経営
2026/01/29
飲食店を経営し利益を上げるためには、正確な”原価率”の把握は欠かせません。成功のポイントとして原価率に注目し、利益を最大化する方法を考えましょう。
本記事では原価率に関する考え方を確認して、飲食店経営を成功させるためのノウハウをご紹介します。
「飲食店の原価率について、計算などの基礎知識を得たい」
「飲食店の原価率の目安・平均はどのくらいか知りたい」
「飲食店の原価率を抑える方法を知っておきたい」
とくに上記のような疑問を持つ方は、ぜひ参考にしてください。
飲食店における原価率とは、「売上に対して食材などの原材料費が占める割合」を示す指標です。
そもそも“原価”とは、商品を製造・提供する際にかかる費用のことを指します。飲食店では「売上原価」として、主に食材費や仕入れ原材料費が該当します。
原価率が高すぎると利益が残りづらく、逆に低すぎると顧客満足度を損ねることもあるため、適切なバランスで管理する必要があります。
飲食店経営の安定化には、この原価率を理解し、業態や価格帯に応じて適切に調整・管理していくことが不可欠です。
原価率は、以下の式で求めることができます。
原価率(%)= (原価 / 売上)× 100
原価は食材や材料の仕入れにかかる総費用を指し、売上は飲食店の収益を示します。これらを使って原価率を計算します。
たとえば1,000円で提供する料理に300円の食材費がかかっている場合、原価率は30%になります。これは、売上に対してどれだけのコストをかけて商品を提供しているかを把握する上で非常に重要な指標です。
基本的には「原価率が高いと利益が減少し、原価率を低く抑えることで売上を増やすことができる」という考え方で問題ありません。
飲食業界において、一般的な原価率の目安は30%とされています。つまり、売上の30%が原材料や仕入れにかかり、残りの70%で人件費・家賃・水道光熱費などの経費を賄い、最終的な利益を確保するという構図です。
これは、「FLコスト(後述)」を60%以内に収めることが望ましいという考え方に基づいています。FLコストを超えないようにするには、原価率は30%前後が理想とされているのです。
しかしながら、実際の現場では飲食店の業態やコンセプトによって適正な原価率は異なるため、一律に30%にこだわる必要はありません。
例えば、原価率が高くても客単価が高く設定できる業態では、それに見合った利益が得られるケースもあります。以下に代表的な業態ごとの原価率目安を表でまとめました。
| 業態 | 原価率の目安 | 特徴・ポイント |
|---|---|---|
| 居酒屋 | 30〜35% | ドリンクの粗利が高く、フードの原価率を多少上げても利益を確保しやすい |
| カフェ | 25〜30% | 原価が低めのドリンクが中心だが、内装や立地コストが高くなりやすい |
| 焼肉・ステーキ | 40〜50% | 高単価な肉を扱うため原価率は高めだが、客単価も高く利益を確保しやすい |
| ラーメン | 25〜30% | 低原価だが回転率が重視される業態。自家製麺などでコスト調整も可能 |
| フレンチ・イタリアン | 35〜40% | 素材にこだわるケースが多く原価率が高くなりがち。コース設計で調整可能 |
このように、「原価率30%」はあくまでもひとつの目安に過ぎません。業態の特性や営業戦略に応じた原価設計が必要不可欠です。
ただし、いくら業態による違いがあるとはいえ、原価率が50%を超える状況は要注意です。よほど高単価な商品設定や集客力がない限り、その他の経費と合わせると赤字に転落するリスクが高まります。
飲食店の経営を成功させるためには、原価率だけでなく、さまざまな指標を把握することが重要です。とくに、歩留まり、FLコスト、ロス率といった指標は原価率と密接な関係があります。
これらの指標を理解し、適切に管理することで、収益を最大化し、経営の安定性を確保することができるでしょう。
歩留まり(ぶどまり)とは、飲食店においては調理した料理をどれだけ有効に利用できているかを示す指標です。具体的には、調理した料理のうち、お客様に提供されずに廃棄される割合を示します。
歩留まりが高いほど、食材のロスを減らし、効率的に経営することができます。その歩留まりを百分率で表したものを「歩留まり率」といい、歩留まり率が高いほどロスが少なく理想的な状態と言えるでしょう。
原価率30%で考案したメニューも、歩留まりを考慮すると35%になってしまうこともあります。原価率を考える際には、フードロスも含めた上で計算することが大切です。
また、いかにロスを出さないようにするかを考えながらメニューを考案することも大切です。
飲食店の経営においては、原価率だけでなく歩留まり率を把握し、ロスを最小限に抑えた効果的な経営を心掛けることが収益向上につながります。
営業利益率は、売上に対する営業利益の割合を示す指標で、店舗の収益性を測るために重要です。
営業利益は売上から原価や人件費、その他の営業費用を差し引いたものであり、この指標を高めることで経営の健全性を確保します。
粗利(粗利益)は、売上から直接原価を引いたもので、営業活動の基本的な収益力を示します。
粗利率を高めることは、販売価格の設定や原価の管理において重要な意味を持ちます。粗利が高ければ、固定費や変動費をカバーしやすく、利益の確保が容易になります。
FLコストのFはFoodで原材料費(食材費)を指し、LはLavorで人件費を表します。これらを合わせてFLコストと呼ばれ、売上高に対するFLコストの割合をFL比率と呼びます。
飲食店では、原材料費と人件費をそれぞれ25〜30%程度に抑え、FL比率を50〜60%に収めるのが理想的です。
その他の経費としては家賃や消耗品費などが約30%かかることもありますが、それでも10%の利益が得られることになります。
とくに首都圏では家賃が高騰しやすいため、FL比率を50%を下回るようにすることが望ましいです。
人件費や家賃比率については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:飲食店における人件費率の目安と計算方法
参考記事:飲食店における家賃比率の目安と計算方法
ロス率とは、飲食店における食材のロスの割合を示す指標を指します。つまり、仕入れた食材のうち、廃棄される割合です。
ロス率が高いと、原価率の上昇につながり、収益の低下につながります。
すべての商品が売れ切れれば理想的ですが、売れ残りや破棄が発生すると原価率が上昇してしまいます。商品の破棄やオーダーミスによるロスは原価に上乗せされ、利益に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
破棄率を減らすことは結果的に原価率を下げることにつながるため、適切な調整が求められます。
飲食店経営では、原価率だけでなく、これらの指標を総合的に管理することが成功の鍵となります。
各指標をバランスよく改善することで、効率的かつ収益性の高い店舗運営を実現することができるでしょう。
飲食店経営において利益を最大化するためには、原価率の効果的な管理が不可欠です。原価率を下げることで、無駄を省き、経営の持続性を確保することが可能となります。
最後に、飲食店が原価率を下げるために取り組むべき方法についてご紹介します。
飲食店が原価率を下げるためには、在庫管理の徹底が欠かせません。適切な在庫管理によって、食材のロスを最小限に抑えることができます。
具体的には以下の点に注意すると良いでしょう。
需要予測を行い、必要な分量を的確に仕入れることで、余剰在庫や期限切れの食材を減らします。
食材の適切な保存方法を徹底することで、鮮度を保ちながらロスを防ぎます。
先入れ先出しの原則を守り、古い在庫を優先的に使用することで、在庫の廃棄を防止します。
コストパフォーマンスの良い仕入れ先を選定し、仕入れ価格を交渉することで原価を下げることができます。
定期的に仕入れ先と価格交渉を行い、最適な価格を確保する必要があります。
価格交渉においては、仕入れ先の市場動向や競合他社の価格を把握し、それに基づいて交渉を進めることが重要です。
また長期的な関係を築くために、信頼関係を構築し、双方にとって有益な条件を模索する姿勢が求められます。
価格交渉だけでなく、仕入れ条件の見直しや納品スケジュールの調整なども含めて総合的に検討しましょう。
一つの仕入れ先に頼らず、複数の選択肢を持つことで競争力を高めていくことも重要です。
複数の仕入れ先を持つことで、仕入れ価格の比較が容易になり最適な条件を見つけやすくなります。
また特定の仕入れ先に依存しないことで、供給不足や品質のばらつきに対応しやすくなります。
さらに、新しい仕入れ先を常に探し続けることで、より良い条件を得る機会を増やし、コスト削減につなげることができます。
飲食店の原価率を下げるうえで、オーバーポーション(過剰な盛り付け)の減少は重要なポイントです。無駄な食材使用を減らすことで、原価率を抑えることができます。
提供する料理の盛り付けや需要を調査し、適切な量を把握することは必須です。また、過剰な量や高コストの食材を使用したメニューを見直し、適正なサイズに変更することも大切です。
さらに、従業員に適切な盛り付けを指導し、無駄な食材使用を減らすためのトレーニングを行うことも効果的でしょう。
これらの対策により、オーバーポーションを減少させ、効率的な原価率の管理を実現できます。
飲食店のメニューと価格の改善も、原価率を下げる効果的な方法のひとつです。
まず、高コストの食材を使用するメニューは、価格設定に注意して採用し、バランスを考えます。また、売れ筋のメニューに注力し、需要が高い料理を提供することも、原価率を補うことにつながります。
旬の食材を活かしたシーズナルメニューを提供し、食材コストを抑えつつ集客力を高めることも重要です。
これらの改善策を取り入れることで、飲食店の収益向上と経営の効率化が期待できます。
もちろん、原価率を低下させれば良い分ければありません。バランスを考慮しながらメニューと価格設定を行いましょう。
A.飲食店の理想的な原価率は、一般的に30%前後とされています。ただし、業態によって適正ラインは異なります。
例えば、居酒屋やカフェなどは30%前後が多い一方で、高級レストランでは40%近くになることもあります。
利益を最大化するには、単純に原価を下げるだけでなく、「単価×回転率×原価率」のバランスを考慮し、粗利を安定的に確保することが重要です。
A.原価率が高すぎると、売上が増えても利益が出にくくなるというリスクがあります。材料費の高騰や仕入れミスが重なると、赤字経営に陥る可能性もあります。
とくに「単価が低いのに原価率が高い」メニューが多い場合は要注意です。また、高級食材を使った商品で差別化を図る場合も、価格設定が甘いと利益を圧迫します。
原価率だけでなく、メニューごとの粗利や人気とのバランスも重視しましょう。
A.原価率の見直しは最低でも月1回、理想は週次や仕入れのタイミングごとにおこなうのが望ましいです。特に、原材料の価格が変動しやすい昨今では、価格変更に気づかずに仕入れ続けると、いつの間にか原価率が大幅に悪化していた…というケースも少なくありません。
定期的な棚卸や食材の単価チェックを習慣化し、異変があれば即座に調整できるようにしておくことが大切です。
A.原価率を下げるには、仕入れ価格の見直しや業者の選定だけでなく、「食材のロス削減」が極めて重要です。
たとえば、余剰在庫を使った日替わりメニューを作ったり、部位ごとの使い分けで一つの食材を複数メニューに活用するなどの工夫が有効です。
また、盛り付け量の最適化や原価の安定した食材を使った看板メニューの開発も効果的です。単なるコストカットではなく、満足度と利益の両立を目指す施策が重要です。
A.原価率が高くても「集客力のあるメニュー」であれば残す価値はあります。 いわゆる「呼びメニュー(目玉商品)」としての役割を果たすことで、他の粗利の高いメニューの注文につながるケースもあるためです。
たとえば、「ローストビーフ丼」を赤字ギリギリで提供しても、セットで頼まれるドリンクやデザートで十分に利益を確保できることがあります。重要なのは全体としての利益構造を把握する視点です。
原価率が高い原因は、単なる仕入れ価格だけでなく、メニュー構成や価格設定、ロスの発生、人件費とのバランスなど複合的な要因によって生じます。そのため、原価率の改善には数字を正しく把握し、店舗の実情に合わせた対策を講じることが欠かせません。
FOODGYMでは、飲食店に特化した税務顧問として、帳簿上の数値だけでなく、実際の運営状況を踏まえた経営サポートを行っています。原価率に不安がある方、利益が残りにくいと感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。経営を安定させるための具体的なヒントをご提案します。
飲食店経営の成功には、原価率の把握と適切なコントロールが不可欠です。
一般的な目安は原価率30%ですが、業態や客単価によっても適正値は異なります。原価率を下げるためには、在庫管理の徹底、オーバーポーションの削減、メニュー設計や価格戦略の見直しが効果的です。
また、歩留まり率やFLコスト、ロス率などの指標もあわせて管理し、経営の安定性を確保していきましょう。
押さえるべきポイント
①原価率は飲食店の収益構造を左右する重要な指標
②目安は30%前後だが、業態ごとの基準を意識することが重要
③在庫・ポーション管理、メニュー改善が原価率コントロールの鍵
④FLコストやロス率とセットで確認し、経営判断に活かすことが大切