飲食店を低予算で開業したい方におすすめな方法のひとつが「間借り」です。間借り営業は、資金が集まりにくい方でも、自分のお店を持つ一歩を踏み出しやすいとされています。
今回は、間借りでの飲食店開業を考える方に向けて、以下の疑問について解説します!
「飲食店の間借り営業ってなに?」
「飲食店の間借り営業のメリット・デメリットを知りたい」
「飲食店を間借りする際の費用はどれくらい?相場は?」
これから飲食店の開業を検討している方や既に経営している方も、ぜひ参考にしてください。
飲食店の”間借り”とは?
飲食店の「間借り」とは、本来は代金を払って他人の家の一室を借りることを指す言葉です。最近では、既存の飲食店が営業時間外や使っていないスペースを他の店舗に貸し出す形態が増えています。
例えば、「夜はバー、昼はカレー屋」といったように、異なる営業時間の店舗をシェアしながら別の業態のお店を開業するところが特徴です。契約期間も週1日から数時間単位の店舗もあり、副業での開業やコストやリスクを抑えて小さなところから挑戦したい方に適しています。
物件や設備は既存の店舗のものを利用するため、物件契約にかかる初期費用を大幅に節約できます。店舗側も空き時間で収益が見込めるため、お互いにメリットがあります。
様々な業態やジャンルがあり、イートインだけでなくテイクアウトやデリバリー専門のバーチャルレストランも展開できます。このような形態は、試験的に独立したい方や特定の曜日だけ飲食店を始めたい方にぴったりの独立方法と言えるでしょう。
飲食店を間借りするメリット
間借り営業は、相互に協力し合い、共に利益を生み出すことで、両者にとって多くのメリットをもたらします。以下では、その詳細を紹介します。
低資金で開業できる
飲食店を間借りする最大のメリットは、低資金で開業できる点です。
自身で新たな店舗を建設したり、テナント契約を結ぶ際の初期費用を抑えることができます。既存の飲食店のスペースを借りるため、設備や内装などのコストを大幅に削減できるのです。これにより、リスクを抑えながら安定した経営をスタートさせることが可能です。
さらに、物件の賃料や水道光熱費などの固定費を他の店舗と分担できる点も間借りのメリットの一つです。このようなメリットは、間借りしている店舗だけでなく、店舗を貸している事業主にとっても利点となります。
エリアを移動しやすい
飲食店を間借りすることによる大きなメリットの一つは、エリアを移動しやすい点です。
間借り営業では、ある一定の場所に固定されず、時期や需要に合わせて別の場所への出店ができます。そのため、需要の変動や新たな市場の開拓に応じて、戦略的に場所を移動することが可能です。
これにより、様々な地域で顧客を取り込みながら、ビジネスの成長を促進することができるでしょう。
既存の知名度を活かせる
他の店舗の一部を間借りすることで、既存の知名度やブランド力を活かすことができます。すでに認知度のある店舗の場所を利用するため、立ち上げ時から多くの顧客にアクセスできる利点があります。
既存のファンやリピーターが新たな場所であなたの飲食店を見つけることで、新規顧客の獲得がスムーズになるでしょう。
ブランドイメージを活用しながら、競争の激しい飲食業界での差別化にも貢献できます。
期間限定でオープンできる
間借り営業は、期間を限定してオープンすることができる点も大きな利点です。特定のイベントや季節、一時的な需要に対応して、期間を設定して営業することが可能です。
また、仮店舗としての試験運営や新商品のテスト販売に活用することもできます。リスクを最小限に抑えつつ、市場の反応を確認して経営戦略を練ることが叶うのです。
期間限定のオープンは集客にも効果的であり、柔軟な経営戦略を展開するには有効な手段になるでしょう。
飲食店を間借りするデメリット
間借りして飲食店を営業する際には、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが重要です。ここでは、主なデメリットを紹介しますので、集客と売り上げを損なわないように適切な対策を考えましょう。
内装や設備の自由度が低い
飲食店を間借りする際のデメリットの一つは、内装や設備に対する自由度が低いことです。
既存の店舗や施設の一部を利用するため、内装や設備の大幅なカスタマイズが難しくなります。自身のコンセプトに合わせた空間を構築したい場合には、制約を不満に感じることになるでしょう。
また、他の店舗との共有スペースを利用するため、独自性を出しにくい点もあります。
営業時間に制限がある
飲食店を間借りする際のデメリットとして、営業時間に制限があることが挙げられます。他の店舗とスペースを共有するため、営業時間や定休日に合わせる必要が生じるのです。
貸し出し元の店舗と営業時間が重複してしまうと、営業が制約されることになります。特定の時間帯に集客を重ねたい場合や深夜営業を検討している場合には、事前の調整や相談が必要です。
固有の住所を持てない
もう一つのデメリットは、固有の住所を持てないことです。
貸し出し元の店舗や施設の住所を利用するため、自身の独自の住所を持つことができません。そのため、ホームページや広告、名刺などの表記に制約が生じる可能性があります。
また、ブランドイメージを構築する際にも住所の表記は重要ですが、間借り営業では貸し出し元の住所を使用する必要があるため、ブランドの一貫性が損なわれる恐れがあります。
住所対策として、間借りをする飲食店のオーナーと協議し、郵便ポストを別々に設置したり、Webサイトに店舗情報を掲載する許可を取得したりしましょう。
オーナーと連携して顧客とのコミュニケーションをスムーズにし、ブランドイメージの一貫性を保つための対策が重要です。
飲食店を間借りで開業する際の費用相場
通常の飲食店では、物件契約時に敷金や礼金、施工費などさまざまな費用がかかりますが、間借りの場合はレンタルするスペース料金のみで契約が可能です。
実際の料金は、月額で5万円から30万円の間で設定されていることが多いです。安い間借り店舗では、東京都心でも10席程度の規模で3万円という飲食店もあります。賃貸マンションの家賃と比較しても非常に低額です。
飲食店を間借りで開業する際の費用相場は、さまざまな要素によって変動し、料金の違いは「立地」「店舗規模」「使用頻度」「時間帯」などの要素が影響します。人が多く集まりやすい立地や広い場所、週に何回も利用可能で夜も使えるといった条件では高額になりますが、逆の場合は安くなります。
間借りだからといっても数万円で飲食店を運営できる点は、コストを抑えたい経営者にとって非常に魅力的なポイントといえるでしょう。
これらの費用をしっかり把握し、予算を立てた上で間借り営業を検討しましょう。商圏や競合店の調査も重要な要素です。
飲食店の間借り営業の注意点
飲食店の間借り営業は、手軽で始めることができる方法として人気がありますが、注意すべきポイントもいくつかあります。ここでは特に注意が必要な3つの点について解説します。
食中毒は間借り先にも影響を及ぼす
当然ですが、間借り営業においても食中毒への対策は欠かせません。もし営業中に食中毒が発生した場合、自店舗だけでなく、レンタルしたオーナー側の店舗も営業停止となる可能性があります。
食品の取り扱いや衛生管理の徹底は共通の課題であり、相互に協力し合うことが重要です。そのためには慎重な食材の管理と従業員の教育を徹底しましょう。
定期的な清掃と消毒を徹底し、食品の安全性を確保することで、お客様への信頼を高めることが大切です。
金銭管理は別々にする
間借り営業では、金銭の管理を徹底することが不可欠です。
収益や支出は別々に管理し、正確な記録を取る必要があります。共有の金銭管理では混乱やトラブルの原因となる可能性があるため、明確なルールを設けることが重要です。双方が納得できる透明な決算を心掛けましょう。
適切な会計ソフトを導入し、金銭の流れを把握することで経営の健全性を確保しましょう。
ゴミ処理ルールと費用
間借り先とのゴミ処理ルールを明確にすることも大切です。各店舗が適切にゴミを分別し、処理費用を共有するか、それぞれが負担するかを協議しましょう。
ゴミ処理に関するトラブルを避けるためにも、事前にルールを決めておくことが必要です。清潔な環境を維持し、環境への配慮も忘れずに行いましょう。ゴミ処理の適切な実施は地域との良好な関係を築く上でも重要です。
【Q&A】飲食店の間借りに関する疑問を解消!
最後に、飲食店の間借り営業におけるよくある質問に答えていきます。
Q.保健所の営業許可は必要?
通常、飲食店の間借り営業では、物件所有者や既存の飲食店経営者が営業許可を持っている場合、借り手側は改めて申請する必要がありません。間借りする際には、貸し手側が営業許可を保有しているかを確認し、必要であれば管轄する保健所に相談しましょう。
なお、飲食店以外での用途(販売業・製造業など)で間借りを希望する場合は、必要な営業許可が異なる場合がありますので、借り手側が用途に応じた営業許可を取得しているかどうかも確認が必要です。
間借り営業を行う際には、適切な営業許可の確認と取得を忘れずに行い、安心して活動できるようにしましょう。
Q.間借り物件を探せるマッチングサイトは?
間借り物件を見つける方法は、専用のマッチングサイトやサービスを活用するのが便利です。
具体的には、間借りを募集している飲食店が集まる専門のポータルサイトや、レンタルスペース用のポータルサイトを利用する方法があります。以下はいくつかのサイトの例です。
- シェアレストラン:吉野家ホールディングスが運営する間借り店舗と独立希望者をつなぐサイト
- 軒先レストラン: 敷金・礼金・保証金が不要なサイト
- スペースマーケット: 国内最大級のポータルサイトで、イベント会場や会議室、キッチンなどさまざまなシェアスペースが掲載
- インスタベース: 全国のレンタル可能なスペースを20,000店舗以上掲載しているポータルサイト
Q.契約書は交わすべき?
間借り営業での円滑な営業を維持するためには、契約時に契約書を交わしておくことが不可欠です。明確な契約内容により、責任や費用の分担が明確化され、トラブルを未然に防ぐことができます。
契約書には営業期間、貸し出し料金、設備の状態、費用負担のルールなど細かく取り決めるべき点があります。
揉めごとを未然に防ぐためにも、契約書作成には十分な時間と注意を払いましょう。
まとめ
「飲食店の間借り」とは、既存の飲食店が営業時間外や使っていないスペースを他の店舗に貸し出す形態で、異なる営業時間の店舗をシェアしながら別の業態のお店を開業することが特徴的です。
契約期間も週1日から数時間単位の店舗もあり、低資金で開業できるため、副業での開業やリスクを抑えたい経営者に適しています。飲食店開業の選択肢のひとつとして検討しましょう。