経営
2025/08/07
これから飲食店の経営を始めようとしている方がどのようにして売上予測を立てるか調べた時に「回転率」という聞きなれない言葉が出てくるのではないでしょうか?しかし、この回転率が売上につながるといっても過言ではありません。
今回の記事ではこれから飲食店の経営を考えている方、開業したけど思うように売上が伸びず悩んでいる方に役立つ情報を紹介します。
「飲食店における回転率って何?」
「満席率(客席稼働率)って何?」
「回転率を上げるにはどうしたら良いの?」
飲食店の開業を検討している方が持つ疑問を本記事で解説していきます。回転率について正しく理解し、ポイントを押さえて売上を上げましょう!
売上につながる回転率について、回転率の意味とどれくらいを目安にすれば良いか解説していきます。
飲食店の回転率とは、簡単に言うと「お客様が1日に何回入れ替わったか」を表す指標です。以下が回転率を求める計算式です。
回転率=1日の来店客数÷全席数
例えば、全部で40席あるお店で1日の来客数が80人だった場合、80÷40=2回転となります。回転率と言うとパーセンテージで表すのではないかと思う方もいるかもしれませんが、飲食業界では「1日に○回転」と表現します。
またここで注意したいのは分母が全席数ということです。空席(4人席に2人のみの利用)があれば満席率(客席稼働率)は下がってしまいます。4人席に4人で利用してもらうと満席率も100%となり売上につながります。次の項目ではこの満席率(客席稼働率)について説明していきます。
満席率とは、満席時に全客席のうち、何席埋まっているかのことで客席稼働率とも言われています。簡単に言うと「どれだけ多くのお客様が席に座るか」を表す指標です。
40席あるお店で全ての席(40席)が丸々埋まるケースはほぼありません。以下が満席率(客席稼働率)を出す計算式です。
満席率(%)=客数÷席数×100
4人席に2人を案内したら50%の満席率となります。全席40席のお店が満席になった時に客席利用数が30人の場合は、満席率は75%となります。
ここまでで回転率と満席率(客席稼働率)について説明しましたが、満席率によってどれくらい売上が変わってくるのかを試しに考えてみましょう。
今回はランチタイムで以下の条件で計算します。ランチタイムとあえて記載したのは、ランチタイム、ディナータイムがあるお店では客単価(1人のお客様が平均して使う金額)や回転率をランチとディナーで分けて計算して、それぞれを足して1日の売上を出すためです。
平均客単価1,000円、席数40席、回転率2回として、満席率(客席稼働率)を50%と75%で考えてみます。
満席率(客席稼働率)50%
1,000円(客単価)×40席(全席数)×50%(満席率)×2回(回転率)=40,000円
満席率(客席稼働率)75%
1,000円(客単価)×40席(全席数)×75%(満席率)×2回(回転率)=60,000円
満席率50%と75%と少し極端な例となってしまいましたが、満席率によって売上に20,000円の差が出てくるため、できる限り空席は減らすように心がけた方が良いと言えます。
一般的に飲食店の満席率の平均は60~70%と言われています。もし満席率が低い場合はテーブルに座れる人数を見直しましょう。
2人客が多い場合、4人テーブルを少なくして2人用テーブルを増やすなど空席がなくなるようにする工夫が必要です。また2人テーブルはくっつけて4人テーブルに出来たりもするのでテーブルの配置を考える際にそこも考慮するようにしてください。
またカウンターがあるお店の場合、1人や2人のお客様を積極的にカウンターに案内するなどもしましょう。スタッフにも1人や2人のお客様の時は4人テーブルに案内するのではなく、カウンターや2人テーブルに案内するように従業員を指導しておくことも大切です。
では、飲食店を開業した場合、どれくらいの回転率を目指せば良いのか?と思う方も多いでしょう。ただし、最適な目標回転率は業態によって異なるため一律に決められません。
たとえばファーストフードやラーメン店、牛丼屋などは客単価が低いため、多くの来店が見込めるよう回転率を高める工夫が欠かせません。高級料理店ではコース料理などで滞在時間なども長くなり回転率は低くなりますが、客単価が高いため売上につながります。
このように店舗業態によって回転率を重視するか、客単価を重視するかが変わってきますので、客層やメニューを分析してお店の回転率が正しく設定できているか確認してみましょう。
以下が客単価・粗利別に見る回転率の目安です。参考にすると良いでしょう。客席は全て30の飲食店とします。
| 客単価・粗利率が低い業態(ファストフード等) | 20回転以上 |
|---|---|
| 客単価・粗利率が中程度の業態(居酒屋等) | 2回転以上 |
| 客単価・粗利率が高い業態(フレンチ等) | 1回転以上 |
また回転率を考える際に平日と休日、ランチタイムとディナータイムをわけて考える場合が多いです。分けて考えることによりしっかりとした1日の売上を出すことができ、売上予測が立てやすくなります。
ここまで飲食店の回転率とは何かについて解説してきました。それでは、今からどのようにしていけば回転率を上げられるかポイントをお伝えします。
トッピングをはじめ事前に仕込めるものや用意できるものを準備しておけば効率アップできます。前日の食材の残りを次のランチ用に前菜として使用することで、食材のロスを防ぐと共に仕込みもできます。
ラーメン屋ではトッピングや具材の作り込みをしておくことでスムーズに料理を提供できるでしょう。
効率よく料理を提供すれば、お客様の待ち時間を短縮できます。ただし、厨房で料理が完成してもスタッフの動きが遅ければ、結果的にお客様を待たせてしまいます。せっかく熱かった料理も冷めてしまってはお客様の満足度指数も下がり、クレームの原因や次につながるはずの機会損失にもなりかねません。
混雑時にスタッフの人員が足りなく料理提供が遅れる場合は、人員を増やすか、厨房とホールスタッフの連携を強化するなどして、オペレーションを見直しましょう。
注文時にスタッフが注文を聞くスタイルもありますが、券売機や最近ではタッチパネルで注文するオーダーエントリーシステムもあるので、是非導入も検討してみてください。
また、満席でウェイティングのお客様がいるときは、待ち時間にメニューを見てもらうなどして、退屈させない工夫をしましょう。
もう少しで案内できそうな場合はあらかじめ注文を聞いておき、テーブル案内と同時に料理を提供できるようにしておくと、待ち時間の短縮につながります。
中間下げは、片付けをスムーズにするため食べ終わったお皿を下げることです。お客様が帰った後に全てを片付けるのではなく、適宜片付けをすることがポイントです。
ですがここで注意して欲しいのは、お客様が食事中にお皿を下げてしまったり、食べ終わってすぐに片付けてしまうと追い出そうしているのではないかとお客様に思われないようにすることです。
お客様のタイミングを見計らって中間下げをするようにしましょう。
また中間下げの際は、お客様がいる状態で空いたグラスやお皿を下げることになるため、お客様が汚れないように気をつけましょう。忙しい時は中間下げを徹底したいところですが、慌てすぎてお客様にご迷惑をおかけしては元も子もありません。
特に落ちやすいスプーン、フォークなどのカトラリーを小さなお皿の上に乗せたままだと落ちやすいため、安定して置ける大きめのお皿の上に置いたりと工夫をしましょう。また一度に下げようとするのではなく、他のスタッフと連携していきましょう。
飲食店などで、お会計時に店員が打ち間違えたまま処理してしまい、返金やお会計のやり直しが必要になった場面に遭遇したことがある方もいるのではないでしょうか。
できる限りこのようなトラブルを避けるためにも、手打ちなどをなくしオーダーエントリーシステムと連携しているPOSレジなどのシステム導入をするとヒューマンエラーは防げます。
また釣り銭の補充も忘れないように時間を決めて確認するようにしましょう。
終日開店かランチとディナーのみかの営業時間にもよりますが、混雑する時間帯を避けたランチタイム前やランチタイムのお会計ラッシュが終わった後に釣り銭などの確認をするのがおすすめです。
回転率を重視するお店の場合、居心地が良すぎると長く滞在されてしまうため、回転率が下がってしまいます。
ファーストフード店や牛丼屋は、会社員が限られた昼休みにサッと食事を済ませたいときによく利用されています。一方、若いカップルや女性客をターゲットにした喫茶店やカフェでは、ふかふかのソファやWi-Fiなど、居心地の良さからつい長居してしまうお客様も多いでしょう。
とはいえ、ソファやWi-Fiは集客には効果的なサービスです。あえて座り心地の悪い椅子にする必要はありません。
居心地の良さを大切にしているお店でも、回転率を上げたいときは混雑する時間帯だけ時間制限を設けるなど、工夫を取り入れてみましょう。
テイクアウトは店内の座席数に依存しないため、店内が混雑していても、料理を提供できます。
特に、ランチタイムでは時間が制約されているため、テイクアウトサービスを導入すれば、新たな顧客を獲得できる可能性があるでしょう。
ただし、テイクアウトの対応時間が増えると、店内の顧客へのサービスが遅れる可能性も考えられます。これにより、結局回転率が変わらない結果をまねくと意味がありません。
そのため、テイクアウトを導入する場合は、店内サービスとのバランスを検討する必要があります。バランスを取ることで、効果的な経営が可能となるでしょう。
客席稼働率については先述しましたが、飲食店は回転率だけに注目すれば良いわけではありません。安定した売上、営業をするために、回転率の他に注目すべきポイントを紹介します。
飲食店の売上を伸ばすには、単価の向上も欠かせません。単価アップというと「値上げ」をイメージしがちですが、それ以外の方法もあります。
1人のお客様に、より多くのメニューを楽しんでもらう工夫が大切です。ランチタイムには、ドリンク付きのセットをお得に提供することで、自然と注文点数が増える場合があるでしょう。
特に夕方から翌朝まで営業している飲食店では、来客数が想定より少なく、1回転で終わってしまうケースも考えられます。そんなときは、回転率を上げるよりも、1組あたりの注文金額を増やすほうが効果的です。
追加注文を増やすには、メニュー表の配置や見せ方を見直してみましょう。ドリンクと食事のメニューが分かれている場合は、一緒に頼みたくなるような並びや説明に工夫があると、注文に繋がりやすくなります。
また、値段がやや高めのメニューを選んでもらうには、スタッフの声かけや接客トークも重要です。料理のこだわりや限定メニューの魅力をうまく伝えることで、特別感を演出できます。お客様の性別や年齢に合わせたアプローチも効果的です。
まずは、自分のお店の特徴や客層に合った方法を考えてみましょう。
飲食店の長期的な成功において、多くのお客様を引き寄せることは不可欠です。そのためには、新たな顧客を獲得する効果的な広告宣伝が欠かせません。
新規顧客の獲得には、チラシやWebを活用した広告戦略が有効です。
グルメサイトへの登録や、独自のSNSアカウントを開設して積極的に宣伝する手法も一つです。また、現代では口コミサイトやSNSを活用した新規顧客の呼び込みが一般的となっています。
おしゃれな盛り付けや料理の写真を通じて、お客様が自発的に情報を発信したいと思える「SNSとの相性」も注目されています。
これらの手法をうまく組み合わせ、Webやチラシ・SNSなどを通じて魅力的な広告宣伝をすれば、新たなお客様の来店につながるでしょう。
売上を伸ばすためには、顧客の満足度向上とリピーターを増やしましょう。
新規顧客の獲得も大切ですが、同じお客様が何度も訪れてくれることで、安定的な収益が期待できます。リピーターを増やし、そのお客様が離れないようにするためには、具体的な戦略が必要です。
例えば、ポイントカードやクーポンなどのリワードプログラムを導入することは、リピーターを引き寄せる効果的な手段です。
これらのサービスを通じて、お店に繰り返し足を運んでもらえるような仕組みを構築することができます。
飲食店ごとに異なるターゲット層やコンセプトを考慮して、リピーターを引きつけるための戦略を検討してみましょう。
本記事では、飲食店における回転率の意味と、回転率を上げるためのポイントについてご紹介しました。売上を上げるには、いかに空席をなくしてお店の回転率をあげるかがポイントになってきます。
回転率が思うように上がらず悩んでいる方は是非今回の記事で解説した、料理の提供時間や会計時間の短縮・机の配置などを見直してみてください。