開業資金の借り方を知ろう

融資

2020/07/15

開業資金の借り方を知ろう

0

LineLine

日本政策金融公庫のここ10年のデータによると、開業にあたって必要な資金の平均は1,000万円~1,200万円で推移しています。

自己資金でこれだけの金額を準備できる方は、一握りでしょう。自己資金で賄えない方は、誰かから借りてくる必要があります。

親類や友人から借りる場合には、今までのお付き合いによる信頼関係がものを言いますが、金融機関から借り入れる場合には、そうはいきません。

 

融資審査の概要については、融資の審査について知ろうを参照していただき、今回は開業資金についての注意点等をお話しさせていただきます。

 

独立開業する際に、一番のハードルは開業資金の調達だと思います。あらためて説明するまでもありませんが、飲食店の開業には物件取得費や店舗造作費などに数百万円単位の投資が必要となります。

ところが、外食経験者であっても、具体的に開業資金がどれだけ必要になるかを認識していない人が意外と多いのです。

業態開発などの経験者であれば、店づくりを一から手掛け、そこでどういったコストが発生するかを認識する機会がありますが、現場経験は非常に豊かな方でも出店に直接携わったことがない方は多くいらっしゃいます。

『飲食店の開業について』の内容もしっかり身に着けて、開業資金の調達に臨んでください。

 

開業資金を算出しよう

開業資金の見積もる際には、次の資金の3つをそれぞれ見積もり、合計を算出してください。

 

・物件取得費

 お店を借りるために、不動産オーナーや不動産業者に支払う費用(保証金・仲介手数料等)

・店舗造作費

 借りたお店を店舗にするために支払う費用(内装工事費・厨房設備代・看板・器具備品等)

・運転資金

 店舗の運営に必要な費用(仕入代金・人件費・販売促進費・水道光熱費等)

 

ここでのポイントは、必ず“運転資金”を見積もり、開業資金の中に入れて考えることです。

 

売上はほぼ現金でもらい、仕入代金や人件費は後でまとめて支払うという通常の飲食店のビジネスモデルの場合、運転資金は必要ありません。

しかし開業時には、想定よりも売上高の増加のペースが遅い、開業時に予定より費用が掛かってしまった等のお店が軌道に乗るまで想定外の現金が減る可能性が高いのです。

 

借入金額を減らしたいために、「物件取得費と店舗造作費だけを用意し資金不足になってしまったら運転資金を改めて借りる」とおっしゃる開業予定者がよくいらっしゃいますが、運転資金を改めて借りるのはかなり大変です。

元々飲食店は運転資金が必要ないビジネスモデルのため、金融機関が対応し難いためです。しかし開業時に運転資金まであせて借入する場合には借入のハードルは圧倒的に下がり、むしろ金融機関からは「よく考えている」と思われ、資金調達が円滑に進んでいきます。

 

物件取得費は不動産オーナーや不動産業者から金額の提示がありますし、店舗造作費は各業者から見積りを取るので金額はわかりやすいのですが、運転資金はいくら借りていいのかがわからないと思います。運転資金は1ヶ月に必要な経費を見積もり、その3ヶ月分を目安に借入していただくことをお勧めします。

 

日本政策金融公庫の融資制度を知ろう

日本政策金融公庫から開業資金を借りる際に一番一般的な融資制度は“新創業融資制度”です。これから開業する方や開業後税務申告を2期終えていない方が対象の、まさに開業資金用の融資制度です。

 

融資限度額は3,000万円までと開業資金に充てるためには十分な金額なのですが、開業資金総額の10分の1以上は自己資金が必要という条件があります。

つまり、自己資金の9倍までの融資しかできないということです。従前の制度ですと融資限度額は1,500万円、開業資金総額の3分の1以上の自己資金が必要だったため、現状はかなり緩和されましたが、まだ自己資金要件は残っています。

 

仮に開業資金総額が1,200万円だった場合には、120万円の自己資金がないと開業できないということです。

自己資金については預金通帳等を見て本当に自分で貯めたものなのかのチェックが入ります。本当は親から借りたお金を自己資金と偽ったりした場合には、今回だけではなく将来にわたって融資を受けられなくなることもありますので注意が必要です。

自己資金は「開業しよう!!」と思い立ってすぐに貯まるものではありません。自己資金が多ければ多いほど借入金額が少なくなるので、融資審査では有利に働きます。

それだけでなく自己資金の金額は“どれだけの期間、どれだけの覚悟をもって開業に備えてきたか”のモノサシとなります。開業を志している方は、経験と自己資金をコツコツ積み上げ、開業に臨むようにしてください。

 

また、開業者のうち女性・若者・シニアの方向けの“女性、若者/シニア起業家支援資金”という制度があります。融資限度額や金利に優遇があるため、女性、若者(公庫では35歳未満を若者としています)、シニア(公庫では55歳以上をシニアとしています)の方は、検討してみてはいかがでしょう。

 

開業資金の調達でもう一つご紹介したいのが“中小企業経営力強化資金”です。

認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら事業計画を作成し、所見等を書いてもらうことが前提となりますが、金利の優遇があったり、審査のスピードが速かったりとメリットがたくさんある制度です。

弊社が開業者のサポートをする場合には、必ずこの制度を利用しています。

融資申込から審査結果の連絡が来るまで、通常の融資制度に申し込んだ場合にかかる期間の半分以下の期間しかかからないため、非常に開業者にメリットがある制度だと思います。

 

 

人生の中で1,000万円ものお金を借りる機会はそうあるものではありません。今まで貯めてきたお金や今後貯まるだろうお金を賭けて融資を受けるわけですから、非常にリスクのあるチャレンジです。事前準備をしっかり行い、後悔のないように取り組んでください。

 

読んでいただいた皆さんの資金調達が順調にいくことを祈念しています。

0

LineLine

この記事のURLをコピー