経営
2023/07/18
忙しい飲食店経営のなかでも、会計処理や財政状態の把握は欠かせない業務です。取引や資金の流れを把握していなければ、どんなに売上があったとしても、安定した利益を継続して確保することはできません。
そんな重要な財政状態の把握に必要なのが「バランスシート」とも呼ばれる貸借対照表です。
飲食店の開業を予定している方や、開業したものの経理についてきちんと理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、経理についてお悩みの経営者のため、以下の疑問について徹底解消していきます!
「飲食店経営に役立つバランスシートとはなにか?」
「バランスシートを構成する要素はなにがあるのか」
「飲食店経営にバランスシートはどういった活用ができるか」
バランスシートの基本知識から、飲食店経営に活用する方法まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
バランスシート(貸借対照表)とは、飲食店経営において必須の財務諸表のひとつです。飲食店経営者にとって、バランスシートは事業の財務状況を把握するための重要なツールになっています。
バランスシートは、財務三表のひとつであり、会社の財務状況を示す重要な文書です。他の財務三表として損益計算書やキャッシュフロー計算書があります。
財務三表のなかでもバランスシートと損益計算書は会社が決算時に作成しなければならず、キャッシュフロー計算書は上場企業のみに作成義務があります。
各財務諸表の違いは以下のとおりです。
会社の資産(所有物や権利)と負債(借り入れや支払い義務)を記録し、その差額である純資産を示す財務報告書。会社の財務状態を把握し、資金の適切な管理や経営判断の基準となる。
会社の特定期間内における収益と費用を記録し、その差額である利益(または損失)を示す財務報告書。会社の営業成績や収益性を評価し、経営戦略の立案や利益の分配を行う際の基準となる。
会社の現金の流れを示す財務報告書。営業活動、投資活動、財務活動の三つの部分からなり、現金の収入と支出を記録する。現金の運用状況やキャッシュフローの安定性を評価し、資金の適切な管理や将来のキャッシュフローの予測に役立つ。
バランスシートは飲食店の財政状況はどうなっているのか把握する目的で作成します。
現在どのくらいの資産があるのか、返済すべき負債はどの程度あるのかといった情報が得られるため、その飲食店の健康状態がわかるのです。
とくに飲食店は需要の変動や季節性の要素があり、資金管理が重要な業界です。バランスシートを通じて資産と負債のバランスから経営の安定度を評価するだけでなく、資金調達や投資判断の際の重要な基準として役立ちます。
正確なバランスシートの作成と分析は、飲食店経営において持続可能な成長と成功に欠かせない要素です。
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飲食店経営にバランスシート(貸借対照表)が重要であることが理解できたうえで、その内容を深掘りしていきましょう。バランスシートを構成する要素は大きく3つあります。
資産はバランスシートの左側に記載されます。資産は企業が所有する経済的な価値を持つ資源や権利を示します。
資産はさらに「流動資産」と「固定資産」の2つに分けられます。
流動資産は、1年以内に現金化できる資産です。例えば、現金、預金、売掛金、棚卸資産などが含まれます。流動資産は企業の日常運営に必要な資金を確保するために重要です。
間違いやすい項目として注意したいのが「前払費用」です。「費用」とついていますが、この勘定科目は流動資産に計上されます。飲食店では、主に前払家賃などが該当します。
飲食店における流動資産の代表例は以下のとおりです。
固定資産は、1年以上の長期間にわたって使用される資産を指します。例えば、不動産、設備、車両、機械などです。固定資産は企業の生産や事業活動を支えるために重要な役割を果たします。
また、固定資産はさらに「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」に分けられます。
わかりやすく説明すると、有形固定資産は実体のある資産、無形固定資産は実体のない資産、投資その他の資産はこの2つに該当しない資産です。
飲食店における固定資産の代表例は以下のとおりです。
負債はバランスシートの右上に記載されます。負債は企業が他者に対して負担を負っている経済的な義務を示します。
負債は返済期間の長さによって「流動負債」と「固定負債」に分類されます。
流動負債は、1年以内に支払わなければならない負債を指します。例えば、仕入債務、給与未払い、短期借入金などが含まれます。流動負債は企業の短期的な支払能力を評価する上で重要な要素です。
つまり、流動負債の金額が大きければ大きいほど、すぐに支払わなければならない負債が多いということです。
飲食店における流動負債の代表例は以下のとおりです。
固定負債は、1年以上の長期間にわたって支払わなければならない負債を指します。
例えば、長期借入金、社債、リース債務などが固定負債に該当します。固定負債は企業の長期的な財務安定性を評価する上で重要な要素です。
流動負債と異なりすぐに支払日がくるわけではありませんが、計画的に返済金を備えておく必要があるでしょう。
飲食店における固定負債は、金融機関から長期的に融資を受けている借入金の「長期借入金」が代表的です。
純資産は貸借対照表の右下に記載されます。企業の資産から負債を差し引いた残りの部分で、所有者の資本や利益を示します。企業の持続性と財務安定性を評価する上で重要な指標です。
企業の成長や発展の基盤となるもので、過去からの利益の蓄積や株主からの出資金で構成されること、負債と異なり返済義務がないことから「自己資本」とも呼ばれます。純資産が大きい飲食店は健全な事業活動が維持できていると判断できます。
バランスシート(貸借対照表)に記載された数値から、飲食店の経営分析をおこなえます。意思決定や経営の改善に役立つ、代表的な分析方法をご紹介します。
流動比率は、飲食店の短期的な支払能力を評価する指標です。バランスシートの流動資産を流動負債で割ることで算出されます。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
流動資産に対して流動負債が下回っていれば無理のない返済が可能、逆に上回っていれば資金繰りが困難になっている可能性が高いと判断できます。
自己資本比率は、飲食店の自己資本に対する負債の割合を示す指標です。バランスシートの純資産を総資産で割ることで算出されます。
自己資本比率 = 純資産 ÷総資本
算出した自己資本比率が高ければ、飲食店の長期的な安定性が高いと言えます。一方で、自己資本比率が低い場合は、赤字であったり、借入金などの負債が増加していたりする原因が考えられます。
自己資本比率の目安は30%程度とされていますが、飲食店は20%を下回るケースが多いです。こまめな分析をおこない、コントロールしていくことが大切です。
固定比率は、飲食店の固定資産に対する長期借入金の割合を示す指標です。バランスシートの固定負債を固定資産で割ることで算出されます。
固定比率 = 固定負債 / 固定資産
固定比率は、基本的に100%未満を目安にすると良いでしょう。
100%未満であれば、飲食店の維持に必要な固定資産を、すべて自己資本で賄っているということのため、財務状況は比較的健全で、長期的な安定が見込めるといえます。
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この記事では、飲食店の経営状態を把握するために重要なバランスシート(貸借対照表)について解説しました。
バランスシートは飲食店の健康状態を明確にするために必要です。資産・負債・純資産の3つの要素とその数値を活用する分析方法を理解し、日々の経営に役立てましょう!