経営
2023/08/07
飲食店を開業するうえで「領収書」は必ず準備しておくべきアイテムのひとつです。飲食店を経営していると、会計時に領収書の発行をお願いされることも多々あります。領収書の書き方は決まっていますが、なかにはきちんと理解出来ていない方もいるでしょう。
そこで今回は、飲食店を開業する際に欠かせない領収書の書き方や取り扱いについて解説していきます!
「飲食店の領収書の正しい書き方を知りたい」
「飲食店の領収書の後日発行などイレギュラーな対応方法は?」
などの疑問をお持ちの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
飲食店に限らず、どのような業種でもすべての従業員が領収書を正確に書けるようにするべきと言えます。
なぜなら企業や個人事業主などが確定申告をおこなうときに、経費の証明書として領収書が必要になるからです。内容に不備があったり、誤ったりしていた場合、その領収書は無効になってしまいます。
税務署によって領収書が無効と判断されると経費として計上することができず、その分多くの税金を支払うことになるのです。
経営者はもちろん、従業員全員が正しい領収書の書き方を取得していなければ、飲食店を利用してくれた企業や個人事業主に損をさせてしまう可能性があります。
飲食店を開業する前に必ず正しい領収書の書き方を習得し、開業後は従業員にも周知しましょう。
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領収書は、ホームセンターや100円ショップなどの店舗や通販サイトから購入できます。
領収書にある①日付②宛名③金額④但し書き⑤内訳⑥発行者⑦収入印紙の7つの項目ごとの書き方や注意点について見ていきましょう。
領収書における「日付」は、支払いが発生した(代金を受け取った)日を記入します。領収書の日付によってどの年度の経費になるかということが決まるため、税務上とても重要です。
例えば、飲食した日が12月15日だったとしても、1月10日にツケを支払った場合は1月10日の日付で領収書を発行します。
領収書は日付が必須のため、お客さんから「◯日で発行して欲しい」「日付は空欄でお願いします」などと言われたとしても、法律上の安全のためにはっきり断りましょう。
「宛名」は飲食店の代金を誰が支払ったのか明確にするための項目です。宛名は省略形を使わず、必ず正式名称で記入しましょう。
例えば「(株)◯◯」のような書き方は不可です。企業名に「株式会社」が付く場合は、前株か後株か、きちんと確認してから記入しましょう。
国税庁の規定によると、飲食店から発行される領収書は宛名を省略しても大丈夫とされています。そのため、空欄・上様・お客様という宛名を希望される場合は、お客さんの希望に沿って記入して問題ありません。
ただし、業務上必要な経費かどうかを第三者が判断しづらくなるため、本来は正式名称の記入が最良の方法と言えます。
経費の金額を左右する領収書の「金額」は、もっとも正確に記入するべきポイントです。金額改ざんを防ぐためにも、正しい書き方を習得しておきましょう。
領収書における金額欄の書き方の原則は以下のとおりです。
また、飲食店ではあまり見られませんが、領収書の金額が10万円、100万円と大きくなる場合、「1=壱」「2=弐」「3=参」「10=拾」などの漢数字を用いて信頼性を高める方法もあります。
これらのルールは必須ではありませんが、不正防止のためにお店で統一しておくと良いでしょう。
領収書のなかには、金額欄の下に「但し」という記載があります。
但し書きとは、その金額がどのように使われたのかを証明するものです。企業の経理担当者が但し書きの欄を見て「接待費」「福利厚生費」などと経費を判断するケースもあるため、正しい書き方を把握しておきましょう。
飲食店が発行する領収書の但し書きは、①お食事代として②飲み物代として③お品代として(持ち帰りなどの場合)の3つが主に使用されます。
店内飲食ならお食事代、テイクアウトならお品代など、店内でルールを統一することでトラブル回避にもつながります。
領収書における「内訳」とは、税別の本体価格と消費税額を分類して記載する欄のことを指します。内訳には税率ごとに合計した金額を記入しましょう。
書き方のルールは「金額」と同様で、不正防止のために先頭や末尾に必要なマーク、3桁ごとにカンマをつけます。
「発行者」とは、領収書を発行した飲食店の情報や企業名、住所、電話番号などを記します。すべて省略せず、正式名称を記入しましょう。住所や企業名の入った社判(ゴム印)でも、手書きでの記入でも問題ありません。
お客さんのなかには偽造防止や商習慣で角印を求める方もいるため、1つ用意しておくと間違いないでしょう。
「収入印紙」とは、代金が5万円以上の領収書を発行する場合に必要になる印紙です。収入印紙が貼付されていないと正式な領収書として認められないため、飲食店を開業する前に郵便局やコンビニで購入しておきましょう。
売上代金によって貼るべき収入印紙の金額は違いますが、飲食店では代金が5〜100万円の場合に必要な200円で済むことがほとんどです。
収入印紙を貼付する際の注意点は「消印」を押す必要があるところです。消印が押されないと使用済みの証明がなく、再使用される可能性があります。収入印紙を貼った後は、必ず領収書と印紙にまたがって割印しましょう。
2023年10月1日から導入されるインボイス制度によって、領収書の記載項目が追加されます。飲食店で発行する領収書の書き方にも変更があるため、確認しておきましょう。
インボイス制度導入後に、領収書への記載が必須になる項目は以下の5点です。
上記のなかで新たに追加になったのは「1.発行事業者名と登録番号」と「5.税率ごとに区分した適用税率」の2つです。
インボイスの登録番号と8%と10%の項目を分けて、税額ごとに消費税のみの合計額を記載する必要が出てくるため、スムーズに対応できるように準備していきましょう。
飲食店のインボイス制度に関しての記事はコチラ
最後に、飲食店の領収書の書き方でよくある質問について解説していきます。
飲食店で代金を支払った当日ではなく、後日領収書を発行して欲しいとの要望があった場合でも、領収書の発行は可能です。
当日の飲食とその支払い状況を確認したうえで、後日発行をおこないましょう。領収書を発行する日が後日になった場合でも、代金を受け取った日付を記入します。
ただし「領収書を紛失してしまったからもう1度発行してほしい」との要望を受けても、飲食店に再発行する義務はありません。領収書の再発行は2重発行になってしまい、不正使用のリスクも高まります。
どうしても領収書を再発行せざるを得ない場合は、不正防止のために「再発行」と明記したうえで渡すようにしましょう。
領収書の発行に慣れていないと、記入ミスをしてしまうこともあるでしょう。記入に不備があることに気づいたときは、基本的に新しく領収書に書き直します。
領収書は連番になっていることが多いため、不備があった領収書も捨てずに、大きく「×」を書き、複写とともに保管しておきましょう。
原則として修正液や修正テープでの書き直しは認められていません。どうしても同じ紙で修正が必要な場合は、該当箇所に二重線を引き、訂正印を押してから余白に正しい情報を記入します。
領収書といえば、店舗や担当者の印鑑が押印されている印象が強いですが、必ずしも印鑑である必要がありません。領収書の印鑑は法律で決められているわけではなく、印鑑が押されていなくても有効です。
ただし、印鑑が押してある方がお客さんから見ても良い印象を与えることや、不正防止としても有効であることから、印鑑を押すほうが望ましいと言えます。
クレジットカード払いの場合、領収書を発行する必要はありません。なぜなら、クレジットカード払いの場合、厳密に言うと店舗は代金を受け取っていないからです。後日クレジットカード会社から入金を受けるまではツケ払い扱いになります。
領収書は代金を受け取ったことを証明するものなので、クレジットカード払いの場合は店側が代金に対する領収書の発行義務はありません。
もしもお客さんから発行を希望された場合、但し書きに「クレジットカードにてお支払い」と記入してから渡すようにしましょう。
この記事では、飲食店が発行する領収書の書き方についてご紹介しました。
領収書は代金を受け取ったことを証明する重要なものです。正しい書き方を把握していないと、お客さんに迷惑をかけたり店舗が損害を受けたりする可能性があります。
項目ごとの書き方を理解し、正しい領収書を発行できるようにしておきましょう。