経営
2023/02/07
どれだけ万全を期していたとしても、飲食店を経営していくうえでクレームの発生をゼロにすることは難しいでしょう。そのため、あらかじめ飲食店におけるクレーム対応や起きやすいクレームの内容について学習しておくことが大切です。
そこで今回は、飲食店のクレームについて、以下の点を中心に解説していきます。
「飲食店のクレーム対応の方法は?」
「飲食店のクレームにはどんなものがある?」
「悪質クレームが来た際の対応方法は?」
飲食店においてクレーム対応は、今後の経営が左右される可能性もある重要度が高いものです。経営者はもちろん、全従業員にも共有しておきましょう!
「クレーム=嫌なもの」というイメージがある方が多いのではないでしょうか。クレームのなかには悪質で理不尽な内容のものもありますが、多くは飲食店に対する改善を求めるものです。そのため、クレーム対応はお客さんの気持ちを抑えるのではなく、課題や問題を知り、改善すべきものと言えます。
誠実にクレーム対応をおこなうことで飲食店全体の質の向上につながり、結果的に顧客の増加が期待できるでしょう。一方で不適切なクレーム対応をすれば、お客さんの満足度が低下し、飲食店の評判が悪くなってしまう可能性もあるのです。
クレームによってお店の評判を下げないためには、事前にクレーム対応の基本手順をマニュアル化しておくことをおすすめします。
飲食店で起こり得るクレーム内容は様々ですが、対応する際の基本は「謝罪」「傾聴」「解決策の提示」の3点です。ここでは、この3点を細分化した「クレーム対応の基本手順」をご紹介します。
飲食店に訪れたお客さんからクレームがあったら、まずは不快な気持ちにさせてしまったことに対する謝罪をしましょう。ここでいう「謝罪」とは、お客さんの怒りや不快感に対する限定的な謝罪です。
クレームを入れているお客さんは、飲食店側に何かしらの不満を感じています。まずは「この度はお客様を不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ありません」などのように限定的な謝罪をして、お客さんと落ち着いて話ができる状態を作ります。
まだしっかり状況が把握できていないため、クレーム内容を全面的に謝罪する行為は避けた方が良いでしょう。
次に飲食店側は「傾聴」の行動に移ります。クレーム内容を聞く際に重視したい点は、何が起きたのか(クレームの原因となったものはなにか)、お客さんはどのような気持ちになっているかの2つです。
お客さんが話す内容を記録しながら聞き、相手の目を見て相づちを打つなど聞く際の姿勢も意識しましょう。話のなかで疑問点や反論があったとしても、お客さんの話に最後まで耳を傾けることが重要です。
クレーム内容の事実確認とお客さんの気持ちを把握したうえで、現場でできる限りの返金や交換などの解決策を提示します。提示した解決策では不満である場合、またはお客さんからの難しい要求があった場合は、日を改めたり、場所や人を変えて見たりする方法が効果的です。
もし対応した従業員がアルバイトやパートで、これ以上の対応が難しいと感じたら速やかに店舗責任者を呼びましょう。お客さんに2度同じ話をさせないよう、店舗責任者には今までのクレーム内容の要点を伝えておきます。
お客さんからのクレームは、飲食店の質を向上させることにつながる貴重なものです。お客さんが帰られる際には、再度ご迷惑をかけた事に対して謝罪するとともに、意見をいただいたことに対する感謝を伝えると良いでしょう。
また、クレーム内容は出勤の有無に限らず全ての従業員に共有し、再発防止への改善に努めます。
飲食店におけるクレームは、主に料理に対するものと接客に対するものに分かれます。事前によくあるクレームとその対応を把握しておきましょう。
飲食店で最も多いクレームが「食べ物に異物が混入していた(異物混入)」で、提供された料理に髪の毛や虫、ラップなどが混入しているというものです。楽しみにしていた料理のなかに異物が入っていたら、飲食店のイメージが低下してしまうことは避けられないでしょう。
そのため異物混入に関するクレームには、より迅速な対応が重要です。まずは、真摯に謝罪、その後に新しい料理を提供するという流れが好ましいです。しかし、お客さんが料理の交換を拒否する場合は代金は頂かず、最後にあらためて謝罪をします。
料理の再提供を拒まれたときは代金を頂かないだけにするのか、次回使えるクーポンを渡すのか、従業員によって対応の差が出ないように統一しておきましょう。
クレームのなかには、従業員の接客態度に対する内容も多いです。この場合は、すぐに不快な気持ちをさせたことに対して謝罪するとともに、従業員の教育を徹底することを伝えます。
また、きちんと従業員のヒアリングもおこないましょう。お客さんから聞いた話が100%正しいとは限りません。従業員側の意見も聞いた上で、今後の対応、改善策を準備していきます。
お客さんが注文してから何十分待っても料理が提供されないと、どうしてもクレームにつながってしまいます。ランチタイムや休日などの注文数が増える日や時間帯は席に着くまでにも時間がかかり、クレームが発生しやすいです。
この場合は長時間待たせていることに対して謝罪し、提供まで何分かかるかを確認し、お客さんに伝えます。
混雑時や人員が不足しているなど、提供に時間がかかる可能性があるときは、来店時やオーダーを受ける際に、あらかじめ提供に時間を要することを伝えておくと、クレーム発生を未然に防げるでしょう。
料理の質に関するクレームには、アボカドの色が悪い、ご飯が硬いなど品質自体に問題がある場合と、お客さんの味の感じ方に対する場合に分かれます。
品質自体に問題がある場合は、異物混入と同様に新しいものを提供しなおす対応が好ましいです。味が薄い、濃いなどの味つけに関するクレームの場合は、お客さんからの貴重な意見として受け止め感謝を伝えるとともに「今後のレシピの参考にさせていただきます」とお伝えしましょう。
同じメニューに対して味へのクレームが複数回ある場合は従業員の意見を募るなど、料理の味に問題がないか、再度チェックする対応も求められます。
飲食店のクレームのなかには店側に非が無い理不尽なクレームがあったり、実際に保健所を通してクレームを受けたりするケースも存在します。
ここでは、飲食店のクレームに関する気になる疑問や不安点を解消していきます!
基本的にクレームとは飲食店に対する改善を求めるものであるとお伝えしましたが、なかには店側に非がないにも関わらずクレームを入れる「カスタマーハラスメント」も存在しています。具体的には、長時間にわたる説教・料理の作り直しの強要・異物混入の虚偽などが当てはまります。
いくらお客さんだからといって理不尽な要求に応える必要はないため、冷静かつはっきりと要望には応えられないことを伝えましょう。問題行為が複数回に続く場合は、クレーマー本人に通告し、最終的に警察や弁護士に相談します。証拠として録音やメモを残しておくことも手段のひとつです。
このような悪質クレームは決して少なくありません。事前にマニュアルやガイドラインを作成し、全従業員の共有しておくと良いでしょう。
飲食店が受けるクレームは、お客さんからだけに限りません。飲食店に来店したお客さんが保健所に苦情を入れた場合は、保健所から電話があったり、立入検査がおこなわれたりすることがあるのです。
立入検査は飲食店の設備や衛生状態が法律や条例に沿ったものであるかを確認する行政指導です。健全に営業していれば何も問題ありませんが、もし指導された部分があれば早急に改善しましょう。
この行政指導に応じなかったり指導内容に従わなかったりすると、食品衛生法の規定によって行政指導を行った件の公表がおこなわれるリスクがあるため、誠実に対応するべきと言えます。
この記事では、飲食店におけるクレームについてご紹介しました。クレームはすべて悪質なものではなく、多くがお店を良くしようと考えるお客さんの貴重な意見です。
受けたクレームには真摯に対応し、必要に応じて改善に努めましょう!