経営
2023/03/20
常に自店の課題を把握し、改善に取り組むことは飲食経営において必須です。長年愛される飲食店にするためには、社会やニーズに合わせた業態をつくり、経営の改善を繰り返す必要があります。
しかし、飲食店経営における課題を見つけたときに「何から手をつけたら良いのか分からない」という悩みを持つ方も多いでしょう。
そこでこの記事では、飲食店経営における以下の疑問や悩みについて徹底解説していきます!
「飲食店経営において定期的な改善や見直しはどうして重要なの?」
「改善が必要になる飲食店の特徴とは?」
「飲食店経営における具体的な改善方法にはなにがある?」
飲食店経営の改善や立て直し方法について原因別に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
飲食店経営においてどうして「改善」が重要視されるのか、それは安定して売上や利益を確保することが、とても難しいからです。
とくに飲食業界の廃業率は高く、開業後2年以内に50%、3年以内に70%が閉店するといわれています。
10年以上継続できる飲食店はわずか10%であり、常により良い飲食店への改善に努めないと、廃業の危機にさらされる可能性があるのです。
店舗運営が思うようにいかないとき、その原因が分からないまま改善策を実施するケースも多いです。飲食店経営の悩みを解消するためには、原因を解明するところから始めなければいけません。
経営の改善が必要かどうかは「売上」「利益」「資金繰り」の3つの観点から、自店の特徴を把握すると良いでしょう。
経営の改善が求められる飲食店は、売上が足りていないケースが多いです。自店の売上が十分あるのかどうかを測る指標として、以下の3つが挙げられます。
3つ目の目安として「坪月商」がありますが、これは「月商÷坪数」の計算式から求められます。
飲食店経営において、坪月商が10万円以上ないと安定した経営は難しいといわれており、地方では坪月商15万円、首都圏では20万円以上が繁盛店のラインとされています。
自店の売上が足りているかどうかが分からないときは、この3つの目安から判断すると改善の必要性が見えてくるでしょう。
飲食店経営において売上と同じ、もしくはそれ以上に重要な要素が「利益」です。どれだけ売上が大きくても、手元に残る利益がなければ経営は安定しません。
そこで、飲食店経営をするときは以下のポイントが押さえられているかを常に確認しながら営業を続ける必要があるでしょう。
飲食店の場合、売上の10%以上の営業利益が出ているかどうかが大きな目安になります。売上がある程度あるのにも関わらず利益が10%以下になるのであれば、早急に改善が必要です。
FLコストは食材費(food)と人件費(labor cost)を合わせた金額です。
FL比率は「(食材費+人件費)÷売上の計算式で求めることができます。業態にもよりますが、FL比率は60%以下が望ましいとされているため、利益が出ていない場合は、この割合が高くなっている可能性があるでしょう。
飲食店経営において見落としがちなのが「資金繰り」です。売上と利益がある程度あるにも関わらず金銭が残らないのであれば、資金繰りが回っていない可能性が高いと言えます。
どれだけ料理の腕や営業力があっても、適切な資金の管理ができないと経営は安定しません。飲食店経営者は、利益と資金繰りの違いやキャッシュフローを正確に把握しているかどうかを確認し、もし理解していない場合は学び直す必要があるでしょう。
資金繰りについて正しい知識があれば、飲食店経営における改善点が見えてくるようになります。
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飲食店経営における改善の重要性や原因が分かったところで、改善に入っていきます。なんでも改善策を試せば良いのではなく、それぞれ原因に沿った方法を実施することが重要です。
はじめに、飲食店の売上や来客数に原因がある場合に効果的な改善策を4つご紹介します。
売上が安定しない、開業後から低い売上が続く場合はターゲットやコンセプトの再設定も選択肢のひとつにしましょう。
店舗周辺の属性を調査し、ターゲットにすべき客層を選定していきます。移動手段や時間帯の通行量、近隣の繁盛店の状況を細かく調査し、狙うべきターゲット、売れる商品や時間を立案していきます。
これまでのやり方を変更する必要があるためハードルが高いと感じるかもしれませんが、適切なターゲット・コンセプトでリニューアルすることによって結果的に売上増加が期待できるでしょう。
「このお店と言えば◯◯」といった看板メニューがあると、それを目当てにわざわざ足を運んでもらえる店にしやすいです。看板メニューのファンを確保することに加え、口コミの拡散によってお店全体の認知度も上げることができます。
また、看板メニューに季節要素を足したメニューを開発し、シーズンメニューとして販売することで、「期間限定」という魅力も加えることができます。
人気の看板メニューがあるのは飲食店にとって大きな強みとなるため、妥協せず開発することがおすすめです。
飲食店経営においてSNSの活用は必須となりました。しかし、実際に上手に活用できている店舗は多くありません。
SNSはチラシの配布と違い即効性が高い集客ツールではないため、継続して宣伝することに価値を感じない方が一定数います。
しかし、SNSを見てくれる方が増えれば、チラシ配布やポイントカードなどの作成よりもずっと労力を抑えて広範囲の方にアピールすることができるのです。
魅力が伝わる写真や文章を作成し、投稿を継続させることが大切です。
売上や客数に課題を持つ飲食店は、立地に適した営業時間や休業日を設けていない可能性があります。飲食店の立地の特徴によって、集客が見込める時間帯や曜日は異なるため、お客さんの行動パターンに合わせて改善しましょう。
たとえば、住宅街にあるおしゃれなレストランの場合、22時以降の夜遅い時間の来客は見込めません。
オフィス街なら休業日は日曜日にする、繁華街にある居酒屋なら夕方からの営業にするなど、ニーズに合わることを意識しましょう。
次に、飲食店経営における利益の改善策をご紹介します。
飲食店の原価率が高い場合、ポーション管理が優先度の高い改善策です。1皿の量(ポーション)が多くなってしまうと、必然的に原価率も高くなります。
もともとポーションの量を多くする経営方針なら問題ありませんが、調理をおこなう従業員が、意図せずポーションを増やしてしまっているケースも少なくありません。
調理マニュアルを作成していても、慣れによって自分の感覚で調理するようになることも多いでしょう。
適正ポーションを保つためには、定期的に従業員の調理工程を確認したり、各自のポーション管理を意識づけたりなどの工夫が必要です。
FLコストのうち人件費が高い場合は、適切な人員配置ができていない可能性があります。
人件費を正すためには適正な人数を知ることから始める必要がありますが、1時間あたり1従業員があげている金額をあらわす「人事売上」を指標にすると良いでしょう。
人事売上は以下の計算式によって求められます。
計算式:人事売上=売上高÷総労働時間
飲食店の規模やジャンルによっても変動しますが、4,000〜5,000円程度が目安とされているため、適正数値に近くなるようにシフトを改善しましょう。
飲食店の利益を増やすためには回転率も重要になってきます。回転率とは、飲食店の客席をお客さんが何人座ったか、何回入れ替わったかを図る指標です。
計算式:回転率=客数÷客席数
上記の計算式によって求められ、数値が大きいほど多くのお客さんに利用してもらえたことになります。
回転数を高めるためには料理の提供時間を短縮することが最も効果的ですが、追加注文を見込めるような店舗などもあるため、店舗の性質に合わせて取り入れるかどうか決めるようにしましょう。
近年は立て続けに食材の値上げがあり、自然と原価率が高くなってしまった飲食店も少なくありません。飲食店経営を安定させるためには、仕入れ価格や仕入れ先の見直しも検討が必要です。
まずは価格交渉をおこない、希望が叶わない場合に仕入れ先の見直しを視野に入れましょう。仕入れ先を変更するときには、味に影響がない範囲で選定することが重要です。
最後に、飲食店経営において常に重要となる資金繰りの改善策をご紹介します。
飲食店経営をはじめてから収支を記帳していなかった場合、資金繰り表を作成してキャッシュフローを把握するところから始めましょう。
資金繰り表とは、現金の出し入れを記帳するもので、飲食店のお金の流れを把握することに役立ちます。どのような理由でお金が出て、入っているのかきちんと分かるようになるため、必要な改善策も自然と見えてくるでしょう。
飲食店の開業や事業継続における国や自治体から補助金や助成金を活用していますか?
給付金は「国・地方公共団体・民間団体など」から支出されるもので、原則的に返済不要であり、資金繰りの悪化を予防する策としても活用がおすすめです。
支援金には従業員に支払う休業手当などの一部を助成する「雇用調整助成金」やITツールの費用を補助する「IT導入補助金」などさまざまな種類があります。
しかし、申請しないことには利用することができません。そのため、飲食店経営者は常に補助金や助成金などの情報について把握しておくと良いでしょう。
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この記事では、飲食店経営の改善についてご紹介しました。
飲食業界の廃業率は高く、長く愛される店舗を作るのは決して簡単ではありません。しかし、原因をきちんと解明して適切な改善策を実施することで安定経営は叶えられます。
売上・利益・資金繰りを把握し、管理して継続的な飲食店経営につながる改善をしていきましょう!