飲食店の現金管理方法を徹底解説|記帳・釣銭・締め作業の正しいやり方

経営

2025/09/25

飲食店の現金管理方法を徹底解説|記帳・釣銭・締め作業の正しいやり方

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飲食店では現金管理が欠かせませんが、以下のような悩みによって対応が後回しになっている方も少なくありません。

「締め作業や帳簿のズレが多く、税務リスクが気になる」
「人手不足で現金管理の属人化を防げない」

そこで今回は、飲食店の現金管理方法をわかりやすく解説します。

記帳・釣銭準備・締め作業の基本や、よくある現金トラブルの原因、現金管理をラクにする方法を紹介しています。

また、税務調査のチェックポイントや、会計ソフト・税理士との連携方法も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

飲食店における現金管理の重要性とは?

飲食店のお金現金を扱う飲食店では、日々の現金残高と帳簿を一致させることが経営の安定に直結します。少しのズレでも税務調査や資金繰りに影響するため、ミスや不正の発生を前提とした対策が欠かせません。

残高と帳簿の整合性を保てば金融機関からの信頼性も高まり、資金調達のハードルを下げられます。

なぜ「現金管理」が飲食店で特に重要なのか

飲食業は他業種に比べて現金取引の割合が高く、その場で現金を扱う頻度も多いため、管理ミスが起きやすい構造です。会計ごとの記録や釣銭準備が曖昧になると、正確な売上把握が困難になり、利益計算にも影響します。

レジ操作から締め作業までをルール化し、誰が担当してもズレが起きにくい仕組みをつくりましょう。

現金管理のミスが招くリスク(赤字・盗難・税務調査など)

記帳漏れや証憑の保存不備があると実際の売上との誤差が生じ、赤字を招く一因となります。また、日々の確認体制が緩い店舗では、従業員による着服や持ち出しといったリスクもゼロとは言い切れません。

帳簿と現金残に継続的な差額がある場合、税務調査で売上隠しとみなされ、重加算税や調査対象拡大につながるおそれがあります。

レジ締めや帳簿記録のズレが与える影響

締め作業後に帳簿と実際の現金残が一致しないと、差額の原因を特定するために追加対応が必要になります。小さなズレでも頻発すると、経費計上や資金繰りの精度が下がり、経営判断に影響を及ぼします。

信頼性の低い帳簿は、融資審査や税務調査でも不利に働くため、ズレの早期把握と修正が欠かせません。

現金管理の基本フロー|開店前〜閉店後まで

現金管理の基本は、開店から閉店までの一連の流れをルール化し、属人性を排除することです。現金過不足の原因を早期に特定し、帳簿と残高を一致させるためには、日々の管理手順を標準化する必要があります。

人手不足の飲食店でも運用できるよう、確認項目や記録方法をシンプルに統一し、作業時間の短縮を目指すのがポイント。飲食店の現金管理方法として、再現性のあるオペレーション設計が安定運営の土台になります。

開店準備:釣銭の用意と記録

釣銭準備では、金種別に所定額をレジトレーへ配分し、その内容を「金種表」に記録して責任者が署名します。金額の誤差や記録ミスを防ぐには、金種ごとの一覧表を用いて事前に確認し、開始金額をチェックリストに記録する方法がおすすめです。

視覚的に全体を把握できるようにしておくと、開始残高や釣銭準備のミスを防ぎやすくなります。釣銭の補充や両替でレジから現金を出す場合は、出庫伝票をその都度起票し、残高管理と連動させましょう。

また、予備の釣銭は金庫で保管し、鍵の管理者と入退室の権限者を分けてセキュリティを確保してください。

営業中:売上・支出の都度メモ or デジタル入力

営業中は現金売上を会計ごとにレジに登録し、支出が発生した場合は出金伝票を記録して金額の移動を明確にします。

特に、現金での立替払いや釣銭補充は、時間・担当・用途をモバイルツールなどで即時記録し、後からの追跡が可能な状態にしておきましょう。また、キャッシュレス決済による売上は現金とは別で管理し、入金口座の情報と帳簿記録を一元化することで混在リスクを防ぎます。

一連の流れを習慣化すれば、日々の帳簿残高と実際の現金に差が出にくくなります。

閉店作業:レジ締め・日報記入・金庫保管

閉店時は、レジの売上データと金種別の現金をカウントし、開始残高と当日の入出金記録を突き合わせて差額を確認します。

差異がある場合は、時間帯やレジ操作履歴、出金伝票の内容から原因を整理し、日報に記録して翌日の対応に備えることが欠かせません。売上金は金庫へ移動し、翌日の釣銭は金種ごとに袋に分けて準備し、金額と担当者名を記録しておくと管理がスムーズです。

金庫の施錠はもちろん、管理者の交代時には引継ぎ記録も残すようにすると、不正やミスを防ぎやすくなります。

飲食店でよくある現金トラブルと原因

現金管理のズレは、日々のオペレーションの小さな油断から発生し、損失や税務指摘につながります。ピーク時の混雑やスタッフ不足により、会計処理や記録が後回しになりやすく、確認不足が積み重なると差額が常態化します。

現場では日次の照合や証憑の記録・役割の分離を明文化し、誰がしても再現できる標準化された手順に落とし込みましょう。

売上金の紛失/釣銭過不足/会計ミス

現金管理で最も多いのは、釣銭準備や出金記録のミス、会計処理の混在による差額です。

金種表がなく履歴も残っていない状態では、補充タイミングや金額の根拠が不明となり、検証ができません。割引・返品・出金の操作が記録されていない場合や、ピーク時のレジ操作ミスによる重複会計も差額の要因になります。

出金にはレシート・伝票の両方を残し、レジデータと現金出納帳を日次で突き合わせて過不足を即時確認しましょう。また、電子マネーと現金を混同せず分けて処理し、レジ締め時は2名以上でカウントする体制が欠かせません。

従業員による着服・横領のリスク

現金処理や割引・返金などを1人のスタッフに集中させると、不正リスクが高まります。

レジ現金、値引きコード、出金操作などが自由にできる環境では、チェックが働かず、監督不在時に問題が発生しやすくなります。現金の操作と承認を分担し、売上取消・返金・値引きは必ず管理者の確認とログ記録をセットにしてください。

さらに、金庫やレジの暗証番号は役割ごとに分け、入退室の記録やカメラの設置状況も月次で見直すとよいでしょう。日報で差額が出た場合は、即時に原因調査を開始し、継続する場合は内部監査の対象にして重点的に確認します。

帳簿と実際の金額が合わない

帳簿と現金残高のズレは、記録の遅れや処理ミス、入力設定の不備が複合的に重なって発生します。

入力の後回し、立替金の精算忘れ、税率や端数の処理方法が統一されていないと、日々のズレが蓄積されていきます。レジ締め時には金種別で現金を実査し、証憑と出納帳を照らし合わせた上で、会計ソフトへの取り込みまで同日に完了させる必要があります。

また、差額が出た場合は、時間帯・操作担当・取引区分に分けて原因を記録し、再発防止策も明記しておきましょう。月末には棚卸と現金出納帳の突合をして、差異の発生傾向がないかを定期的に確認することが精度維持につながります。

現金管理をラクにする方法|ツール・ルール・担当制の導入

作業負担を減らしながらミスや不正を防ぐには、現金管理を属人化させず、仕組みでカバーする運用が必要です。

POSを導入して売上の自動記録を進め、日報や帳簿はクラウド化で一元管理し、管理の抜けや漏れを防ぎます。さらに、現金の受け渡しや承認を分業し、記録の透明性とチェックのしやすさを高めれば、締め作業の再現性も向上します。

飲食店の現金管理方法を改善したい現場では、ルール・ツール・担当分けの3本柱を整えましょう。

レジシステム(POS)活用による自動記録

POSシステムを活用すれば、現金売上や割引、返品処理をリアルタイムで記録でき、後からの照合作業が不要になります。取引ごとのログが残るため、現金出金も用途別に紐づけられ、差額の発生箇所を特定しやすくなるのでおすすめです。

日次でPOSデータを会計ソフトと連携させれば、帳簿作成の手間も省け、人的エラーも低減。また、電子帳簿保存法に準拠した形式で保存すれば、監査や税務調査時の対応負担も抑えられます。

デジタル日報・クラウド帳簿による記録の一元化

日報と帳簿をクラウドで管理することで、情報のバラつきを防ぎ、現金残高の整合性を高められます。

売上金額・金種表・出入金の伝票画像を日次でアップロードし、POSデータとの突合で差額の早期発見につなげましょう。会計ソフトと連携すれば、銀行入金やクレジット売上も自動で取り込まれ、現金と非現金の混在ミスを防げます。

さらに、タイムスタンプ付きの記録と検索機能を備えれば、証憑の紛失や再提出のリスクも抑制可能です。

スタッフごとの金銭責任・権限分離ルールの導入

現金管理で発生しがちな人的ミスや不正は、担当を分けるだけで防ぎやすくなります。

売上回収・出金承認・金庫管理を別のスタッフに割り振り、売上取消や返金は管理者の承認とログ記録をセットで実施します。暗証番号やレジキーなどのアクセス管理は定期的に更新し、入退室の履歴は日報で確認できるようにしましょう。

また、現金差額が出た際は、担当者・時間・取引種別で切り分け、調査表にまとめて月次で内部チェックする体制を整えるのがおすすめです。

税務・経理上の対応|帳簿と現金残高の一致が重要

お金の計算帳簿と実際の現金が一致している状態を日々維持することが、税務リスクを回避し、経営判断の精度を高める基本です。売上や費用を正しく計上できなければ、税務調査での説明や資金繰りの見通しに影響が出ます。

現金実査と帳簿照合は同日に完了させ、差額が発生した場合はすぐに原因を特定して、是正記録まで残しましょう。

帳簿と現金残高を日々照合すべき理由

日次での照合を徹底すれば、記録の精度を保ち、帳簿と現金のズレを早期に修正できます。

まず、記帳義務に対応するには、入出金ごとの証憑を整理し、内容と照らし合わせながら会計処理を完結させる必要があります。

次に、差額は時間が経過すると原因が特定しづらくなるため、レジ締め・金種実査・証憑確認を営業当日に済ませるのが理想。継続して照合記録を残せば、金融機関や税務調査時に信頼できるデータとして評価され、説明負担の軽減にもつながります。

税務調査時に問題となる「現金差額」

現金差額は、帳簿記録と実残にズレがあることを示す警告であり、税務調査では重点的に確認される対象です。

売上計上漏れ、出金の証憑不備、返品や割引の処理ミスがあると、実地調査時に不明瞭な金銭の動きとして指摘されるおそれがあります。差額が生じた場合は、発生時刻・担当者・取引種別を分類し、是正仕訳と再発防止策を日報や記録シートにまとめておきましょう。

さらに、同様の差額が複数回発生している場合は、月次の現金棚卸と出納帳の突合で見直しを実施する必要があります。

会計ソフトや税理士との連携ポイント

現金管理の精度を高めるには、POSや会計ソフトとの連携を整え、日常的に税理士と情報共有する仕組みが必要です。

売上・銀行明細・キャッシュレス決済は会計ソフトへ連携し、現金と非現金を明確に区分した状態で照合処理しましょう。また、記帳方法や証憑保存のルールは、税理士と事前にすり合わせておけば、電子帳簿保存法への対応もスムーズになります。

飲食店に特化した「FOODGYM」では、記帳代行やfreeeを活用した業務効率化、試算表・店舗別損益の月次レポートもサポートされており、事務作業の負担軽減に役立ちます。

飲食店に強い税理士へのご相談

飲食店の現金管理に関するQ&A

飲食店の現金管理は、属人性を排除したルール整備と、再現性のある仕組みづくりが欠かせません。

人手不足の中でも安定運用できるよう、帳簿と実残の整合、金銭権限の分離、現金とキャッシュレスの区分管理を明確にする必要があります。さらに、日次照合や証憑の保存基準も具体化し、誰が担当しても一定の品質で管理できる運用体制が求められます。

ここでは、飲食店の現金管理方法に関する代表的な疑問に対し、現場実装に耐えるルールとして回答します。

Q1:現金管理を従業員に任せても大丈夫?

大丈夫です。ただ、従業員に現金管理を任せる場合は、ダブルチェックと役割分担を前提にした体制が必要です。

会計入力者と締め確認者を別とし、売上取消や返金は必ず管理者が承認し、操作ログを残します。金種表と出入金伝票は日次で照合し、差額が出た場合は時刻・担当・取引種別で切り分け、是正内容を記録に残す運用を定着させましょう。

属人的な運用を避けるには、チェックポイントの一覧化と役割ごとの作業手順を明示するのがおすすめです。

Q2:金庫は店舗に置いていい?

金庫の店舗設置は可能ですが、防犯と管理のルールを明確に定めておく必要があります。

設置場所は死角を避け、施錠設備の等級や開閉権限の分離、入退室の記録方法まで定めておきます。夜間保管する場合は売上金を分散するか、当日中に入金処理して、残置するなら金額上限と封の方法を決めましょう。

鍵や暗証番号の定期変更、防犯カメラの稼働点検、現金搬送時の2名体制と経路固定なども併せて実施します。

Q3:現金過不足が多いのはなぜ?

現金過不足が頻発する背景には、手順の曖昧さと記録の一貫性不足が挙げられます。

具体的には、釣銭準備の金種不足、出金伝票の記録漏れ、非現金売上の現金混入、返金処理の誤りなどが主因です。防止策として、金種表の作成、出入金の都度記録、現金と非現金の区分管理、締め時の金種実査と日報突合を習慣化してください。

差額が出た場合は原因を時刻・担当・取引種別で分類し、再発防止策とあわせて翌日の開始残高に反映する運用を徹底します。

Q4:税務調査では現金管理も見られる?

税務調査では、帳簿と実際の現金残の一致や、記録精度が重点的に確認されます。

売上計上漏れや証憑不備があると、重加算税や追徴の対象になるリスクがあるため、日次の突合と差額の是正記録が必要です。差額が出た場合は、その原因(時刻・取引種別・担当)を記録し、仕訳調整と再発防止策まで文書に残します。

電子帳簿保存法に対応した保存形式と検索性も確保し、調査時に即応できる体制を整えましょう。

Q5:現金管理とクレカ売上・電子マネーは別管理でOK?

現金とキャッシュレス売上は、一元管理が推奨されます。

POSから会計ソフトへ連携し、現金・カード・電子マネーの種別ごとに売上と入金の照合ができる仕組みを整えましょう。別管理する場合でも、区分記録・入金予定日とのズレの把握・振込手数料の処理ルールなどを明文化し、毎日確認する運用が必要です。

混在を防ぎ、締切日時と照合タイミングを固定化すれば、差額の早期発見と修正が可能になります。

まとめ|飲食店経営の安定は現金管理の徹底から

本記事では、飲食店の現金管理方法に関する実務のポイントや注意点を解説してきました。

現金管理は、経理だけでなく店舗全体の信頼性や資金繰りにも影響する重要な業務です。属人化を避け、ルールとツールで標準化していくことが、税務対応や経営改善にもつながります。

【現金管理を安定させるためのポイント】

  • ●日々の売上・釣銭・帳簿記録をルール化し、人的ミスを防ぐ
  • ●レジや会計ソフトなどのツールを活用して業務を省力化する
  • ●税理士との連携や第三者チェックで信頼性を高める

現場の業務に追われていても、手順さえ整えば現金管理は十分に回せます。まずはできるところから着手してみてください。税理士との連携により、現金管理以外の経営改善にもつなげましょう。

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