかもしれません。
不正行為をはたらいた従業員が深く反省している場合は示談にすることも可能です。当事者との協議を経て、返済プランを立て段階的に回収していきます。
個人の場合、不動産などの物的担保を確保するのは難しいでしょう。そのため、保証人などの人的担保で債権を保護することも検討してください。
不正行為が発覚した場合、被害を受けた飲食店側は、損害を回復するためにさまざまな手段を検討します。その一つが、入社時に提出された「身元保証書」を活用して身元保証人に請求することです。
この「身元保証書」は、通常、入社時に従業員が両親や親族を保証人として提出するものであり、不正行為による損害が発生した場合、保証人に損害の補償を求めることができます。
この際注意すべきポイントは「身元保証書」の有効期限です。
一般に保証期間は契約成立の日から3年間であり、最長で5年間となることがあります。したがって不正行為が発覚した際には、保証書の有効期限を確認し、適切な時期に請求手続きを行うことが重要です。
不正行為が発覚した場合、退職金の支給は通常、支給なしもしくは減額されることが一般的です。
しかし退職金の支給額には、過去の会社への貢献度やその他の情状酌量が影響する場合があります。このような場合、不正行為によって発生した損害を回収するために、退職金との相殺を検討することも一つの手です。
具体的には法的な損害賠償を行わずに円満に退職してもらい、退職金と相殺します。これによって、飲食店側は損害を回収し、かつ円満な離職を促すことができるでしょう。
ただし、このような対応は個々の事情や会社の方針によって異なるため、慎重に検討する必要があります。
飲食店の人材不足や金銭管理の集中化により、不正が起きやすい環境もあります。しかし、小規模な店舗でも次の4つの対策を実行することで、不正を未然に防ぐことが可能です。
経営者自身も数字の管理や在庫管理、スタッフの管理などの業務を定期的にチェックしましょう。仕事の多忙さから、信頼できるスタッフに業務を任せっきりになっていることも少なくないでしょう。
放任と信頼は異なります。定期的または抜き打ちのチェックを通じて、スタッフにも緊張感を持たせることが重要です。
具体的にはレジの打ち出し金額と現金残高の合わせを欠かさず行うことです。これにより、売上の異常な動きを察知し、不正行為を早期に発見することが可能になります。
また、定期的な棚卸や帳簿のチェックも重要です。これらの作業が適切に行われていれば、内部統制も強化され不正が発生しにくい環境が整います。
POSレジの活用は現金の取り扱いに関わる不正を防止する上で極めて効果的な方法です。
POSレジを導入することで、誰がレジを操作し、誰がキャッシュドロワの開閉を行ったかなどの担当者の情報が残ります。これにより、後からチェックすることができます。
また、社員やアルバイトの出勤シフト履歴と組み合わせることで、レジ誤差の傾向を把握し注意喚起することも可能です。
その他の業務に関わるメリットも多く、会計ミスの削減や人件費の削減にもつながります。
1日の売上金の計算も、レジとの連携が可能な釣銭機などを使用することでスムーズに行えます。iPad POSレジやPOSレジなどはこのような機能は最初から備わっています。
不正行為を防ぐための重要な手段の一つが、防犯カメラの設置です。
セキュリティ投資を行うことで、監視カメラやセキュリティサービスを利用することができます。これにより、従業員に対して精神的な圧力を与え、不正行為への姿勢を示すことができます。
防犯カメラを設置する場合には、入り口やレジ前など、人やお金が頻繁に出入りする場所に設置することが効果的です。結果、不正行為の発生を監視し、早期に対処することが可能となります。
不正行為を防ぐために有効な手段の一つが、キャッシュレスの促進です。
直接手渡しやレジからの支払いでは、ミスや不正が発生しやすくなります。そのため納入業者への支払いや給与支払いなどは、銀行振込などお金に触れない方法を積極的に取り入れることが重要です。
特に手渡しの場合は、オーナー自身が事前に準備しておくことが重要です。支払いの際には、レジからの出金を避け、あらかじめ用意した金額を使用することで、不正行為を防止することができます。
キャッシュレスの導入は、不正のリスクを軽減し、経営の安定性を高めるためにも重要な取り組みとなります。
入社時には、従業員に対して簡単な誓約書を作成しておくことが重要です。
この誓約書には就業規則の遵守はもちろんのこと、店や会社に損害を与えないこと、業務上知り得た個人情報の漏洩を防ぐこと、そして万が一故意に損害を与えた場合の責任を明確に記載します。
ただし、未成年が誓約書に署名する場合は法律行為になるため、親などの法定代理人の同意が必要になります。この点については、両者にしっかりと説明し、契約の締結がなぜ必要なのかを理解してもらうように心がけましょう。
入社時の契約は、不正行為の防止や会社の利益を守る上で非常に重要な役割を果たします。
不正行為への迅速な対応は、経営者の危機管理意識が問われます。
平常時から、責任者やオーナーに対してすぐに報告できる連絡ルートや声かけが確立されているでしょうか。
不正行為は個人だけでなく、複数人や組織全体によって行われる場合もあります。報告が遅れると、店舗に大きな打撃を与える恐れがあります。
新人アルバイトでも不正を報告できるような体制づくりが重要です。気づいたらためらわずに報告できる環境を整えることで、不正行為の早期発見と迅速な対応が可能となります。
これにより、組織全体の信頼性や安定性を確保し、不正行為のリスクを最小限に抑えることができます。
また、FOODGYMが提供する【ホッとLINE】を活用することで、不正行為の通報と職場環境改善の提案を簡単に行うことができます。
24時間対応のLINE窓口で、いつでもどこでも安心して利用でき、従業員の声を集めて問題解決に役立てることができます。
実は社内のスタッフ間でのコミュニケーションは、不正対策において重要な役割を果たします。なぜなら従業員同士が積極的にコミュニケーションを取ることで、不正行為を行う従業員の不審な動きに早く気付くことができるからです。
たとえばカメラの盲点に入るようになったり、行動パターンが変化したりする従業員の様子が、店長やオーナーにより注視されるようになります。
日頃から頻繁にコミュニケーションを取り、従業員同士がお互いの様子を報告し合う仲間意識を醸成することが重要です。
これにより責任者側が従業員の状態を正確に把握し、不正行為の早期発見と迅速な対応が可能となります。組織全体で協力し合い、透明性と信頼関係を構築することで、不正行為のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
最後に、飲食店経営者によくある疑問を解決します。
食品衛生法には廃棄品の持ち帰りを禁じる規定は存在しません。ただし、食品衛生法の施行規則には、食中毒を防ぐ観点から一定の時間内に消費することが求められています。
具体的には、調理後は可能な限り速やかに食べることを推奨し、冷蔵保存の状態を出てから消費されるまで最大でも2時間以内とされています。
つまり廃棄食品を持ち帰ること自体は法的に制限されていませんが、生ものや半生の料理などは持ち帰らず、食品の衛生状態には十分な注意が必要です。
店内の商品や廃棄品を勝手に食べたり持ち帰ったりする行為は、法的に重大な問題となります。これは会社の財産権を侵害する行為であり、損害賠償の対象となります。
また、業務上横領罪に該当することから、刑事罰が科せられる可能性もあります。業務上の信頼を損なう行為には厳しい処罰が避けられません。
警察への届け出は経営者の裁量次第です。横領事件の解決には示談や民事訴訟もありますが、場合によっては刑事責任が問われることもあります。
しかし警察に届け出ると事件は公になり、店の評判に影響を及ぼす可能性も考慮すべきです。
民事訴訟で解決する場合もありますが、警察は民事問題に介入しないこともあるため状況を十分に考慮して判断しましょう。
不正行為は、飲食店経営者にとって深刻な悩みの種です。従業員の不正は経営に大きな影響を及ぼし、法的な問題やイメージダウンにつながる可能性もあります。
しかし事前の対策や事後の対応をしっかりと行うことで、不正行為を未然に防ぎ、経営の安定と信頼の向上につなげることができます。
経営者は定期的な監査や対策の徹底、そして状況に応じた適切な対応を行うことで、飲食店の不正を防ぐことができるでしょう。