経営
2023/09/11
飲食店を経営し、繁盛させるためには、美味しい料理やサービスだけでなく、従業員の満足度やモチベーションも考える必要があります。従業員が満足し、やる気を持って働くために、福利厚生の導入は欠かせません。
飲食店の経営者のなかには、福利厚生に関して学びたい、相応しい制度を導入したいと考える方も多いことでしょう。
そこで本記事では、飲食店が導入すべき福利厚生に焦点を当て、その充実させるメリットと注意点についてご紹介します。
以下の疑問をお持ちの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
「飲食店が福利厚生を充実させるメリットを知りたい」
「飲食店にはどのような福利厚生を導入させたら良いのか」
「福利厚生を導入する際に気をつけるべきことはなにか」
飲食店経営を成功させるために、従業員の幸福感と生産性を向上させる道を探りましょう。
そもそも福利厚生とは従業員に提供される報酬で、給与以外の様々な形態を取ります。たとえば、スキル向上のための書籍購入制度やオンライン学習サービス、チーム強化のためのランチ代負担制度などがあります。
さらに、家族も恩恵を受けることのできる家賃補助なども存在し、その内容は目的に合わせて異なります。
福利厚生は法定福利厚生と法定外福利厚生に分かれており、法定福利厚生は法律に基づいて設定され、すべての企業で提供される最低限の福利厚生です。
一方法定外福利厚生は企業が独自に設定する福利厚生です。これを充実させることで、従業員の満足度を高め、競争力を強化することができます。
飲食店で独自に福利厚生を導入することは、従業員と企業のメリットにも繋がります。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
福利厚生制度は、企業が従業員に対する配慮の度合いを示す指標でもあります。そのため、企業は自社の福利厚生を求職者が好む形に整え、従業員を大切にする姿勢をアピールすることで、評判を高め、採用効率を向上させることができるでしょう。
特に飲食業界では、店の個性やコンセプトはアピールできますが、給与や仕事内容で他社との差別化は難しい傾向にあります。
独自の福利厚生制度や求職者に魅力的な制度を導入することで、採用活動における大きな利点を得られます。
福利厚生が整った企業では、ワーク・ライフ・バランスが整い、従業員の満足度やエンゲージメントが高まります。
したがって福利厚生制度の充実と働きやすい環境づくりは、従業員の忠誠心が育まれることにつながり、モチベーションが向上し、結果的に企業の成長に寄与するのです。
福利厚生の充実は従業員が十分な休息を取り、健康的な生活を送ることをサポートすることもできます。従業員の心身の健康を促進する支援をすることで、生産性向上にもつながり、企業にも大きなメリットをもたらすのです。
逆に、従業員の体調やメンタルの不調は、本人だけでなく組織全体に悪影響を及ぼし、生産性を低下させます。
つまり、福利厚生の充実は、個々の能力を最大限に発揮できる健康な状態を維持し、生産性の高い組織を築くために効果的です。
福利厚生への関心は年を追うごとに高まっています。福利厚生が充実しているということは、企業が着実な経営基盤を持っていることの証しです。福利厚生が手厚い企業は「従業員を大切にする企業」という印象を一般に与えやすいため、企業の評判向上につながります。
特に飲食業界は、労働環境が悪いイメージをもたれやすいです。充実した福利厚生を提供することで、その店は従業員を大切にしているとの認識を広めやすいでしょう。
福利厚生に関連する経費は、特定の条件を満たす場合に非課税となります。
条件をクリアした場合、福利厚生費用の全額を経費として計上でき、法人税計算の対象から除外されるため、企業にとって税金を節約できる重要な利点となります。
冒頭で、福利厚生には法律で定められている法定福利厚生と、企業が独自に導入できる法定外福利厚生があると紹介しましたが、実際にどのような制度を導入したら良いかわからない方も多いでしょう。
そこでここでは、飲食店におすすめの福利厚生をいくつか紹介します。
法的に義務づけられた「法定福祉制度」の健康保険とは異なり、会社が独自に提供する福祉プログラムで、人間ドックなどの健康診断費用を助成するものを指します。
具体的な例として挙げると、人間ドック、メタボリックシンドロームチェック、食事指導などがあります。
これらは通常の健康診断には含まれていないことが一般的であるため、従業員の健康をサポートするために、積極的に導入を検討してみましょう。最近では、カウンセリングなどを通じてストレスケアを提供する福祉プログラムも増えています。
財形貯蓄制度は、雇用主と国が従業員の資産形成をサポートする福祉プログラムです。通常、以下の3つのタイプがあります。
これらの制度では、従業員の給与やボーナスから毎月一定額が天引きされ、財産を築いていく仕組みです。申し込むと、給与が振り込まれる際に自動的に貯蓄されるため、金銭管理が得意でない従業員にも適しています。
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は節税のメリットも提供しており、税金対策にも役立つためおすすめです。
法定の有給休暇だけでなく、独自の休暇制度を提供したり、長期休暇を取得しやすくしたりする企業が増加しています。従業員にとって、家族や自身に何か問題が生じた場合でも、仕事やお金の心配をせずに休暇を取得できる制度は、非常に魅力的です。
近年は女性特有の生理休暇といった特別休暇の普及が進んでいます。また、失恋休暇、二日酔い休暇、推しメン休暇など、個人のプライベートな状況に配慮したユニークな休暇制度を導入している企業も増えています。
飲食店における福利厚生で、まっさきに思い浮かぶのはまかないです。
勤務中の食事は、リフレッシュできる貴重なひとときです。従業員にとって、食事を充実させることは、仕事へのモチベーション向上につながります。
また、特定のカフェやレストランで利用できる食事補助券やポイントを配布するなど、食事に関する福利厚生も考えられます。
給与前払いとは、従業員が給与日前に必要な際に給与を受け取ることができる仕組みです。
従業員が給与前払いをリクエストすると、実際の労働に基づく給与から特定の割合が支給されます。結婚、葬儀、イベント参加など急な支出が必要な場合、給料日を待つことなく必要な資金を手に入れることができます。
住宅手当や手当金、そして家賃補助は、従業員の住宅費用やローンの一部をサポートする制度です。
企業にとって、これらの制度を提供する際に予算を確保することは課題となりますが、これらは年齢や性別に関係なく、従業員にとって非常に魅力的です。さらに、企業が物件を取得または契約して従業員に提供する「社宅制度」も、住宅手当や家賃補助の一形態です。
住宅にかかる費用は、生活費の中でかなり大きな部分を占めます。従業員の生活段階に合わせて住居を選ぶ自由を尊重しつつ、住宅関連の支援制度を提供することが重要です。
福利厚生制度の充実化は、従業員・企業の双方にさまざまなメリットや効果をもたらしますが、むやみやたらに導入すれば良いというわけではありません。
注意点を考慮したうえでの導入が大切です。
飲食店でアルバイトを検討している人にとって、まかないの無償提供は魅力的で、アルバイト先の選択肢の1つになることがあります。
しかし、まかないの無償提供には税務上のリスクが潜んでいるため、慎重な対応が必要です。
まかないは、食材や具材の余剰を活用して従業員に提供されるものであり、無料で提供されることから問題はないと思われるかもしれません。しかし、まかないは税務上で「現物給与」として区分され、課税対象になります。
①従業員が食事の費用(1か月あたりの食材や調味料にかかる費用)の半額以上を負担していること。
②事業主の負担額(上記費用を差し引いた金額)が、1人あたり月額3,500円(税抜き)以下であること。
これらの条件を満たす場合は、まかないを「福利厚生費」として取り扱うことが可能で、課税の対象とはなりません。従って、税務に関する知識を適切に持つことが重要です。
税務に関する知識がない方や不安な方は、まず税金のプロである税理士へ相談してみましょう。
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福利厚生制度の導入は、導入までが目的ではありません。むしろ導入後こそ、制度を改善し続けることが大切です。社内や店舗での浸透度や実際の利用状況を見極め、必要に応じて制度を向上させましょう。
従業員による認知度や実際の利用率をモニタリングしながら、必要があれば制度自体を見直すことが必要です。特に認知度が低い場合は、制度の質や有用性を評価する前に、まずは周知活動を導入時から入念に行う必要があります。
同じ飲食業界でも、他社の従業員に受けが良い福利厚生が自社の従業員にも必ずしも適しているわけではありません。従業員たちの生活様式や価値観は多様であり、福利厚生に対する要望も多岐にわたります。
アンケート調査などを行い、従業員のニーズや嗜好に関する傾向を把握しておくことが大切です。
福利厚生の充実には、当然のことながらコストがかかります。
また、福利厚生を充実させると、申請手続きや文書作成、関連機関との連絡、利用後の処理など、手続きに関わる業務が複雑化し、管理の負担が増大することが懸念されます。
従業員の要望に応じる際には、企業の財政状況も考慮することが重要で、無計画な導入は避けましょう。
福利厚生は従業員に提供される給与の一環で、給与以外の多彩な形態を取ります。
法飲食店が福利厚生を充実させることには、採用活動の有利化、従業員のモチベーション向上、健康維持、企業のイメージ向上、節税効果など多くのメリットがあります。
制度の導入後は変更や撤廃を検討し、従業員のニーズを確認しながら、コストや管理負担も考慮することも忘れず行いましょう。