経営
2025/11/09
これから飲食店を開業しようと考えている方にとって、流行りやトレンドは必ず抑えておきたいポイントです。とくに飲食業界は流行り廃りが激しく、1年間で大きなブームとなる商品もあれば、ロングセラーとなる商品もあります。
原材料価格の高騰や人手不足、環境意識の高まりなど、社会構造の変化が加速する中で、消費者の「食」に対する価値観も大きく変化しています。
近年の社会の変化から、流行る飲食店の形態を見極めることもできるでしょう。
「これから流行る飲食店の特徴は?」
「これから流行る飲食店の具体的なジャンルとは?」
「これから伸びる飲食店ってどんなお店?」
そこでこの記事では、これから流行る飲食店の特徴・業態・傾向を徹底紹介します!上記の疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
2026年の飲食業界は、単なる「味」や「健康」だけではなく、多様性・感性・文化的価値が新たな軸になると予測されています。
グローバル調査会社 ミンテル(Mintel) の最新レポートによると、食品・飲料の世界的トレンドは次の3つのキーワードで整理されました。
多様な食の選択肢、懐かしさを再解釈したメニュー、そして五感で楽しむ体験型店舗が求められるようになっています。
引用:2026年: グローバル食品・飲料トレンド予測 | ミンテルジャパン
これまで、消費者が飲食店に求めるものといえば「栄養バランス」や「効率性」などでしたが、2026年は一人ひとりに合う食体験が重視されます。
アレルギー・宗教・ライフスタイルに応じて選べる“パーソナライズドメニュー”が支持を集め、AIが提案する食事プランなども登場しています。
飲食店には、誰もが安心して食を楽しめる「食の多様性」への対応が求められます。
AIの普及やDX化がすさまじい速度で進む現代、人々は懐かしさや人の手作りに強く心の安らぎを感じるようになっています。
昭和レトロ喫茶や家庭料理の再現、発酵・漬物などの伝統食材が見直され、単なるブームではなく、「文化を守り、未来に伝える」食の在り方として再評価されるでしょう。
飲食店では、温かみのある空間やクラシックメニューを現代風にアレンジすることが、共感を生む鍵となります。
ドバイチョコやダーティソーダが2025年に話題となったように、2026年も引き続き「感性の満足度」が高い食品がトレンドとなりやすいでしょう。
これから流行る飲食店を狙うなら、「味+体験」の融合を重視することです。視覚・香り・音・触感を活用し、五感を刺激する飲食空間が人気を集めます。
単なる美味しいではなく、いかに記憶に残る体験を提供するか、それが店舗ブランディングの軸になります。
飲食業界では「タピオカ」「バスクチーズケーキ」など、食品自体のブームが注目されがちですが、飲食店の形態にも目を向けてみましょう。
コロナ禍によってテイクアウトやデリバリーの需要が急増したように、これから流行る飲食店の形態を見極めることで、多くの顧客獲得に繋がります。
これから流行る飲食店の特徴として、まず挙げられるのが「専門店」です。専門店は他店との差別化が図れる、コンセプトがお客さんに伝えやすいなどのメリットがあります。
以前から専門店は存在しているなか、どうしてこれから流行るといえるのかというと、デリバリーやテイクアウトの需要が増加・安定してきたからです。
せっかく唐揚げをテイクアウトするなら、幅広いメニューを取り扱っている飲食店よりも唐揚げ専門店から注文したくなりませんか?この心理を利用できる専門店は、これから流行る飲食店の大きな特徴となるでしょう。
専門店化することで「◯◯専門店」という引きの強い看板を手にし、集客がしやすくなります。強みが明確にある専門店はファンもつきやすいでしょう。
おうち時間が定着している現在、以前と比べると外食機会が減少したことは明らかです。そのため、1度の外食に高い付加価値を求める傾向にあり、高価格帯レストランの流行が予想されます。
外食に特別感を感じる方が増えている傾向にあるため、会員制・紹介制を採用した店舗も人気がでやすいでしょう。
会員制・紹介制のレストランは固定ファンを獲得しやすく、不特定多数の集客が困難になりつつある今、リピーターの多い安定した飲食店となることが期待できます。
また、高齢化が進むなか、好みの食べ物を少量ずつ楽しみたいという需要が増加しています。
これに対応する飲食店として、会員制や紹介制のような、少々高価でもそのニーズに応える形態や提供スタイルが注目を集めています。
外食への高級志向を持つ方をターゲットにしない場合は、低価格の大手チェーンに注目することをおすすめします。
外食への特別感が生まれやすくなったものの、低価格で手の出しやすい大手チェーンはいまや生活の1部となり、社会に深く浸透しているため、今度も廃れることなく多くの人から支持され続けるでしょう。
ファミリー層やサラリーマンが気軽に利用できる外食としてはもちろん、テイクアウト需要も抑え、さらにはリーズナブルで手間もかかりません。
飲食店は個人経営だけでなく、フランチャイズの加盟店として開業する方法も選択肢としてあることを覚えておきましょう。
ここ1.2年日本でも脚光を浴びており、これから流行る飲食店として代表的なのは「ファストカジュアル」です。
ファストカジュアルとはファストフードとファミリーレストランの中間にあたる飲食スタイルで、双方のメリットをかね備えている特徴を持ちます。
回転率が高く、多くの客数を確保できるファストフード、客単価が比較的高いファミリーレストランを掛け合わせた飲食店の形態です。
ファストカジュアルが誕生したのはアメリカ合衆国で、「多少値段が高くてもいいから、体によいものが食べたい」というニーズが高まる背景から注目され始めました。
労働力不足が深刻化する日本において、セルフサービスと質の高さの要素を両方満たすファストカジュアル店は、これから流行る飲食店になるでしょう。
また、ファストカジュアル店は、キッチンオペレーションが非常にシンプルであり、セルフサービスが一般的なため、人手不足の課題に対処しやすい特徴もあります。
地域に根ざしたローカル型の飲食店は、昔から安定的な人気を持つ業態です。全国展開ではなく、地域循環型の経営モデルを重視し、地域の人に愛されながら長く運営される特徴を持ちます。
どうして地域密着型の飲食店がこれから流行るといわれているのか、それは「産地の見える安心感」や「新鮮で地元らしい食体験」を求める声が増えているからです。
代表的な地域密着型の飲食店は、地元農家と直接取引を行う地産地消レストランなどがあります。
こうした店舗は口コミやリピーターを通じてファンが育ちやすく、広告に頼らずとも安定した集客を実現できる点が大きな魅力です。
また、自治体や観光協会とのコラボレーションを通じて、地域ブランドを高める動きも広がっています。さらに、近年では観光との相乗効果により「地域文化を伝える食体験」としての価値も高まっています。
地域の人・食・文化をつなぐ拠点として、ローカル業態の存在感は今後いっそう強まっていくでしょう。
毎年さまざまなスイーツやグルメブームが起こるなか、2026年はどのような食品がトレンドとなるのでしょうか。社会の傾向やニーズを分析し、これから流行る飲食店のメニューを調査しました。
近年の健康志向の高まりの影響を受け、2025年も代替食品がトレンドとなりました。
2026年も引き続き「グルテンフリー」「大豆ミート」「白砂糖不使用」などのワードを全面的に出した商品が、ますます広がりをみせるでしょう。
「健康で美味しく」を満たす飲食店が脚光を浴びる年になると予想されます。
たとえば、小麦粉の代わりに米粉を利用した「米粉パンケーキ」はグルテンを避けるだけでなく、海外輸入に頼りがちな小麦粉の代わりに国内の米粉を利用することもできます。それだけで「グルテンフリー」「国内産」という魅力を持ち、かつ米粉のモチモチとした食感も強みになるでしょう。
また、イタリアンの飲食店のパスタに豆ヌードルの選択肢も含めることで、普通のパスタが食べたい方と健康的にパスタを楽しみたい方、どちらの顧客も獲得できます。
いまや昭和や平成は「古い」というネガティブなものではなく「レトロ」という魅力的な要素を持つものになりました。とくに若い女性にとって、懐かしい食べ物や雰囲気が新鮮で可愛く映っています。
2026年もレトロを感じる食べ物や、かつて流行ったスイーツが再ブレイクする可能性が高いです。2022年にカヌレが再流行した例もあるため、昭和や平成にはやった食べ物に注目すると良いでしょう。
レトロメニューを提供する際には、レトロな食器で提供したり、メロンソーダやミルクセーキなどの懐かしいドリンクもセットで出すなど、写真を見た方に魅力が伝わるかどうかも重要です。
「若者のお酒離れ」という時代の変化は外食シーンにも徐々に広がっています。Z世代やミレニアル世代を中心に、お酒がなくても楽しめる飲食体験を求める声が拡大中です。
早くも登場しているのがノンアルカクテル専門店や、低アルコールワイン・発酵ドリンクを提供する飲食店。
大手メーカーもノンアル市場への投資を強めており、飲まない層も主役になれる時代が来ています。飲食店としても、アルコールに頼らない“雰囲気づくり”や“味覚体験の提案”が差別化のカギとなります。
ノンアル・低アル業態は、健康志向・ウェルネス・SNS発信の三拍子が揃う、今後最注目の分野です。
ここまでは、これから流行る飲食店の特徴やジャンルについてご紹介しました。最後に、これから伸びる飲食店の傾向をご紹介します。以下のポイントを意識したお店づくりを心がけましょう。
「食のトレンド」は、InstagramやTikTokなどのSNSで話題になり、時には広まることがあります。近年では、Z世代を含む若い世代を中心に、SNSとの相性が良い飲食店が人気を集めている傾向にあります。
現代の店舗運営においては、SNSが無視できない要素です。お店からの発信はもちろん重要ですが、お客様が投稿したメニューの画像や動画が拡散し、お店が大いに注目を浴びることもあるでしょう。
SNS時代の特徴として、バズりそうなメニューの開発だけでなく、SNSで発信されることを前提としたコンセプトを持つお店が増えています。
SNSとの相性の良さは、成長を遂げるお店にとって欠かせないポイントと言えるでしょう。
コロナ禍により大きくニーズが増加したデリバリー需要ですが、2025年も店舗でのピックアップ需要が拡大しました。
なぜなら飲食店のメニュー価格だけでなく、配達料の値上げも続いており、デリバリーは消費者の費用負担が大きくなるからです。
飲食店を開業する際には、デリバリーサービスだけでなく、店舗で直接受け取れるテイクアウトも必ずおこないましょう。
そこに「テイクアウト50円引き」や「容器ご持参の方5%OFF」など、お得感が加えられると魅力も大きく感じられます。
「外食は複数人で行くもの」という考えはなくなりつつあり、ひとりで食べる「孤食」ニーズが拡大しています。現在、単独世帯(ひとり世帯)が日本全体の約35%ほどを占めており、飲食店にもおひとりさまに寄り添ったサービス提供が求められるでしょう。
1人焼肉、1人鍋などのおひとりさまメニューをそろえるほか、1人でも入店しやすい雰囲気づくりをおこなうことが重要です。
かつては「環境配慮」と飲食店が結びつくイメージは薄かったかもしれません。しかし今や、サステナブルな姿勢は飲食店選びの新たな判断軸となっている価値観です。
2026年は、フードロス削減・再利用容器・地産地消といった取り組みを前面に出す店舗が支持をさらに拡大します。
単に「味が良い」だけではなく、「どんな想いでつくられているか」「環境への配慮があるか」といったストーリー性や社会的姿勢が重視されるようになりました。
そのため、環境配慮型の飲食店はSNS上でも共感を呼びやすく、結果としてブランド力の向上につながります。
「おいしい」にプラスして「やさしい」があることがお店の武器となる今、サステナブル経営は“トレンド”ではなく“信頼を得る条件”になりつつあります。
「体験価値」の重要性が際立つ中「今後の飲食店のトレンドはこれ!」と完全に予測するのは難しいと考えます。
新しいトレンドを語るには「その店」ならではの、他では味わえない「体験価値」が鍵となるでしょう。食の製造技術や流通の進化が進むなか、特定の店に足を運ばなければ感じられない楽しさや満足感こそが、「体験価値」の真髄です。
この価値を構築する要素は、空間、料理人の技術、そしてホスピタリティ(接客力)であると言えます。
飲食店の価値は、主に以下の6つに分けられます。その中から「自分の飲食店に訪れる価値」を見つけ、磨くことが大切です。
| メニュー関連 | レシピ(焼き方・作りたて・手作り)、盛り付け方、内容など |
|---|---|
| 食材 | 食材の質、調達ルート、産地、グレードなど |
| 物語・背景 | 店のこだわり、ブランド力、料理人の経歴、社会への貢献など |
| 空間 | 店舗内装へのこだわり、統一感、設備、眺望など |
| 接客 | その時に合わせたサービス、接客へのこだわりなど |
| 提供方法 | イートイン、テイクアウト、デリバリー、ミールキットなどの方法への工夫 |
激化する競争の中で、これから流行る飲食店には、従来の枠にとらわれない革新的なアプローチが求められています。
ただ美味しい料理を提供するだけでは不十分で、顧客体験を最大化し、持続可能な経営基盤を築くための戦略が不可欠です。では、具体的にどのようなポイントが重要なのでしょうか?
成功の鍵を握る5つの要素、「パーソナライゼーション」「サステナビリティ」「エンタメ性」「デジタル化」「コミュニティ」に注目し、これから流行る飲食店のあり方の例をご紹介します。
近年、顧客一人ひとりの好みに合わせたサービス提供「パーソナライゼーション」が注目されています。
飲食業界においても、顧客データやAIを活用し、個別最適化されたメニュー提案やサービス展開を行うことで、顧客満足度向上とリピート率向上に繋げることが期待されます。
例えば、過去の注文履歴やアレルギー情報を基にしたおすすめメニューの提案、誕生日特典の提供などは、顧客に特別な体験を提供し、ロイヤルカスタマー獲得に貢献するでしょう。
また、モバイルオーダーやテーブルオーダーシステムを導入することで、顧客の待ち時間を削減し、スムーズな注文を実現することもパーソナライゼーションの一つと言えるでしょう。
環境問題への意識の高まりから、サステナビリティを意識した飲食店経営も重要性を増しています。
フードロス削減、地産地消、環境に配慮した包装資材の利用など、具体的な取り組みを行うことで、環境意識の高い消費者からの支持を集めることができます。
例えば、余剰食材を活用したメニュー開発、規格外野菜の積極的な使用、生分解性容器の導入などは、サステナビリティへの取り組みをアピールするだけでなく、コスト削減にも繋がる可能性があります。
また、サステナビリティへの取り組みを積極的に発信することで、企業イメージ向上にも貢献するでしょう。
飲食店は単に食事をする場所だけでなく、エンターテイメントを楽しむ場としての役割も求められています。
ユニークな内装、ライブイベントの開催、インタラクティブな仕掛けなどを導入することで、顧客に特別な体験を提供し、記憶に残る時間を演出することができるのです。
例えば、プロジェクションマッピングを使った演出、VR体験を取り入れたメニュー、有名シェフによる料理教室の開催などは、顧客の好奇心を刺激し、話題性を高める効果が期待できます。
エンタメ性を高めることで、SNSでの拡散も期待でき、集客力向上に繋がるでしょう。
飲食業界においても、デジタル技術の活用は不可欠です。
オンライン予約システム、モバイルオーダー、キャッシュレス決済、デリバリーサービス連携など、デジタル技術を駆使することで、顧客利便性の向上、業務効率化、データ分析による経営改善を実現できます。
例えば、AIを活用した需要予測システムを導入することで、食材の廃棄ロスを削減し、最適な仕入れ量を決定することができます。
また、顧客データ分析を通じて、人気メニューの把握や顧客層の特定を行い、効果的なマーケティング戦略を立てることも可能です。
デジタル技術を積極的に活用することで、競争優位性を高め、持続的な成長を実現できるでしょう。
顧客との繋がりを強化し、コミュニティを形成することは、長期的な繁栄に不可欠です。
顧客参加型のイベント開催、会員限定サービスの提供、SNSを通じた積極的なコミュニケーションなどを通じて、顧客とのエンゲージメントを高め、ロイヤルカスタマーの育成に繋げましょう。
例えば、料理教室やワークショップの開催、会員限定の先行予約や割引特典の提供、顧客同士の交流を促進するイベントの実施などは、顧客ロイヤリティを高める効果が期待できます。
また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に繋げることも重要です。
食のトレンドは年々多様化し、「成功する店」「続く店」には共通する法則があります。ここでは、これからの飲食店経営に役立つヒントをQ&A形式で整理しました。
2026年の飲食業界は、「多様性・レトロ・体験型」がキーワードです。
一人ひとりに合った食の提供(食のDEI)、懐かしさを再解釈したレトロブーム、そして五感で楽しむ体験型レストランが注目されます。AIやサステナブルの要素を組み合わせた店舗が人気を集めるでしょう。
今後伸びるチェーン店の特徴は、低価格×高品質×効率化です。
ファストカジュアルのように、手軽さとクオリティを両立しつつ、セルフオーダーやキャッシュレスなど省人化オペレーションを導入する店舗が人気を集めています。
また、健康志向やエシカル志向に対応したブランド展開も加速中です。
シンクロ・フード(飲食店.COM)の2025年調査では、比較的閉店率が高い傾向にある業態は「お弁当・惣菜・デリ」「そば・うどん」「ラーメン」「カフェ」「テイクアウト」などです。
ただし、これはあくまで全体的な傾向であり、立地選定・差別化・固定客づくりなどに成功すれば、長く繁盛している店舗も少なくありません。
近年、味よりも「話題性」や「体験価値」で人気を得る店が増えています。SNS映えする料理や独自の世界観、会員制などの希少性マーケティングが人を集める要因です。
ただし、話題性だけでは長続きせず、最終的には“味の満足度”がリピートの決め手になります。
2026年の飲食店経営では、“流行を追う”よりも“社会や地域と共に続く”姿勢が鍵を握ります。
消費者の舌も洗練されるなかで「あの店に行こう!」という「体験価値」が重要性を増しています。特定の店でしか得られない体験や忘れがたい満足感や独自性を提供する店が繁盛するでしょう。
飲食店のビジネスモデルの変化には、若い世代やSNS上のトレンドなどが大きな要因として挙げられます。
特に、「食のトレンド」が飲食経営に与える影響は著しく、これが新しいビジネスモデルの構築を促進しています。
また、飲食店の成功には、顧客ニーズの変化を常に捉え、柔軟に対応していくことが重要です。
市場動向や競合他社の分析、顧客の声への真摯な対応などを通じて、常に進化し続けることが、2026年以降も繁盛する飲食店の鍵となるでしょう。