経営
2025/05/13
どれだけ万全を期していたとしても、飲食店を経営していくうえでクレームの発生をゼロにすることは難しいでしょう。そのため、あらかじめ飲食店におけるクレーム対応や起きやすいクレームの内容について学習しておくことが大切です。
そこで今回は、飲食店のクレームについて、以下の点を中心に解説していきます。
「飲食店のクレーム対応の方法は?」
「飲食店のクレームにはどんなものがある?」
「悪質クレームが来た際の対応方法は?」
飲食店においてクレーム対応は、今後の経営が左右される可能性もある重要度が高いものです。経営者はもちろん、全従業員にも共有しておきましょう!
「クレーム=嫌なもの」というイメージがある方が多いのではないでしょうか。
飲食店でクレーム対応が非常に重要なのは、直接的に顧客満足度を向上させ、ブランドのイメージを守り、リピーターを確保するためです。
誠実にクレーム対応をおこなうことで飲食店全体の質の向上につながり、結果的に顧客の増加が期待できるでしょう。
一方で不適切なクレーム対応をすれば、お客様満足度が低下し、飲食店の評判が悪くなってしまう可能性もあるのです。
顧客からのフィードバックは、良いものもあれば改善を求めるものもありますが、どちらも店舗のサービス向上に寄与する貴重な意見として受け止めるべきです。
顧客がクレームを出したとき、それにどのように対応するかが重要です。
良い対応はお客様を満足させるだけでなく、期待を超えることができれば、お客様はその経験を他人に話すと考えられます。これにより、口コミでの良い評判が広がります。
クレームを受けたときの対応は、その飲食店のブランドイメージに大きく影響します。
適切な対応をすることで、一時的な問題が長期的なダメージに変わるのを防ぎ、ブランドの信頼性を保つことができます。
逆に、不適切な対応は、潜在的な新規顧客の損失を招くリスクがあります。
良好なクレーム対応はリピート顧客を生み出す鍵です。お客様が一度の訪問後にまたその場所を訪れるかどうかは、そのお客様が受けた扱いに大きく依存しています。
効果的にクレームを解決することで、お客様はお店の対応に感謝し、その店舗を再訪することが多くなります。
飲食店で起こり得るクレーム内容は様々ですが、対応する際の基本は「謝罪」「傾聴」「解決策の提示」の3点です。ここでは、この3点を細分化した「クレーム対応の基本手順」をご紹介します。
飲食店に訪れたお客様からクレームがあったら、まずは不快な気持ちにさせてしまったことに対する謝罪をしましょう。ここでいう「謝罪」とは、お客様の怒りや不快感に対する限定的な謝罪です。
クレームを入れているお客様は、飲食店側に何かしらの不満を感じています。まずは「この度はお客様を不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ありません」などのように限定的な謝罪をして、お客様と落ち着いて話ができる状態を作ります。
まだしっかり状況が把握できていないため、クレーム内容を全面的に謝罪する行為は避けた方が良いでしょう。
次に飲食店側は「傾聴」の行動に移ります。クレーム内容を聞く際に重視したい点は、何が起きたのか(クレームの原因となったものはなにか)、お客様はどのような気持ちになっているかの2つです。
お客様が話す内容を記録しながら聞き、相手の目を見て相づちを打つなど聞く際の姿勢も意識しましょう。話のなかで疑問点や反論があったとしても、お客様の話に最後まで耳を傾けることが重要です。
クレーム内容の事実確認とお客様の気持ちを把握したうえで、現場でできる限りの返金や交換などの解決策を提示します。
提示した解決策では不満である場合、またはお客様からの難しい要求があった場合は、日を改めたり、場所や人を変えて見たりする方法が効果的です。
もし対応した従業員がアルバイトやパートで、これ以上の対応が難しいと感じたら速やかに店舗責任者を呼びましょう。
お客様に2度同じ話をさせないよう、店舗責任者には今までのクレーム内容の要点を伝えておきます。
お客様からのクレームは、飲食店の質を向上させることにつながる貴重なものです。
お客様が帰られる際には、再度ご迷惑をかけた事に対して謝罪するとともに、意見をいただいたことに対する感謝を伝えると良いでしょう。
また、クレーム内容は出勤の有無に限らず全ての従業員に共有し、再発防止への改善に努めます。
飲食店におけるクレームは、主に料理に対するものと接客に対するものに分かれます。事前によくあるクレームとその対応を把握しておきましょう。
飲食店で最も多いクレームが「食べ物に異物が混入していた(異物混入)」で、提供された料理に髪の毛や虫、ラップなどが混入しているというものです。
楽しみにしていた料理のなかに異物が入っていたら、飲食店のイメージが低下してしまうことは避けられないでしょう。
そのため異物混入に関するクレームには、より迅速な対応が重要です。まずは、真摯に謝罪、その後に新しい料理を提供するという流れが好ましいです。
しかし、お客様が料理の交換を拒否する場合は代金は頂かず、最後にあらためて謝罪をします。
料理の再提供を拒まれたときは代金を頂かないだけにするのか、次回使えるクーポンを渡すのか、従業員によって対応の差が出ないように統一しておきましょう。
クレームのなかには、従業員の接客態度に対する内容も多いです。この場合は、すぐに不快な気持ちをさせたことに対して謝罪するとともに、従業員の教育を徹底することを伝えます。
また、きちんと従業員のヒアリングもおこないましょう。お客様から聞いた話が100%正しいとは限りません。従業員側の意見も聞いた上で、今後の対応、改善策を準備していきます。
お客様が注文してから何十分待っても料理が提供されないと、どうしてもクレームにつながってしまいます。
ランチタイムや休日などの注文数が増える日や時間帯は席に着くまでにも時間がかかり、クレームが発生しやすいです。
この場合は長時間待たせていることに対して謝罪し、提供まで何分かかるかを確認し、お客様に伝えます。
混雑時や人員が不足しているなど、提供に時間がかかる可能性があるときは、来店時やオーダーを受ける際に、あらかじめ提供に時間を要することを伝えておくと、クレーム発生を未然に防げるでしょう。
料理の質に関するクレームには、アボカドの色が悪い、ご飯が硬いなど品質自体に問題がある場合と、お客様の味の感じ方に対する場合に分かれます。
品質自体に問題がある場合は、異物混入と同様に新しいものを提供しなおす対応が好ましいです。
味が薄い、濃いなどの味つけに関するクレームの場合は、お客様からの貴重な意見として受け止め感謝を伝えるとともに「今後のレシピの参考にさせていただきます」とお伝えしましょう。
同じメニューに対して味へのクレームが複数回ある場合は従業員の意見を募るなど、料理の味に問題がないか、再度チェックする対応も求められます。
飲食店がクレームに効果的に対応するためには、事前の準備と予防が非常に重要です。これにより、問題が発生したときに迅速かつ効果的に対処することが可能となり、顧客満足度の向上につながります。
これから紹介する予防策と準備を通じて、飲食店はクレーム対応をよりスムーズに行い、お客様からの信頼を得ることが可能となるでしょう。
スタッフへの適切なトレーニングは、クレーム対応の効果を大きく左右します。
飲食店では、接客スキル、問題解決能力、感情管理など、クレームに対応するための多様な技術をスタッフに教育することが推奨されます。
効果的なトレーニングは、スタッフがお客様の不満を迅速かつ適切に解決し、ポジティブな顧客体験を提供するための基盤を作ります。
リスク評価は、潜在的な問題を事前に識別し、それらに効果的に対処するための戦略を立てるのに役立ちます。
例えば、食品の安全性や調理プロセス、顧客サービスの各段階において潜在的なリスクを評価し、それに対応するためのプロセスを定めることが重要です。
これにより、問題が発生する前に適切な対策を講じることができます。
お客様からのフィードバックは、サービス改善のための貴重な情報源です。
飲食店は、顧客からの直接的なコメントやオンラインレビューを通じて、サービスの質を定期的に評価し、必要に応じて改善策を講じるべきです。
お客様の声を真摯に受け止め、それをサービス向上に活かすことで、顧客満足度の向上が期待できます。
飲食店でクレームが発生する際に最も大切なのは、スタッフがどのように対応するかです。クレームに対して効果的に対応するためには、優れたコミュニケーションスキルと適切な心構えが必要です。
クレームを受けた際には、感情をコントロールして冷静に対応することが求められます。感情的にならずに客観的に問題を評価し、解決策を考えることが重要です。
冷静な対応は、クレーム処理の効率を高めるだけでなく、お客様との信頼関係を築く基盤となります。
お客様の声に耳を傾け、その背景にある問題を理解することが、クレーム対応において非常に重要です。
お客様の話を遮ることなく、耳を傾け、時には同情を示すことで、お客様の不満を和らげることができます。このプロセスは、問題を明確にし、最適な解決策を見つける手助けとなります。
クレームに対応する際、プロフェッショナルであることが求められます。感情をコントロールするためには、深呼吸やカウントダウンなどの簡単なテクニックが役立ちます。
また、ポジティブな言葉遣いを心掛けることで、状況を悪化させずに対処することができます。
飲食店のクレームのなかには店側に非が無い理不尽なクレームがあったり、実際に保健所を通してクレームを受けたりするケースも存在します。
ここでは、飲食店のクレームに関する気になる疑問や不安点を解消していきます!
基本的にクレームとは飲食店に対する改善を求めるものであるとお伝えしましたが、なかには店側に非がないにも関わらずクレームを入れる「カスタマーハラスメント」も存在しています。
具体的には、長時間にわたる説教・料理の作り直しの強要・異物混入の虚偽などが当てはまります。
いくらお客様だからといって理不尽な要求に応える必要はないため、冷静かつはっきりと要望には応えられないことを伝えましょう。
問題行為が複数回に続く場合は、クレーマー本人に通告し、最終的に警察や弁護士に相談します。証拠として録音やメモを残しておくことも手段のひとつです。
このような悪質クレームは決して少なくありません。事前にマニュアルやガイドラインを作成し、全従業員の共有しておくと良いでしょう。
飲食店が受けるクレームは、お客様からだけに限りません。飲食店に来店したお客様が保健所に苦情を入れた場合は、保健所から電話があったり、立入検査がおこなわれたりすることがあるのです。
立入検査は飲食店の設備や衛生状態が法律や条例に沿ったものであるかを確認する行政指導です。
健全に営業していれば何も問題ありませんが、もし指導された部分があれば早急に改善しましょう。
この行政指導に応じなかったり指導内容に従わなかったりすると、食品衛生法の規定によって行政指導を行った件の公表がおこなわれるリスクがあるため、誠実に対応するべきと言えます。
飲食店での適切なクレーム対応はビジネスの成功に直結します。良好なクレーム処理は顧客満足度を向上させ、リピート顧客を確保し、ブランドの評判を保護する効果があります。
このため、すべてのスタッフに対して効果的なコミュニケーション技術と顧客対応のトレーニングを施し、クレームを積極的に改善の機会として捉えることが重要です。
クレームはすべて悪質なものではなく、多くがお店を良くしようと考えるお客様の貴重な意見です。受けたクレームには真摯に対応し、必要に応じて改善に努めましょう!