経営
2023/03/02
飲食店を経営していくうえで、家賃は必須となる経費です。家賃によって経営を圧迫されないためには、適正な家賃比率を把握してから開業する物件選びや家賃に対する売上目標をたてる必要があります。
そこで今回は、飲食店の家賃比率に関する以下の疑問
「飲食店の家賃比率はどのくらい?」
「飲食店の家賃比率の計算方法は?」
「飲食店の家賃比率が高いときはどうしたら良い?」
などについて、徹底解説していきます!飲食店における一般的な家賃比率や基礎知識、計算方法をしっかり把握して、上手に経営を続けましょう。
「家賃比率」とは、売上に対して家賃が占める割合のことです。飲食店の経営で発生するあらゆる経費のなかでもとくに大きい経費が家賃であり、経営において重要なポイントとされています。
飲食店経営において管理が重要な家賃比率ですが、どのくらいの目安でコントロールすれば良いのでしょうか。ここでは、飲食店における家賃比率の目安から、考え方、計算方法までご紹介します。
飲食店の家賃比率は7〜10%が一般的な目安です。数値が10%以上になってしまうと赤字となる確率が高く、売上の10%以下に抑えることが理想的とされています。
小規模な飲食店の場合は7%、大規模な飲食店の場合は10%を目安に管理していきましょう。
飲食店を経営する際にはさまざまな経費がかかり、家賃の他に人件費・食材原価・光熱費などもあります。
人件費と食材原価のFLコストは合わせて60%以下に抑えるべきとされているため、光熱費を10%、その他の経費を10%、家賃を10%と仮定すると計90%になります。すると、残りの10%が飲食店の利益となるわけです。
家賃は毎月変動するものではありません。そのため、家賃比率は毎月の「売上」によって変動することを念頭に計画を立てなければいけません。
たとえば、家賃10万円の物件を取得し家賃比率を7%でコントロールするためには、140万円程度の売上が必要になります。家賃50万円の大規模な飲食店の場合は売上が500万円以上で家賃比率10%以内に抑えられると計画できます。
家賃比率の適正数値は7〜10%ですが、物件取得後に家賃をコントロールすることは簡単なことではありません。家賃比率を適正にするためには、物件取得時に家賃比率を意識して選ぶことはもちろん、家賃以外の経費の管理も継続しておこない、一般的な金額に留めておく必要があります。
家賃比率は以下の計算式によって求められます。
計算式:家賃÷売上額×100
この「家賃」のなかには、月々の支払い家賃にくわえ、飲食店の管理費や共益費も含めると、より詳細な割合が算出できるでしょう。また、自己所有の店舗の場合は、固定資産税の金額で計算してください。
実際に、数値を用いて計算してみましょう。
家賃25万円・売上200万円の飲食店の場合は「25万円÷200万円×100=12.5」と計算できます。家賃比率は12.5%で、目安より2.5%オーバーしていることが分かりました。
この場合、物件取得前だったら物件の見直し、取得後の場合は売上に対する家賃が高すぎるため、売上をアップさせるなどの工夫が必要になってきます。
また、駅近などの好立地に出店すると、どうしても家賃比率が高くなりやすい傾向にあります。その場合は人件費や食材原価など、その他経費を抑えて利益を出していく方法もひとつの戦略でしょう。
家賃比率を下げることは、飲食店経営にあたってとても重要なポイントです。経費のなかでも大きな比重を占めている家賃をコントロールすることは、安定経営のカギとなるでしょう。
ここでは、飲食店の家賃比率を下げる方法を5つご紹介します。
ディナーしか営業していない飲食店などは、営業時間を見直して売上を高めると家賃比率を低下できます。
家賃は営業時間だけに発生しているわけではありません。たとえば17時〜23時に営業している飲食店は6時間しかお店を開けておらず、これは売上の面から言えばもったいないことです。ランチタイムやカフェタイムも営業できる余裕はないか、需要のある時間帯はないか、営業時間について再度検討してみましょう。
また、ランチタイムはテイクアウトのみ対応するという方法もあります。人件費も抑えつつ売上を高め、家賃比率の低下につながるでしょう。
家賃比率を下げることだけ考えると、休業日を作らない・減らすことも選択肢のひとつです。営業していない日でも家賃は発生しているため、休業日を減らして営業日数を増やすことで売上を上げ、相対的に家賃比率を下げられます。
長い間ずっと無休で営業することは難しくても、開業からしばらくの間だけ、売上増加が期待できる繁忙期だけなど、期間限定で取り組む方法もあります。
休業日を減らしても従業員の負担を増やすことにならないか、従業員の休みはきちんと取得できるか、という点を考慮しながら検討していきましょう。
家賃比率は売上に対する家賃が占める割合であるため、数値を下げるには売上アップがもっとも有効です。席数の見直し、セットメニュー、ランチ限定メニュー、再来店を促すクーポン配布など、売上を高める工夫をおこないましょう。
とくにゴールデンウィークや年末年始後の閑散期は売上が低下し、家賃比率が高くなりやすいため、飲食店の工夫が重要になります。閑散期を予測してイベントを仕掛けたり、デリバリーを開始したりと、1年を通して売上を伸ばす施策を打っていきましょう。
基本的に、家賃は売上の金額に関わらず毎月固定で発生します。「取得時から家賃は変わらないものだ」と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、貸主に家賃交渉をおこなう行為は「借地借家法」という法律のなかで正当な権利として認められています。家賃比率が高いからといって移転を検討する方もいますが、移転には多額の費用がかかり、顧客離れが起きる可能性もあります。
売上がどうしても上がらずその他の経費も管理できている場合は、家賃を下げてもらえないか貸主に検討してもらいましょう。店舗は通常のマンションに比べると高額に設定されていることもあるため、家賃を減額できるケースも少なくありません。
まだ物件を取得していない場合は、取得する前に家賃交渉や適正家賃であるかの確認を必ずおこないましょう。
飲食店の営業がランチタイムのみ、ディナータイムのみである場合は、お店の営業時間外に他の業務をおこなう「二毛作営業」もひとつの方法です。二毛作営業とは、夜はBARとして営業しているが、ランチ時間はカレー屋として営業するスタイルのことです。
時間帯によって店舗を使い分けることで、店舗を最大限活用できます。
また、飲食店をオープンしたいけれど場所がない、資金がないという方に向けて「時間貸し」「場所貸し」という形で、店舗スペースを他の事業者に貸し出す方法もあります。立地や条件が気に入った事業者に店舗を貸し出し、賃料として得ることが可能です。
二毛作営業や場所貸しをおこなう場合は、トラブルにならないように1度貸主に相談しておくと良いでしょう。
飲食店の家賃比率を考えるときには、物件取得前のシュミレーションと 人件費や食材原価も含めた「FLR比率」がポイントです。最後に、飲食店の家賃比率の考え方を押さえておきましょう。
先述したように、家賃は毎月固定でかかるものであり、物件取得後に簡単に削減できる経費ではありません。そこで重要なのは、物件を契約する前のシミュレーションです。たとえば、家賃が20万円の店舗を検討している場合、家賃比率が10%となる売上プランを設計しましょう。
200万円以上を達成するための客数や客単価を明確にし、営業時間や定休日を細かく決めることで「1ヶ月で何時間営業し、1時間でどのくらい売り上げる必要があるのか」という視点を持てます。
売上シュミレーションを立ててみて、無理があるようなら違う物件を探す必要があるでしょう。
家賃比率を10%以内にすることは重要です。しかし、そこに人件費と食材原価を加えたFLR比率が70%以下になることも考えて営業するべきでしょう。
たとえばカフェや喫茶店なら食材費を抑えて、その分家賃の高い場所に出店する、カウンターだけの飲食店で人件費を抑えられるため食材費にお金をかけられるなど、バランスを取ることで利益を出す飲食店を形成できます。
家賃比率の数値だけで判断せず、FLR比率65〜70%の範囲で①家賃②人件費③食材費の3つの要素を調整することを意識して経営しましょう。
この記事では、飲食店の家賃比率についてご紹介しました。
家賃比率のコントロールは、飲食店を成功に導くために欠かせないものですが、人件費や食材費を加えた比率で判断することも重要です。
家賃比率を低下させるためには売上アップへ工夫を凝らすことはもちろん、貸主への交渉も視野に入れましょう。
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