経営
2023/05/19
飲食店経営者は日々の営業や店舗管理などに手一杯で、しばらく帳簿をつけていなかった、という方もいるでしょう。本来なら帳簿の記帳と保管が義務付けられているため、突然届く税務調査の通知に焦ることになります。
そこで今回は、帳簿をつけてない飲食店経営者が不安に感じる以下の疑問について、徹底解決していきます!
「飲食店は帳簿をつけてないとダメって本当?」
「飲食店が帳簿をつけてないとどうなる?罰則はあるの?」
「飲食店が現時点で帳簿をつけてないとき、どんな対処法ができる?」
飲食店の帳簿に関する基本のルールから帳簿をつけてないことによるペナルティ、対処法までご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
まずまじめに、飲食店経営者はどのような場合に帳簿をつけたら良いのか、必要な帳簿の種類など、基本的なルールをおさらいしていきましょう。
記帳義務がある人は、個人事業主を含むすべての事業主です。平成25年12月までは事業所得合計が300万円以下の場合は記帳をつけていなくても問題ありませんでしたが、平成23年12月に税制が改正され、平成26年1月以降は青色申告・白色申告に関わらず、すべて事業主に記帳が義務付けられました。
当然ながら飲食店の経営者もその対象となるため、事業所得の金額や申告方法に関係なく、帳簿をつける必要があります。
日々の取引を帳簿につけるだけなく、その帳簿を保管する義務もあります。保管義務が発生する年数と帳簿の種類は、白色申告と青色申告で異なります。
白色申告の場合、収入や経費の情報が載った「法定帳簿」と呼ばれる重要な帳簿の保管義務は7年間です。その他、領収書や納品書、請求書など任意で作成した帳簿の書類は5年間保管することが決められています。
青色申告の場合でも、重要な帳簿は7年間、重要度の低い帳簿は5年間保存するという点は同様です。ただし、青色申告のほうが7年間保存しなければいけない帳簿の種類が多くなります。
7年間の保存義務がある青色申告の帳簿は以下のとおりです。
それぞれの申告に必要な帳簿と保管年数について、きちんと把握しておきましょう。
帳簿付けはすべての事業主に当てはまる義務であるため、悪意がなかったとしても帳簿をつけてない状態で税務調査を受けてしまうと、以下4つのペナルティが下されることになります。
青色申告とは、複式簿記のやり方に基づいて帳簿を記載し、そこから正確な所得を算出することです。そのため、そもそも帳簿をつけてない場合は青色申告制度を利用することはできません。帳簿をつけてないことが判明すると、青色申告社としての承認が取り消されることになります。
青色申告が取り消しになると、税制上のさまざまな優遇措置が適用されなくなり、飲食店にも大きな影響があるでしょう。具体的には、次のような措置が受けられなくなります。
これらは青色申告者のみに認められた制度であるため、帳簿をつけてない飲食店経営者は適用外となってしまいます。
帳簿をつけてないと税務署に判断されると、追徴課税が課せられます。税務調査では、調査官によって売上や必要経費の精査がおこなわれます。その結果、過去の過少申告が認められた場合には、本来納めるべき税金にくわえて、それに伴う加算税や延滞税が発生することになるでしょう。
通帳課税の種類は状況によって異なりますが、主に以下の税金が課せられます。
無申告加算税:確定申告の期限までに申告しなかった場合
延滞税:税金を期限までに納税しなかった場合
重加算税:所得隠し・売上隠蔽が故意におこなわれたと判断された場合
帳簿をつけてないことに悪意がない場合は期限が遅れたことによる「無申告加算税」や「延滞税」で済むケースも少なくありません。しかし、無申告の内容が悪質と判断された場合はもっとも重い「重加算税」が課せられることもあるのです。
そのため、帳簿をつけてないことや紛失したことに気づいた時点で税理士へ相談するなど、速やかに対応を進めましょう。
消費税の仕入れ税額控除が認められないことは、飲食店経営社にとってかなりのダメージとなるのではないでしょうか。消費税に対して適用される「仕入税額控除」とは、売上の消費税額から仕入れ時の消費税額を差し引けるという制度です。
この制度は帳簿および請求書などの保存が適用要件となっているため、帳簿をつけてない場合は適用外となってしまいます。
たとえば、飲食店での提供価格が3,200円(メニュー代金3,000円+消費税300円)で、その商品の仕入れにかかる価格が1,100円(仕入代金1,000円+消費税100円)だったとします。この場合、売上時に受け取った消費税300円から仕入れ時に支払った100円を差し引いた200円を申告・納付することになるというわけです。
この制度が認められないと、差し引ける消費税額分も納付しなければいけなくなり、経営にも大きく影響することになるでしょう。
帳簿をつけてないと、税務署は税額を決める判断材料がありません。その際に用いられるのが「推計課税」です。「推計課税」とは、文字通り推計で所得税を課税する制度であり、以下の要素などから推計した収入や経費を根拠として税額が決まります。
しかし、推計によって資産された所得は、実際より高い所得額に推計されてしまう可能性が高く、税額も高くなるケースがほとんどです。
帳簿をつけてなかったばっかりに、本来より大幅に多く税金を支払うことになる可能性があるのです。
現時点で帳簿をつけてない飲食店経営者の方が、今日からできる対策をご紹介します。税務調査が実施される前に、できる限りの行動をしておきましょう。
現時点で帳簿をつけてないからといって、諦める必要はありません。帳簿が途中までになっていたり、帳簿自体がないという場合でも、今から作れば良いのです。
もちろん嘘の記帳をするのではなく、事実だけを記帳していきましょう。
手元に残っている請求書や領収書、レシート、取引履歴などをかき集めて、通帳などで追える範囲で確実にわかるものを記帳していきます。通帳には取引の日付や取引先、金額などの詳細がきちんと記録されているため、お金の流れを証明する証拠として有効です。
個人事業主である場合は、明細が事業に関係のある支出や収入なのか、プライベートのものかについての区別もおこないましょう。
帳簿の準備と平行して、確定申告の際の数値の根拠となる資料も集めていきましょう。帳簿をつけてないため、すべての根拠は揃わないかもしれませんが、少しでも根拠となる資料を税務署に提出することで、課せられる追徴課税を軽減できます。
飲食店のレジに残っている記録も、売上の根拠として認められるでしょう。根拠のある数字を資料という形で残しておけば、一気にその数値の説得力が高まります。
帳簿を今から作成する、数値の根拠を集める対策をご紹介しましたが、これまで帳簿をつけてなかった方が、すべてを用意・対応することは簡単ではありません。
そこで、帳簿をつけてない飲食店の経営者は、速やかに税理士に相談することをおすすめします。
税金のプロである税理士は、日々の記帳や税務調査に関することなど、幅広い範囲をサポートしてくれます。「もうどこから手をつけたら良いのかわからない」という場合も、まずは相談してみましょう。
「飲食店に税理士はいらない?」の記事はコチラ
経営に精一杯で帳簿付けまで手が回っていない方は、まず税理士に相談をおこない、帳簿の作成や税務調査の準備をサポートしてもらうことが、もっともおすすめな方法です。
帳簿をつけてないまま放置してしまうと本来より多くの税金が課せられるだけでなく、消費税の控除も受けられなくなります。
飲食業界に精通しているだけでなく、サポートも充実している税理士をお探しの方は、ぜひ当社にご相談ください。