経営
2024/02/05
社員が突然退職することに頭を抱える経営者は少なくありません。特に飲食店を含む接客業では短期離職する社員が多く、人材不足が慢性化しています。
「社員が突然退職するケースを防ぎたい」
「突然辞めてしまう社員にはどのような傾向があるのか」
「突然な退職に対する法律的な知識を得ておきたい」
上記のような悩みを解消して、人材が長く定着するようなお店を構築していきましょう。
この記事では、飲食店の社員が突然退職する危険性と法律について、離職を防ぐための対策などについて解説します。
飲食店業界は従業員の無断欠勤からそのまま退職、通称「ばっくれ」が頻繁に発生していると言われています。突然仕事を放棄する行為は経営者にとって大きな痛手となりますが、具体的にはどのような危険性があるのでしょうか。
同時に、突然の退職に関連する法的な側面にも焦点を当て、理解を深めていきましょう。
飲食業界は接客業であり、お客様と直接関わるため、従業員一人ひとりの態度や対応が企業の信頼度に直結します。飲食店における急な退職のリスクについて考えてみましょう。
急に人材が抜けることで、組織の生産性が損なわれるリスクは避けられません。これまでその優れた人物が担当していた業務が他の社員やスタッフに移り、業務の効率性が低下し、一人ひとりの業務負担が増えることが予想されます。
とくにさまざまな業務を担当している優秀な社員が突然退職してしまうと、各従業員の負担が一気に増えるでしょう。
これまで円滑に行われてきた飲食店の営業が滞ってしまいます。
突然の社員退職が続く場合、飲食店の管理をおこなう経営者のリーダーシップが問われます。同じ飲食店で働いていた社員が突然退職してしまうことは、従業員のモチベーション低下に直結します。
従業員が「この会社は駄目だ」と嘆く段階に来させてはいけません。
飲食店の経営者のなかには、法律についてきちんと把握していない方もいるでしょう。憲法第22条1項には「職業選択の自由」が規定され、これにより労働者には転職や退職の自由が認められています。
同時に、民法では期間の定めのない雇用契約と期間の定めのある雇用契約において、労働者が自発的に退職できる基準が設けられています。
これらのポイントについて押さえておきましょう。
期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の際、民法627条第1項によれば労働者は退職の日から2週間前までに会社に対して申し入れを行えば、退職することが認められています。
期間の定めのある雇用契約(有期雇用)の場合、基本的にはやむを得ない事由がない限り、解雇は認められていません(民法第628条)。
ただし、労働基準法第137条によれば、契約期間の初日から1年を経過した日以降においては、労働者は使用者に対して事前に通知することで、いつでも退職することができます。
なお、無期雇用および有期雇用のどちらのケースにおいても、使用者(経営者)が示した労働条件が実際と異なる場合、労働者は直ちに契約を解除することができます(労働基準法第15条1項、2項)。
社員が急に職場を離れる際に、一定の理由があることは間違いありません。以下では、一般的に退職を考える人々がよく抱く主な理由について紹介します。
飲食店に限らず、多くの企業で見られる退職の主な理由は「人間関係の悩み」です。優れた才能であっても、人間関係において不満を感じると、退職を検討することがあります。
特に上司と部下の関係が複雑で、以下のような不満が部下に生じやすいです。
上司が責任を回避したり、計画性がなかったり、人間関係のトラブルが続くと、優れた人材が退職を選ぶケースは少なくありません。
また、コミュニケーション不足も、業務上の情報共有が難しくなり、離職の要因となります。
人間関係が充実していても、業務量が膨大で個々の負担が重い場合、社員は辞めたくなるでしょう。限界まで頑張りすぎて、ある日急に体調を崩し、会社に行けなくなり、ついに突然退職を申し出るケースも少なくありません。
優れた人材を定着させるには、仕事と生活のバランスを重視し、効率的な業務処理によるスピーディーな仕事への取り組みが必要です。
しかし、業務時間を短縮したとしても、他の仕事が追加されてオーバーワークになると、通常は労働環境に不満を抱くことがあります。特に多くの業務が優秀な人材に偏って集中すると、結果として不公平感を抱くことになるでしょう。
従業員が会社を離れたいと思う理由の1つに、給与や非金銭的な報酬である福利厚生に不満を抱くケースが多く見られます。
たとえば、長期間勤務しても給料が上がらない、手取りが少なくてやる気が出ないため転職を考えている、福利厚生や給料が向上する企業への転職を検討している、などが挙げられます。
給料や福利厚生は生活に直結するため、不満があると従業員は他の選択肢を模索する傾向があります。
このような状況下では、他の企業への転職を検討したり、実際に転職活動を進めている間に、採用が決まった途端に突然退職するケースも少なくありません。
社員が会社を突然辞める兆候を見逃さず、不満を軽減し、退職を回避するためには、具体的にどんな行動に注視すればよいのでしょうか。
誰しもが時折体調不良で仕事を休むことはあります。しかし、そのまま憂鬱な気持ちになり、ついには突然辞めてしまうケースも少なくありません。
徐々に仕事を休む頻度が増え、理由が曖昧で長期間続く場合は、早めの対策が必要です。
もし飲食店を退職したいと考える社員がいるとしたら、上司や同僚に気づかれたくないと思うことが多いでしょう。
そのため、周囲とのコミュニケーションを控える傾向があります。なぜなら、既に「今の会社を辞める」という決断をしていれば、職場での人間関係に対する関心が減少するからです。
例えば、ランチや飲み会への参加が減ったり、休憩時間や業務後の雑談が少なくなったりするなど、これまでと異なる行動が見られれば、退職の兆候とみなすことができます。
かつては積極的に飲食店の企画や営業の改善に対して意見を述べていた社員が急に発言回数を減らすような場合、その背後には退職の意思が潜んでいる可能性があります。
「提案しても受け入れられない」「声を上げても何も変わらない」といった経験から、すでに自らの意見を諦めた状態かもしれません。
見かけ上は体調不良に見えることもありますが、ミーティングでの発言が減少したり、相槌が少なくなったりする微細な変化がその兆候の一環かもしれません。
社員の中には、「もうこの会社に対して何を言っても無駄だ」といった諦めに近い心理が影響している可能性も考えられます。
これまで飲食店に多い突然退職の傾向や主な退職理由について紹介してきました。最後に、よくある質問について解説していきます。
必ずしもそうだとは言い切れませんが「おとなしい人ほど会社を突然辞める」という言葉をよく耳にします。通常、おとなしい性格の人ほど、内に秘めた不満や悩みをなかなか他人に打ち明けられない傾向にあります。
これが原因で、一人で抱え込んだ末に何も言わずに急に退職してしまうケースも少なくありません。本人にとっては予定通りの退職であったかもしれませんが、会社側にとっては社員一人ひとりの本音を読み取るのが難しい状況です。
特に新人の場合、上司が「いつでも相談してね」と伝えても、職場に馴染めず本音を打ち明けられないまま急に退職することがあります。
悩みや不安を気軽に相談できる環境を整えると同時に、微細な変化にも気づけるよう、常に細心の注意を払うことが大切です。
退職した従業員に対する損害賠償請求の可能性は以下のケースで考えられます。
上記は損害賠償請求ができる可能性があるケースです。
必ずしも損害賠償が可能というわけではありませんが、もし「このケースは損害賠償できるのではないか」と思い当たるものがあれば、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
優秀な人材が組織を離れる理由には、評価や待遇、人間関係、職場環境への不満、成長機会の欠如、会社の将来への不安などが挙げられます。
人材の離職を予防するためには、成果や働きぶりを公正に評価し、社員同士のコミュニケーションを強化し、業務内容や負担の適正な調整を検討することが重要です。また、やりがいを感じられる職場環境を整えるためには、適切な「経営計画」の策定が肝要です。
優秀な人材を定着させ、より良い飲食店づくりをすすめるために、一つ一つの工程を大切にしていきましょう!