融資
2020/07/15
金融機関から融資を受けるのにウルトラCはありません。コネなどを使って資金を融通してもらう方法はないか?そんな相談を受けることがよくありますが、金融機関を相手にするうえで「裏技」は存在しないのです。
資金調達で大事なのは的確な事前準備に取り組み、融資獲得の確度を高めることです。
開業者でいえば自己資金を積み立てながら、スキルを磨き、事業に必要な情報・データ収集に努める。本来得られるはずであった資金を準備不足のために逃してしまうといったことにならないよう、地道に、計画的に準備を進めることこそが、資金調達の一番の近道になるのです。
日本政策金融公庫にせよ、信金・信組にせよ、都市銀行にせよ、融資を申し込めば必ず窓口となる融資担当者がつきます。この融資担当者の役割を十分に理解することが、金融機関と良好な関係を築いていくうえで重要なポイントとなります。
融資担当者の業務は単に融資の審査だけにとどまりません。あまり知られていませんが、担当者は融資を申し込んだ方から受け取った事業計画等をもとに、書類を作り直しています。当然のことながら、担当者自身が融資の決定権を持っているわけではありません。
融資が受けられるように申し込みをした方に代わって担当者がその上司を説得するのですが、そのためには自行のフォーマットに沿った書類を作成しなければならないのです。
融資担当者が作成した書類は、課長→部長→副支店長→支店長(→本店審査部)などのチェックを受けます。それから、決済者の手元に届き、そこでようやく融資の決定がされます。融資額の大小によって決済者が変わりますが、その手続きの流れはすべての金融機関で共通しています。
そして、融資担当者はこの書類づくりに、一つの案件だけで半日近くもの時間を費やしています。書類に不備があれば上司の承認はもらえませんから、データに不足などがあった場合には、資料の再提出を求め訂正する手間も加わります。
適切な各計算書類を準備して融資の申込に臨み、そうした担当者の負担を少しでも軽減してあげる。そうすれば担当者の心証がよくなるだけでなく、申込から決済までの期間を大幅に短縮することができるのです。
また、融資担当者は数値のみを見ていると思われがちですが、融資を申し込む人の人間性もしっかりとチェックしています。約束の時間に遅刻するのはご法度。態度が横柄だったり、意見がコロコロと変わる、消極的、目を見て話さないなど、マイナス点は申し送りされ、融資の判断に多少なりとも影響するので注意が必要です。
逆に担当者にもよりますが、開業支援などに前向きな金融機関には「個人事業主、零細・中小企業を応援したい」と心から考えている人が多くいます。書類がしっかりと整っていることが前提になりますが、意欲ある開業希望者には積極的に相談に乗ってくれるので、自信をもって融資面談に臨むようにしましょう。
金融機関が融資の申込を受けた際に、貸出をするかしないかの判断は次の2つの着目点に基づいて行われます。
借りたお金を何に使うのか
きちんと返済できるのか
この2つの着目点は金融機関独自のものではありません。
皆さんが親類や友人から「お金を貸してほしい」と言われたら聞くだろう内容と何ら変わりはないのです。この2つの着目点を明確にした事業計画を作り、融資の申込の際に持参することが資金調達時のセオリーとなります。
借りたお金を何に使うのか。金融機関用語では”資金使途”といわれ、大きく設備資金と運転資金にわかれます。設備資金とは新店を出す際の保証金や内装工事代金、厨房設備購入代金などがこれにあたります。新店だけでなく既存店のリニューアル費用なども設備資金です。
これに対し、運転資金は仕入代金や人件費、家賃等の経費の支払いに充てるための資金です。原則的には設備資金か運転資金かで金融機関が融資の審査をする際の審査方法は異なっていますが、融資の受けやすさが変わるわけではありません。
しかしながら、飲食店では大半が現金売上で在庫も多くは必要としないビジネスモデルのため、運転資金は必要としない業種です。開業時や新店準備以外での運転資金は赤字補填と考えられるため、運転資金の借入には一定の説明が必要となってきます。対して設備資金は業者の見積りと新店OPENによる効果等の説明ができれば大丈夫です。
きちんと返済ができるのか。金融機関用語では“弁済の可能性”と難しい表現をしますが、お金を貸す際にこれを知りたいのは誰でも同じでしょう。借りたお金を使うことでどのような効果があり、どれだけの収益を生むので返済が可能です。と事業計画等を使って説明できるように準備しましょう。
融資を受ける際には必ず金融機関の担当者との面談が必要です。開業者の方の多くは、面談で何を話したらいいのか?と非常にナーバスになってしまいます。
融資担当者と話す際には“お店のファンになってもらうようにプレゼンテーションする”と思って、面談に臨んでください。融資担当者も飲食店からみれば消費者のひとりです。「こんなお店ができたら、私も行きたいなぁ」と思ってくれれば、稟議書にも熱がこもりますし、対応にも力を入れてくれるはずです。
読んでいただいた皆さんの資金調達が順調にいくことを祈念しています。