経営
2025/12/15
飲食店を経営するうえで「販促費」は売上を生み出すための重要な投資です。しかし、どれくらいの予算をかけるべきか、何に使えば効果的なのか悩んでいる経営者も多いはずです。
本記事では、飲食店における販促費の定義から費用の目安、具体的な施策、失敗例まで詳しく解説します。
販促費とは、飲食店が集客や売上アップのために使う広告宣伝費のこと。ここではまず、販促費の定義と飲食ビジネスにおける役割を整理します。
販促費の内訳は多岐にわたります。代表的な費用項目としては、以下が挙げられます。
これらはすべて「顧客を呼び込むための投資」として販促費にカウントされます。費用の項目を明らかにすることで、どの施策にいくら使っているかを把握しやすくなります。
広告費は販促費の一部です。広告費が不特定多数への情報発信であるのに対し、販促費は 集客・リピート・ブランディングなど幅広い目的に使われる費用全般を指します。
例えば、SNS広告は広告費ですが、常連客向けのLINE割引は広告費ではなく販促費として扱われます。
販促費の適正額は業態や店舗規模によって異なりますが、一般的な目安を知っておくことで使いすぎ・使わなすぎを防げます。
飲食業界では、販促費は売上の3~8%程度が目安とされています。新規開業直後はこの比率が高くなる傾向がありますが、業績が安定している店舗では徐々に最適化され、売上に応じた比率へ調整されます。
例えば、月商500万円の店舗で販促費を月額50万円に設定した場合、販促費率は10%です。この場合、費用対効果を見極めつつ、無駄な費用をカットしながら効率的な施策に絞る必要があります。
:売上の5〜8%
客単価が比較的高く、宴会やグルメサイトからの集客を重視するため、販促費率が高くなる傾向。
:売上の3〜6%
地域密着型の集客やSNSでの評判形成が重要で、比較的低めの費用率。
:5〜10%
オンライン集客のための広告費が重く、比較的高め。
開業初期は認知度が低いため、通常期より高い販促費率を見込むことが一般的です。
特にオープンイベント、SNS広告、地域チラシ配布など複数の施策を同時展開する場合は、最初の3〜6ヶ月で売上の10~15%を販促費に充てることも珍しくありません。
販促費の中でも、何にどれくらい使っているのかを把握することが重要です。代表的な施策とその費用感を解説します。
オンライン施策は即効性があり、成果測定も比較的容易です。代表的なものは以下の通りです。
ターゲティングの精度が高く、若年層の集客に効果的。1クリック数十〜数百円程度が相場。
「地域名+飲食店」で検索した際の上位表示を狙う施策。口コミ数や写真投稿も影響し、無料・低コスト施策としては特に優秀。
掲載料金は数万円〜数十万円/月。即効性は高いが費用対効果の計測が難しいことも。
地域密着型の飲食店では、オフライン施策も依然有効です。
地元住民集客を狙い、初回割引などを付けることで効果を出せる。
通行量が多い立地では視認性を高める投資として有効。
ブランド認知を高めることができるが、効果測定は難しい。
リピーターの獲得・維持は販促費の中でも費用対効果が高い分野です。
登録者にクーポンや情報を配信することで来店頻度を高める。初期設定費用のみで運用できるケースも多い。
紙のスタンプからデジタルポイントまで、リピート誘引策として基本の施策。
販促にかけた費用が、どれだけ売上に貢献しているのかを意識することが重要。ここではコストパフォーマンスの良い施策を紹介します。
飲食店の”地域検索”での上位表示を狙える施策で、無料で改善可能な要素が多い。口コミ数・写真・営業時間・メニュー情報の充実を図るだけで成果が出る。
初期費用・月額費用を抑えながら、会員限定クーポンやステップ配信を使ってリピートを促すことが可能。登録者=優良顧客層へのアプローチとして最適。
独自の施策として、地域の他店と協力したイベントや、食材メーカーとのタイアップ企画なども効果的。
などがあり、顧客の体験価値を高めることでリピート・話題化につながる可能性が高い。
一方で、高い費用をかけても効果が出にくい施策も存在します。
見られている保証がなく、費用対効果が低いことが多い。
期待値が高い分、費用対効果が不透明で、計測しにくいことが弱点。
認知は広がるものの、飲食店単体では費用負担が大きくROIが低いことが多い。
効果が感じられないまま続けてしまう販促施策は要注意。定期的な見直しのポイントを解説します。
販促費の見直しは、数字の把握から始まります。
これらを可視化することで、どの施策が効果的か精度高く判断できます。
費用対効果が低い施策は、早めに縮小・中止する判断が求められます。成功している施策へ予算を集中し、販促費の最適化を図ることが重要です。
判断基準の例として、以下のような数値目標を設定することが有効です。
販促費のかけ方を間違えると、売上につながらず逆効果になることも。よくある失敗例とその対処法を紹介します。
ある地域密着型店舗では、毎月大量のチラシを配布したものの、既存客の反応しか無く新規集客につながらなかったケースがあります。
①配布エリアを絞り込む
②初回来店特典を付ける
③デジタル連動クーポンを設置
あるカフェは人気インフルエンサーを起用しましたが、来店客は多少増えたものの費用対効果がマイナスになりました。
①マイクロインフルエンサーの起用
②UGC(利用者投稿)の促進
③来店特典付き投稿キャンペーン
失敗例を活かすには、数値分析→仮説→改善施策の繰り返しが重要です。
販促費は売上増加のための投資である一方、資金繰りに悪影響を与える可能性もあります。計画的な支出管理が必要です。
販促費は経費ではありますが、キャッシュが枯渇する原因にもなります。
こうしたケースでは、販促費が経営の足を引っ張るリスクが高まります。
資金繰りを悪化させないための工夫としては、
などが有効です。
販促費に関する飲食店経営者からのよくある質問をまとめました。
A. 一般的には売上の3〜5%が目安とされています。ただし、開業初期や新メニュー投入時などは7〜10%程度まで増やすケースもあります。業態や立地によっても最適な比率は異なるため、柔軟に見直すことが重要です。
A. はい、LINE公式アカウントの活用やInstagram・Googleマップへの投稿は無料または少額で実施できます。口コミを促す施策など、費用を抑えつつ効果を得られる手法も豊富にあります。
A. あります。ただし、闇雲に広告を出すのではなく、ターゲット層の絞り込みやクリエイティブの工夫が必要です。ブランディング目的やリピーター獲得施策としても有効に活用できます。
A. 地域密着型の飲食店であれば、ターゲットを絞って実施することで一定の効果が期待できます。特に高齢層やファミリー層が多いエリアでは有効な集客手段の一つです。
A. 可能です。税理士は販促費の経費処理や資金繰りの観点から適切なアドバイスができます。特に費用対効果や投資判断に不安がある場合は、積極的に相談することをおすすめします。
販促の成果を最大化しつつ、税務処理や経営面でも安心できる体制を整えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
FOODOAGでは、飲食店専門の税務・経営支援を提供。販促費の計画策定から費用対効果の評価、資金繰り含めた最適設計まで支援する。
単なる販促施策の提案ではなく、「投資としての販促費」を見える化し、利益につながる戦略を共に設計する。
販促費は「かけ方」と「見直し方」で、売上や集客効果に大きな差が出ます。特に飲食店においては、限られた予算の中でどの施策に投資するかを見極めることが、店舗の継続的な成長につながります。
まずは販促費の平均値や業態別の傾向を把握したうえで、自店の売上や客層に合った販促計画を立てましょう。また、定期的に施策ごとの効果検証を行い、必要に応じて柔軟に調整することが重要です。
販促費は売上アップのための「投資」である一方、資金繰りを圧迫するリスクもあります。経理やキャッシュフローの視点も忘れずに、経営全体のバランスを意識した運用を心がけましょう。
FOODOAGでは、飲食店経営に特化した税務と販促の両面から支援を行っております。無駄を省き、売上につながる戦略設計を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。