飲食店の人件費率の目安は?適正値と改善方法を解説

経営

2026/06/08

飲食店の人件費率の目安は?適正値と改善方法を解説

飲食店経営において、人件費率は利益を左右する重要な指標の一つです。しかし、「自店の人件費率は高いのか」「どこまで下げるべきなのか」が分からず悩む経営者も少なくありません。

本記事では、飲食店の人件費率の目安や計算方法、改善方法について詳しく解説します。

人件費率とは何か?

飲食店スタッフ人件費率とは、売上高に対して人件費が占める割合のことです。

飲食店経営では原価率と並んで重要な管理指標の一つとされており、人件費率が高すぎると利益が残りにくくなります。店舗の収益性や経営効率を把握するためにも、定期的に確認しておきたい数値です。

人件費率の計算方法

人件費率は「人件費 ÷ 売上高 × 100」で算出できます。

例えば、月間売上が300万円、人件費が90万円の場合、人件費率は30%です。

人件費率=90万円 ÷ 300万円 × 100=30%

計算自体はシンプルですが、毎月継続して確認し、推移を管理することが重要です。

人件費率に含まれる費用

人件費率を算出する際は、アルバイトやパートの給与だけでなく、正社員の給与や賞与、社会保険料、福利厚生費なども含めて計算するのが一般的です。

店舗によっては交通費や採用費も人件費関連コストとして管理する場合があります。実態に近い数値を把握するためにも、できるだけ包括的に計算しましょう。

なぜ人件費率が重要なのか

飲食店では人件費が固定費の中でも大きな割合を占めます。そのため、人件費率が適正かどうかによって利益額は大きく変わります。

また、人件費率は店舗の生産性を示す指標でもあります。売上に対して適切な人員配置ができているかを確認するためにも、経営者が継続的にチェックすべき数値といえるでしょう。

飲食店の人件費率の目安はどれくらい?

まずは一般的な人件費率の目安を知り、自店舗の状況を把握しましょう。

飲食店全体の平均人件費率

飲食店全体の人件費率は、おおよそ25〜35%程度が一般的な目安とされています。

もちろん業態や営業時間、立地条件によって差はありますが、人件費率が40%を超えている場合は、一度経営状況を見直す必要があるかもしれません。

業態別の人件費率の違い

業態によって適正な人件費率は異なります。

例えば、接客業務が多い居酒屋やカフェは人件費率が高くなる傾向があります。一方でラーメン店はオペレーションが比較的標準化しやすく、人件費率を抑えやすい特徴があります。

業態ごとの平均値と比較しながら判断することが重要です。

黒字経営における人件費率の目安

黒字経営を維持している飲食店では、人件費率を30%前後にコントロールしているケースが多く見られます。

ただし、人件費率が低ければ良いというわけではありません。サービス品質を維持しながら利益を確保できるバランスを見つけることが重要です。

FLコストから見る適正な人件費率

飲食店では「FLコスト」という考え方がよく使われます。

FLコストとは、

F(Food):食材費
L(Labor):人件費

を合計したコストのことです。

一般的にはFLコストを55〜60%以内に抑えることが理想とされています。例えば原価率が30%なら、人件費率は25〜30%程度が目安となります。

飲食店が人件費を削減しすぎるリスク

飲食店スタッフ飲食店において人件費率の管理はとても重要です。しかし、ただ人件費を削減すれば良い、というわけではありません。間違った人件費の削減方法をしてしまうと、逆にお店の評判を下げてしまうことになります。

ここでは、飲食店がやりがちな人件費の削りすぎによって生じるリスクをご紹介します。

サービスレベルの低下

人件費率が高い水準だからといって、やみくもに人件費を削減すると飲食店のサービスレベルも下がってしまう可能性が高いです。飲食店内に適正な従業員数が配置されないと、以下のような問題が起こり得ます。

  • スムーズにの注文を受けられない
  • 料理の提供までに時間がかかる
  • オーダーミス・調理ミスが増える
  • メニューへの説明が雑になる
  • 水のおかわりや追加オーダーに気づかない

このようなサービスレベルの低下が起きると「客離れ」が起き、どんどん売上が下がっていきます。せっかく利益を残すために人件費を削っても、売上が下がってしまえば元も子もありません。

職場環境・労働環境の悪化

無理な人件費の削減は、お客さんだけでなく従業員の離職にもつながります。

急に出勤回数を減らされたうえに、出勤時の業務量が大幅に増えれば従業員のモチベーションは下がってしまいます。すぐに辞める従業員は少ないかもしれませんが、職場環境に改善がみられないと、離職率も高まっていくでしょう。

改めて従業員を募集し採用するにも費用や手間がかかってしまい、結果として業績を悪化させてしまうことになるのです。

飲食店の人件費率を抑える6つの方法

飲食店の人件費は削減しすぎず、適正な水準での維持が理想的です。「お店の人件費率をもう少し抑えたい」というときは下記の方法を実施し、人件費率の適正化を目指しましょう。

1.シフトを最適化する

人件費率改善で最も効果が出やすいのがシフト管理です。

来店客数の少ない時間帯に過剰な人員を配置していると、人件費率はすぐに悪化します。売上データを分析し、繁忙時間と閑散時間に合わせたシフト設計を行いましょう。

2.オペレーションの改善

飲食店のオペレーションに無駄がないかどうか確認し、改善できるところがあれば、積極的におこなっていきます。

お店の質を下げないことを意識しつつ、注文を受けるときのフローや調理工程の簡略化など、多角的な視点からオペレーションを改善すれば従業員数を変化させずに店舗の生産性を向上させることができます。

3.設備・システムの見直し

設備やシステムを見直すことも、業務負荷を減らして生産性を上げられるケースがあります。

たとえば、POSレジやクラウド会計を導入して売上管理や経理の業務を効率化したり、食洗機、業務用のスライサーなどを導入して手間を軽減させたりなどの対策が挙げられます。

お水をセルフサービスにする、食券販売機を設置するなども効果的ですが、お店の雰囲気やコンセプトも考慮しながら適切な対策を実施しましょう。

4.客単価を上げる

人件費率は「人件費÷売上」で計算されるため、売上が増えれば自然と人件費率は下がります。

セットメニューの提案やドリンク注文の促進など、客単価向上施策も有効な改善方法です。

5.売上向上によって人件費率を下げる

人件費率が高い原因は、人件費そのものではなく売上不足の場合もあります。

集客施策やリピート率向上施策を行い、売上全体を増やすことで、人件費率を改善できるケースも少なくありません。

6.育成・採用の充実

生産性の高い従業員を定着させると、少ない人数でもスムーズに営業できるようになります。遠回りに感じるかもしれませんが、優秀な従業員の育成は結果として人件費率を抑えることにつながります。

新人にわかりやすく正確なマニュアル、モチベーションを保つための評価制度、業務負荷の適正化など、生産性の高い従業員をお店に定着させるためには職場環境の整備をおこないましょう。

人件費率が急増してしまった事例と改善プロセス

人件費率の上昇は、飲食店経営において利益圧迫の大きな要因になります。ここでは、実際の失敗事例を通して、原因と改善方法を見ていきましょう。

失敗例①:営業時間の拡大に伴う人員過剰配置

都内のイタリアンレストランでは、売上向上を狙い深夜営業を開始。しかし、客数は想定を下回り、深夜手当や最低人数確保による人件費増加により、人件費率は30%から42%に急上昇。営業利益は一気に減少しました。

改善策

深夜営業を廃止し、ピークタイムへの人員集中やシフト調整を実施。人件費率は約28%まで改善され、利益率も回復しました。

失敗例②:急な多店舗展開による採用コストの増加

地方都市で人気を集めたラーメン店が、半年で3店舗を開業。人材確保のため高額な採用媒体を多用し、経験不足の新人スタッフが多く配置された結果、業務効率が悪化。人件費率は25%→38%へ上昇し、経費過多で経営が苦しくなりました。

改善策

採用ルートを見直し、リファラル採用を導入。研修体制を整備し、新人教育の標準化を行うことで業務効率が向上。結果として人件費率は30%前後に抑えられるようになりました。

これらの事例からも分かる通り、人件費率の急増には「人員配置の精度」と「採用・育成の計画性」が深く関係しています。

数字だけでなく、現場オペレーションや中長期的な人材戦略の見直しも、利益改善には不可欠です。

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人件費率の改善は、単に人件費を削減するだけでは実現できません。売上とのバランスや利益率、資金繰りまで含めて総合的に判断する必要があります。

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飲食店に強い税理士へのご相談

飲食店の人件費率に関するよくある質問(Q&A)

人件費率に関するよくある疑問をまとめました。

飲食店の人件費率は何%が理想?

業態によって異なりますが、一般的には25〜35%程度が目安です。多くの黒字店舗では30%前後に収まっているケースが見られます。

人件費率とFLコストはどう違う?

人件費率は人件費のみを表す指標です。一方でFLコストは食材費と人件費を合計した数値であり、飲食店経営では重要な管理指標として活用されています。

人件費率が高い場合は何から改善すべき?

まずはシフト管理を見直しましょう。その上で客単価や売上状況も確認し、人件費そのものが問題なのか、売上不足が原因なのかを分析することが重要です。

人件費率を下げれば利益は増える?

必ずしもそうとは限りません。過度な人員削減はサービス品質の低下や売上減少につながる場合があります。利益率とのバランスを見ながら改善を進めることが重要です。

まとめ|人件費率は「削減」ではなく「最適化」が重要

この記事では、飲食店の人件費率についてご紹介しました。

人件費率のコントロールは、飲食店を成功に導くために欠かせないものです。人件費率を低下させるために人件費を無理に削減するのではなく、オペレーションや設備の見直し、改善などによる最適化を目指しましょう。

記事監修者

岩下直人

岩下 直人

取締役 FOODGYM事業部長

世界的アパレル企業で店舗マネージャーを経て、2014年OAGコンサルティングへ。
FOODOAGの黎明期からキャッシュフロー経営をサポートするため、開業から数十店舗拡大中のお客様まで幅広く対応。
中小飲食企業の外部CFOとなるべく、奮闘中。

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